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周泰  作者: 涼風隼人


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第8回 周泰、会稽の戦いで活躍をする

 江東でもっとも広大な領地というのは会稽郡である。

 

 この会稽郡の太守は、名士中の名士と言っても差し支えない「王朗」である。民政にも力を入れており、民からの支持も高かった。

 

 王朗は、軍事に明るいわけではないが、劉繇の様にすぐに逃亡をすることを選ばず、孫策軍を迎え討つ決断を自らした。

 

 「まずは固陵城塞にて孫策の進撃を食い止める。」

 この固陵城塞は、天然の要害といっても良く、攻めるに難く、守るに易いといえる場所であった。

 

 孫策は、これまで勢いで江東の平定に走ってきたが、ここはひとまず時間がかかるということを、地形をみて理解した。

 

 周泰と蒋欽も地形の確認をした。自分たちの大将である孫策の習慣を、自分たちも見習おうというものであった。

 

 周泰が言う。

 「公奕よ、王朗は軍事には明るくないといった話を聞いたが、私には守備隊形に綻びを見つけることは出来ないのだが・・・。」

 

 「確かにな。兵士たちの士気も高そうだ。それに、この足場の悪い湿原地帯には、攻める俺たちは苦労しそうだぜ。」

 

「ああ。今回の戦、そう簡単なものではないかもしれないな。気を引き締めねばなるまい。」


 孫策はまず小手調べに正面から戦うことにした。


 しかし、やはり攻める側には難しい場所であり、なかなかうまくいかなかった。周泰や蒋欽も、自分たちになりに何かいい策はないか、と考えていたが、特段妙案が浮かぶことは無かった。


 そんな折、孫策の苦戦を見かねて叔父である「孫静」が献策をした。

 「将軍。このまま正面から攻めていても、無駄に兵力を消耗するだけです。ここから南に行ったところに査瀆という場所があります。そこから固陵城塞の裏に回り込むのがよろしいかと。」


 「叔父上の策が決まれば、確かに固陵城塞を落とすことが出来そうです。お願いできますでしょうか。」


 「もちろんです。私に先鋒をつとめさせてください。」


 「わかりました。こちらで、若い将校もお付けしますので、存分にお使いください。」


 ここで、周泰と蒋欽が呼ばれた。


 朱治が言う。

 「この方は、孫策様の叔父上に当たる孫静様だ。今回、ある作戦を決行するに当たって、先鋒をおつとめいただく。お前たちは、孫静様の指揮下に入れ。」


 二人は拝礼して、命令を受けた。孫静が言う。

 「孫静と申す。早速であるが面倒な仕事を頼みたいのだが、よいかな?」


 蒋欽が言う。

 「もちろんです。何なんりとお申し付けください。」


 「まず、今回の作戦を決行するにあたり、王朗軍を油断させなければいけない。そこで、二人は陣全体に、ここ数日の雨で、水をそのまま飲んで腹痛を訴える兵が続出している、大量の水を煮沸して清潔にするようにと、大きな声で指示を出し、実際にそうさせてほしいのだ。」


 二人は呆気にとられたが、きっと必要なことなのだろうということで、陣中をまわり、大きな甕に水を入れて煮沸させた。そこかしこで、煙が上がっているのをいぶかしく思った王朗軍であったが、間者から事情をきいて、王朗軍は油断をした。


 その隙をついて、孫静率いる先鋒隊は、南方の査瀆に向かい、固陵城塞の裏側から奇襲攻撃をかけた。孫静が言う。

 「周泰、蒋欽。ここからは速さが肝要。自信はあるか?」


 「もちろんです。我ら二人にお任せを。」


 孫静は静かにうなずいた。それを合図に、周泰と蒋欽の部隊がものすごい勢いで飛び出していく。


 思わぬところからの敵の出現により、王朗軍は大混乱に陥った。ここ数日のうっ憤を晴らすように、周泰も蒋欽も躍動した。次々と敵兵を打ち倒して前進していく。


 そこに更に孫静が突撃の命令を出し、まるで無数の兵が地から湧いてきたような様相を呈し、固陵城塞の守備兵たちは逃げまどい、固陵城塞は陥落した。


 孫静が周泰と蒋欽に言う。

 「二人とも見事な働きぶりであった。朱治殿が未熟だが、と言いつつ私に付けてくれた理由がわかった。」


 周泰が言う。

 「我々は孫策軍に所属したばかりの新参者です。これからも、何なりとお申し付けください。」


 蒋欽が言う。

 「孫静様の策が見事だったからこその結果です。」


 「二人はいずれ、将軍となり我が主を支える存在になるであろう。期待しているぞ。」


 二人は孫静に拝礼した。


 さて、王朗はどうしたか。


 王朗は船で逃亡を図ったが、孫策に追いつかれ捕縛された。


 王朗が、孫策の前に連れてこられた。

 「王朗殿。あなたの命はこの私の決断一つで決まります。どうでしょう、私に仕える気はございますか。」


 「・・・。はっきり言おう、無い。」


 「ふふふ。やはり予想通りのお答えだ。」

 そう言うと孫策は、剣を抜いた。


 王朗は死を覚悟して目を閉じた。


 しかし、孫策の剣が斬ったのは王朗の首ではなく、王朗を縛っていた縄であった。王朗は驚いた顔をしている。孫策が言う。


 「王朗殿。あなたは、この会稽郡で善政を敷いていたのが良くわかる。民たちから、どうぞお命だけはお助けください、と何度も何度も頼まれた。それほどの政が出来るのであれば、本当に我が配下にほしいところではありますが、そうもいきますまい。王朗殿、会稽郡からは出て頂くが、あとはご自由に。あなたを解放します。」


 「孫策殿・・・。私はあなたをただの荒くれ者と思っていましたが、そうではないらしい。私は会稽郡から出て、二度とこの地に入らないと約束をしましょう。ただ、ここの民たちが健やかに暮らせるように、政はしっかりとお願いできればと思います。」


 「我々は確かに荒くれ者です。しかし、軍律は厳しくしているので、民に乱暴をする兵はおりません。王朗殿、どうぞお元気で。」


 こうして、孫策は会稽郡も平定し、江東のほとんどを手に入れたのである。

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