第7回 周泰、孫策と太史慈の絆に感ずる
孫策軍は、太史慈が拠点を設けた神亭を徹底的に攻撃した。
太史慈軍の兵士は、既に孫策軍に恐怖心を抱いており、孫策軍が押し込む展開が続いている。
しかし、総大将は太史慈である。そう簡単に、太史慈軍が崩壊することは無く、中核の精鋭部隊は孫策軍の攻撃をしばしば跳ね返し、押し戻してきた。
孫策軍が優位なものの、勝負はすぐにつかなかった。
だが、太史慈といえども、全体の士気の低下を止めることが出来ずに、神亭の防衛拠点を放棄し、逃亡した。
太史慈は逃亡したとはいえ、まだ、諦めたわけではなかった。逃亡しながら、再び敗残兵を吸収し、蕪湖方面で孫策軍に再戦を挑んできた。
しかし、勝負は始まる前に決していた。太史慈軍の惨敗である。そして、太史慈はとうとう捕らえられたのである。
体をきつく縛られて、太史慈は孫策のもとに連れてこられた。孫策が言う。
「太史慈よ、どうだ、今の気分は。」
「敗軍の将は兵を語らずだ。さあ、早く処断してくれ。」
「もし、神亭の戦いでそなたが私を捕らえたとしたら、どうするつもりであった?」
「・・・。わからん。」
「俺は、こうしたと思う。」
そういうと、孫策は自ら太史慈の縄を解いた。
「孫策・・・殿。これは、どういうことだ。」
「どうもこうもない。俺は、そなたに仕えてもらいたいと強く願っている。その命、私に預けてくれないであろうか。」
「・・・。処断されてもおかしくない私に仕えよ、と申すのか。」
「ああ。私なら太史慈、そなたの能力を最大限に活かせる。」
「・・・。わかりました。この命、孫策様にお預け致します。」
「そうか、わかってくれたか。」
孫策は自ら太史慈を立たせ、両手を握りながら言った。
「少ししたら、すぐに一軍を任せる。そのつもりでいてくれ。」
「かしこまりました。一点、お願いがございます。」
「聞こう。」
「劉繇軍の敗残兵や一部の住民は、行き場を失い彷徨っています。そこで、私に六〇日頂けないでしょうか。必ずや、その者たちを集めて、この軍に合流させます。」
「わかった。我が軍は寡兵、兵士が増えるのは大歓迎だ。六〇日後、また会おう。」
こうして、太史慈は単騎、旅立ったのである。
孫策の側近の一部の者は、もう太史慈は帰ってこまい、とい言う話をしていた。その話を聞いて、蒋欽が周泰に聞く。
「幼平、お前はどう思う。俺は、太史慈殿は必ず、戻ってくると思う。」
「俺もだ。あの二人のやり取りに、嘘があるはずがない。」
実際に、ちょうど六〇日後、太史慈は、一万超の兵士や住民を連れて、秣陵に帰還したのである。孫策は城外まで出迎える喜びようであった。
こうして、孫策は秣陵を拠点として、江東制覇の為の最大の戦いに挑むのである。




