第6回 周泰、孫策と太史慈の一騎打ちに見とれる
孫策が言う。
「幼平、公奕。見事であった。そなたたち二人のおかげで、こちらの被害は最小限でこの秣陵城を手に入れることが出来た。礼を言おう。」
二人は拝礼した。孫策が続ける。
「この先であるが、神亭と言う場所に“太史慈”という者が、劉繇の敗残兵を吸収して拠点を作っていると報告があった。噂では、相当の豪の者らしい。今から主だった者を連れて、敵情視察に行きたいと思う。お前たちもついて来い。」
孫策は、新しい戦場に足を入れるたびに、自ら周辺の視察を行うことが多く、今回もその一環であった。
今回の視察には古参武将の「韓当」、「黄蓋」と参謀の朱治、そこに周泰と蒋欽が付き従った。
そして、戦の前に周辺を自分の目で確認をする男がもう一人いた。敵将の太史慈である。
なんと、孫策も太史慈も同じ時間に視察に向かったのである。太史慈の方は、単騎であった。
そして、偶然にも二人は出会った。太史慈は思った。
「先頭にいるのが孫策ではないか?」
そして、孫策も思ったのである。
「こいつが、太史慈なのでは?」
太史慈が言う。
「我が名は太史慈。あなたは、ここ最近この辺りを荒らしまわっている孫策殿とお見受け致すが。」
「左様、私が孫策だ。そういうあなたは、神亭に拠点を設けて我らを待ち伏せしている太史慈殿、ではないか。」
「左様、太史慈と申す。孫策殿、どうであろう。ここで大将同士、一騎打ちで勝負を決めるというのは。」
朱治が言う。
「孫策様、なりませぬぞ。こちらは五騎います。相手は、単騎です。普通にやれば、こちらの勝利です。」
「それはわかっている・・・。しかし、挑まれた勝負を避けるようでは、今後誰も俺にはついてこまい。」
孫策が太史慈に向かって言う。
「太史慈殿、一騎打ちの申し出を受けよう。では、参る!」
孫策から仕掛けた。槍が太史慈の首元めがけて打ち込まれたが、太史慈はひらりとかわし、その流れで孫策の脇腹を狙った。今度は孫策が身をかわした。
この様なやり取りが何度も繰り返される。
死闘と言ってもいいだろう。お互い必殺の一撃をかわされ続け、いささか疲労の色が濃くなってきた。
その時、孫策の槍が太史慈の馬に当たり、馬が暴れ出した。太史慈は何とか体制を整えたが、孫策に背負っている手戟を奪われた。
今度は太史慈が孫策の馬に一撃を加えた。やはり馬が暴れ出し、よろけているところを今度は太史慈が孫策の兜を奪ったのである。
両軍の兵士たちが、互いの総大将の心配をして駆けつけてきたところで、お互い別れ、一騎打ちは引き分けとなった。
孫策が言う。
「太史慈、見事な漢だ。是非、我が家臣に欲しいものだ。」
朱治が言う。
「私は見ていて心臓が止まりそうになりました・・・。孫策様、あなたは総大将なのですから、もう少し慎重に行動を願いたい。」
「わかっている。しかし、挑まれれば、私の体は動いてしまう。朱治よ、許せ。」
この激しい一騎打ちに、周泰も蒋欽も見とれてしまった。
蒋欽が言う。
「幼平よ。二人とも、化け物のような強さであったな。」
「ああ。もし自分が打ち合っていたら、命はなかったと思う・・・。」
「俺たちもそれなりにやってきたが、上には上がいるもんだ。もっと、もっと、強くならないとな。」
「ああ。日々精進を怠れば、すぐに命を落としかねない。」
こうして周泰と蒋欽はさらに強くなる決意を新たにしたのである。




