第35回 周泰、親衛隊長の引継ぎをする
孫権の周泰に対する信頼は高まるばかりである。
とうとう、武昌太守という要職に抜擢をされた。
周泰は当然、武昌に赴任するので、その後の親衛隊長を据えなければいけない。孫権は言う。
「幼平、お前の目から見て、私の身辺の護衛に適正のある者はいるか?」
「皆、孫権様への忠義も厚く、武にも長じているとは思いますが、もし一人推すとすれば、朱然殿がよろしいかと。」
「義封(朱然の字)か・・・。確かに我が養子ながら、冷静沈着で、動くべきは動くことが出来る漢だ。よし、義封をお前の後任の親衛隊長としよう。諸々の引継ぎ、よろしく頼むぞ。」
周泰は拝礼して退出し、その足で朱然を訪ねた。
朱然は拝礼して言う。
「幼平殿、この度はご栄転おめでとうございます。」
周泰も拝礼して言う。
「ありがとうございます、義封殿。此度の急な訪問の無礼、お許しください。」
「いえ、幼平殿とは一度、時間を作って話をしたいと思っておりましたので、ご訪問、嬉しく思います。さあ、どうぞ中へ。」
朱然は周泰を邸内に招き入れた。朱然が言う。
「早速ですが、ご訪問の趣旨をお教えいただけないでしょうか。」
「先ほど孫権様と話をしてきました。その結果、義封殿に私の後任として、孫権様の近辺を警護する親衛隊長をお任せする、と決定致しましたので、そのお知らせに参りました。」
「私が幼平殿の後任ですか・・・。この話、非常に嬉しく思いますが、私にできるでしょうか。」
「僭越ながら、孫権様より推薦すべき人物を求められ、私が義封殿を推薦させていただきました。」
「幼平殿が私を・・・。理由をお聞かせいただいても?」
「もちろんです。孫権様もおっしゃっていましたが、義封殿は冷静沈着さと、動くべきは動く、動と静の使い分けができるお方と思っています。それ故、推薦させて頂きました。」
「なんと、嬉しいお話でしょうか。幼平殿とは先ほども申しましたが、お話をしてみたい、と思っておりました。それほど親しくない私を、見て頂けていたとは・・・。」
「義封殿もお分かりになると思いますが、親衛隊長として孫権様に近侍していると、自分が直接話さなくとも、多くの人と間接的にですが接することになります。それ故、私は義封殿と話したことは無くとも、あなたの人間性は素晴らしいものと思っておりました。」
「それは、本当にありがたいです。この話是非、お受けさせて頂きたく。」
「もちろんです。孫権様から色々相談を受けることもあると思いますが、素直にお話すれば大丈夫だと思います。」
「わかりました。ところで、親衛隊の強化、と言うお話が出ていたと思いますが、その辺りはどうなっているのでしょうか?」
「私の方で、精鋭一〇〇人体制から、大幅に増強して、歴戦の兵士を新たに四〇〇名選任し、合計五〇〇人体制に構築しております。選任のやり直しや、人数を更に増やす、というのも、お考えがあれば可能なことかと存じますが。」
「いえ、十分です。皆が幼平殿についてきたようにできるかわかりませんが、私なりに精一杯つとめます。」
「義封殿がいてくれれば、私も安心して武昌に赴任できます。以後、孫権様のこと、心より、お願い申し上げます。」
「はい。幼平殿の様に、命がけで職務を全うしようと思います。」
こうして、周泰は後任の親衛隊長に朱然を推し、その引継ぎを終えた。そして、満を持して武昌の太守として赴任することになるのである。




