第33回 周泰、軍議に参加する
孫権は建業に退却後、まずは周泰の体調を気遣った。
「幼平、どうだ、傷の方は・・・。」
「はい。おかげさまで、もう、大丈夫でございます。」
「あれほどの深手を受けていて・・・。」
「さほどのものではございません。お気遣いなく。」
「そうか・・・。実は、主だった者を招集して、軍議を開きたいと思う。三日後を考えているが、問題ないか?」
「畏まりました。何の問題もございません。」
―三日後―
孫権の招集による軍議が開催された。孫権が言う。
「今回の軍議の課題は、合肥における敗因の分析を行いたい。まずは、私から参ろう。」
孫権は、まず、本陣を前線に近い所に配置しすぎたところを敗因として挙げた。全軍の士気を高めるためにとった行動であるが、それが張遼の奇襲を成功させ、そこから戦局をひっくり返せなかったことを反省した。
そして、攻城戦の技術の拙さを挙げた。孫権軍の攻城戦の経験は非常に乏しく、その点を何とかするための方法を考える必要があるとした。
この孫権の弁を聞いたのち、呂蒙が発言した。
まず、本陣に関しては、親征の際はもう少し後方に配置することと、周泰率いる親衛隊が少数精鋭ではあるが、数自体を増やすべきではないか、と意見した。
そして、攻城戦に関しては、攻城戦に特化した部隊の編成や、攻城兵器の研究が必要不可欠であり、是非、自分にやらせて頂きたい、と立候補をした。
続いて発言したのは淩統である。
淩統は、武将それぞれの個の力が弱すぎることを課題に挙げた。南郡戦の曹仁や今回の張遼の様に、曹操軍には個の力で戦局そのものをひっくり返すほどの力のある者たちがいるが、孫権軍にはそこまでの者はいなく、個々人の研鑽が必要であるとした。
そのためには、個々の役割をより明確化し、その役割に特化した修練を積むことが必要ではないか、とも意見した。
続いて、蒋欽が水軍について意見した。
水軍こそが曹操軍より勝る唯一のものであるとし、水陸の連携強化や、攻城戦の支援を行えるよう訓練すべし、との意見を挙げた。
そして、周瑜に後継者に指名された魯粛は、諸将の意見はすぐに実行できるものであるので、即座に実行すべき旨を意見したうえで、特に蒋欽の言った水陸の連携強化が喫緊の課題であるとした。
孫権は大きく頷き、以下の決定をした。
まず、本陣に関してはその位置を下げて防備を厚くする。
その上で、周泰率いる親衛隊の増強に関しては、周泰にその人選を一任した。
呂蒙の意見は、呂蒙の自らがやる、といった姿勢を尊重し、攻城専門部隊の編制等は、呂蒙に任せることにした。
淩統の意見であった個々の役割の明確化に関しては、今一度、孫権と魯粛で協議することにした。
そして、蒋欽の意見に関しては、水陸の調練を同時に行う機会を増やすことにより、連携を強化するとした。そして、孫権は言った。
「幼平よ。お前は 公奕と親友であったな。親衛隊の事もあるが、公奕と力を合わせて、水軍の強化にも協力してもらいたいのだが、出来るか?」
「はい、もちろんでございます。私の出来得る限りのことをさせて頂きます。」
こうして、軍議は終了した。
「幼平、久しぶりだな!」
早速、蒋欽が周泰に声を掛けてきた。
「公奕、こうやって話すのはどれくらいぶりか。同じ戦場にいても、なかなか話す時間などなかったからな。」
「そうだな。ところで親衛隊長、体の方は大丈夫なのか?合肥でも相当無茶しただろう。」
「大事ない。本当に自分で驚くくらい、俺の体は頑丈にできているらしい。」
「さすがだな。ところで、親衛隊の増強と水軍改革両方やれって、よほど孫権様はお前を信頼しているのだな。」
「水軍は、我が軍の肝、中枢だ。周瑜様亡きあとは、お前が活躍しているのは聞いている。お前の負担を軽くしてやれ、という配慮だろう。」
「そうか。俺はてっきり、俺一人に任せるのが怖いから、と思ったぜ。」
そういって、蒋欽は大笑いをした。
こうして、孫権は合肥の敗戦を糧にして、また一歩前に進んでいくのである。




