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周泰  作者: 涼風隼人


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第32回 周泰、合肥の戦い(後)

 自らが決め、自らが動いた戦いである。


 孫権は、そう簡単に引く気は無かった。


 曹操の援軍はもちろん、劉備が万が一裏切って侵攻してくる可能性もほぼ、皆無と言っていい。


 ここを逃したら、いつ、この合肥が手に入るかわからないのである。亡くなった周瑜は江陵にこだわったが、孫権は合肥にこだわっている。周瑜は、江陵を手に入れることに成功をした。自分も何とか成功したい、と言う気持ちが強い。


 しかし、合肥城は孫権が思っている以上の堅城であった。


 そして、張遼、李典、楽進の人間関係の不和が情報として入ってきていたが、そんなところはみじんも見せず、三人がそれぞれの役割を全うしており、兵力格差が明らかなのにも関わらず、付け入る隙というものが見当たらなかった。


 本拠地から近い場所ではあるが、長期戦は避けたかった。


 気候風土に慣れているとはいえ、夏の暑さとそれに伴う疫病の発生が懸念されるからである。


 また、あまり長引けば、戦上手の曹操のことだ、西方の戦いを早々と終わらせ、こちらに援軍に駆け付けて来る可能性もあった。


 孫権に迷いが生じてきた。局地戦においては、呂蒙や淩統が奮闘し、ある程度の戦果を挙げている。しかし、それでも合肥城の陥落を見通せるほどのものではなく、敵も曹操が応援に来ると信じているのだろう、士気は下がるどころか、むしろ、上がる一方であった。


 「撤退すべきか・・・。」

 孫権は口に出すことなく、心の中で呟いた後、孫権は周泰に言う。

 「幼平。お前の目から見て現状はどうだ?」


 「兵数の多さを活かす戦いがなかなかできず、苦しい状況です。合肥は、思っていた以上の堅城だと思います。」


 「撤退するべきだと思うか?」


 「・・・。孫権様のお心一つだと思います。」


 「私の心か・・・。」


 孫権は目を瞑って考える。しばらく、黙考した。

 「幼平・・・。今回はこれが潮時、撤退だ。」


 「わかりました・・・。各軍営に伝令を出します。」


 孫権は、撤退を決意した。


 各軍営は速やかに撤退の準備をした。


 周泰は傷が完全に癒えているわけでは当然ないが、孫権の側で護衛に付いた。


 撤退の最後尾の殿は呂蒙に任された。


 呂蒙は効率よく撤退し、張遼も必要以上の深追いはしてこなかった。建業に着くと、孫権は周泰に言う。

 「幼平。私はまたお前を傷つけて命拾いをした。何か褒賞を出したいと思うが、望みはあるか?」


 「いえ、特にございません。私が孫権様の盾になるのは、兄上の孫策様のご遺言でもありました。私は、自分のつとめをしっかり果たす。それ以外、特に考えておりません。」


 「そうか・・・。しかし、いずれは具体的な褒賞を与えよう。そうでないと、軍の士気が奮わなくなるからな。」


 「その時が来ましたら、喜んでお受けいたします。」


 こうして、合肥の戦いは敗北して撤退となったが、孫権と周泰の絆は、より深いものになったのである。

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