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周泰  作者: 涼風隼人


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第31回 周泰、合肥の戦い(前)

 孫権は魯粛の助言を聞きいれ、周瑜が命を懸けて取った江陵城をも、劉備に貸与することにした。これは、孫権側から言えば、「早く益州を取って、荊州を返せ」という声であることが容易に想像できる。

 

 しかし、劉備はすぐさま腰を上げることはなかったが、その機会はなんと、益州から入ってきたのだ。

 

 益州牧の劉璋が、漢中を押さえている「張魯」に苦戦をしており、それを同族のよしみで助けて欲しい、という要請を劉備にしてきたのである。

 

 劉備は、益州に入る方法を模索していたところ、その機会が勝手に転がり込んできたのである。劉備は「龐統」を軍師とし、江陵は「関羽」に任せて、精鋭二万を率いて益州に入ったのである。

 

 そして同年、涼州、関中で大規模な反乱が起きた。世に言う「潼関の戦い」である。涼州の韓遂と馬超が関中の軍閥を巻き込んでの一斉蜂起であり、曹操の目は西方に向いた。

 

 劉備は益州に向かい、曹操は西方に向かった。

 

 これを千載一遇の機会と捉えたのが、孫権である。

 

 孫権は、「合肥城攻略」を宣言したのである。

 

 孫権は現在、「建業」の整備に力を入れており、そののど元と言うべき場所にある合肥城は常に孫呉にとっての脅威であった。この隙を逃すわけはいかない、と自ら出陣を決めたのである。

 

 負けるわけにはいかない戦いである。

 

 自ら決めて、自らが動く戦い。孫権が用意したのは精鋭五万である。

 

 一方、合肥城の守将は、「張遼」、「李典」、「楽進」と、いずれも名の通った名将であったが、兵力は七千程度である。

 

 「絶対に勝つ」、孫権は心に決めて出陣をした。

 

 孫権は、この兵力差であるから、張遼たちは籠城を選ぶであろう、と予測していた。

 

 決して、油断していたわけではないが、合肥城の城門が開かれた。その先頭に煌びやかな騎馬武者がいる。

 

 この漢こそ、合肥城の総大将、張遼であった。

 

 張遼は、精鋭八〇〇騎を率いて、孫権の本陣に一直線に突撃をした。他の者には目もくれず、ひたすら一点、孫権の本陣のみを目指し、矛を振るい、ひた走る。

 

 凄まじい騎馬隊の圧力に、孫権軍はなすすべもなく押し込まれている。誰もが、まさか出陣してきているのが八〇〇騎だけとは思わないほどの、凄まじい破壊力を見せつけたのである。

 

 そして、本陣前の厚い壁をぶち破り、とうとう張遼の目の前には、孫権が現れた。

 「孫権とみた!我が名は張文遠!お前を地獄に送りにやってきた!」

 

 孫権は慌てふためいて逃走を図ろうとする。

 

 その時である。ものすごい槍の一撃が、張遼を襲った。

 

 槍の持ち主は、もちろん、周泰である。周泰は叫ぶ。

 「孫権様!とにかくお下がりを!皆の者、命を懸けて孫権様をお守りしろ!ここは、私が迎え討つ!」

 

 張遼が言う。

 「お主が周泰か。こちらにもその名は聞こえてきているぞ。いざ、勝負!」

 

 張遼と周泰の一騎打ちが繰り広げられる。

 

 それを横目に、張遼の精鋭たちは孫権の追撃を継続している。

 

 「このままではまずい」

 そう思った周泰は、張遼との一騎打ちを早々に切り上げ、孫権の後を追う。孫権に追いすがる敵兵を、後ろから次々と周泰の槍が屠り続ける。

 

 「うっ!」 

 周泰はうなり声を上げた。後ろからの一撃を受けてしまった。振り返れば、そこに張遼がいるではないか。

 

 再び張遼と撃ち合う。しかし、ここで周泰が立ち止まると、例え張遼に打ち勝ったとして、孫権の命が危うい。周泰の今までの経験による直感が、少しでも急げ、早く孫権様の下へ、と周泰をいざなっている。

 

 周泰は再び張遼を振り切り、とうとう、孫権の所までたどり着いた。

 

 本陣は完全に崩壊した。張遼も、もう追いつけないと追撃を打ち切り、意気揚々と合肥城に戻って行った。

 

 緒戦。孫権軍の大敗北である。

 

 周泰は人心地ついた。すると、体が緊張から解放されたからなのか、体中に傷があり、その痛みで動けなくなった。

 

 そこに孫権が現れた。

 「幼平、幼平!傷は大丈夫か!また、私のせいでお前を失うところだった・・・。」

 

 「孫権様、大事ありません。かすり傷です・・・。うっ・・・。」


 「かすり傷のわけがなかろう。皆の者、下がれ!私が治療を行う。」

 

 孫権はそういうと、周泰の傷の一つ一つを丁寧に洗い消毒し、薬を自ら塗ったのである。これには、周りにいた家臣一同が感動した。周泰が言う。


 「孫権様。私の様な者にここまで・・・。この御恩、一生忘れません。」

 

 「何を言う。私は幼平、お前に何度も命を助けられた。皆の者、周幼平はわが腹心なり!これからは、その様に接せよ!」


 周りの者たちは、皆拝礼して孫権に答えた。


 こうして緒戦、大敗を喫した孫権軍であるが、ここで退却することをせずに、再び立て直すべく、合肥城を包囲し、本陣を構築したのである。

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