第30回 周泰、孫権に周瑜の遺言を伝える
周泰は、周瑜を看取った者として、孫権への遺言を伝えた。
周瑜の死を聞いた時、孫権は茫然自失となった。
やはり、傷が癒えていない状況で、本人断っての希望とはいえ、益州攻略など大きな戦の総大将に任命すべきではなかった、と後悔の念を強くした。
孫権にとっては、周瑜は部下であったが、兄孫策と義兄弟であったことから、心の拠り所となる存在であった。
悲しみに暮れていい時間があればそうしたい、と思ったが、国家の支柱を失った孫呉にそんな時間は無い。孫権は涙を流すことなく、周瑜の遺言を実行することにした。
まずは、周瑜の後継者に魯粛を指名し、その全権を引き継がせた。
そして、周泰を再び自分の手元に置くことにした。
孫権は早速魯粛を呼び出し、今後について協議をすることになった。孫権が言う。
「子敬よ。公瑾はお前に全てを託せと言った。それ故、私はその遺言通り振舞うが、それでよいか?」
「はい・・・。この子敬、死力を尽くして公瑾殿の意志を次いで行きたいと思います。」
「そうか・・・。周瑜の上奏した、天下二分の計はどうするつもりだ?」
「はい。その点、持論を述べてよろしいでしょうか。」
「よい。申してみよ。」
「まず、大前提として、漢の復興はもう不可能です。」
「曹操の存在か・・・。」
「はい。いずれ曹操は、その帝位を簒奪するつもりであると私は思っています。」
「それで?」
「私は、天下を二分ではなく、三分にすべきと考えております。」
「三分?どのように分けるのだ。」
「まずは、北方の曹操。そして、我々孫呉が江東と荊州を押さえます。そして・・・。」
「劉備に益州を渡す、と言うことか。」
「はい。劉備殿に益州を与え、その代り荊州は全て返還して頂く。その三国が存在する状態が、一番望ましいかと。」
「公瑾の遺言で、劉備には気をつけよ、というのもあった。その点は、どうか。」
「劉備殿をこちらに取り込むべきです。今までのいきさつを考えれば、曹操と劉備殿が同盟を結び、我々孫呉を攻めて来ることはありますまい。逆に、劉備殿と結ぶことによって、多方面より北伐を敢行することが出来ます。涼州の馬超も同盟を持ち掛ければ、恐らく乗ってくるでしょう。父親を曹操に殺されているのですから。」
「子敬の考えは天下二分ではなく、三分にせよ、と言うことか・・・。」
「はい。これが、現状に最も適した策であると思っております。」
「なるほど・・・。では、その実現に向けて動き出すがよい。何かあれば、遠慮なく申し出よ。」
魯粛は拝礼して退出した。
孫権が周泰に言う。
「周泰、今の子敬の話、どう見る?」
「周瑜様は、劉備は梟雄であると申しておりました。一方で魯粛様は、劉備は利用するべきとのこと・・・。このどちらが正しいのか、私にはわかりかねます。」
「劉備か・・・。面の皮が厚い奴よ。まさか、あれほど手際よく、南方四郡を手に入れるとは思わなかった・・・。」
「あちらの軍師、諸葛亮の献策でしょうか。」
「そうであろうな。今しばらくは魯粛に任せて、私は静観することにしよう。」
こうして、孫権は魯粛の三国鼎立に方針を切り替えたのである。




