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周泰  作者: 涼風隼人


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第29回 周泰、周瑜の死を見届ける

 孫呉は、念願であった江陵を、周瑜の重症という代償と一年間という時間をかけて、ようやく手に入れた。しかし、この間、漁夫の利を得た男がいる。劉備である。

 

 劉備は、孫呉が江陵に集中している隙をついて、何と、荊州南部の四郡を手中に収めたのである。

 

 周瑜は激怒したが、結局、この話は魯粛が調整し、現在領土の無い劉備に孫呉が「公安」及び「長沙」、「桂陽」、「零陵」、「武陵」の領有権を「貸す」ということで、一旦話は落ち着いたのである。

 

 周瑜は未だに傷は癒えないが、孫権に「大計」を上奏するために、孫権の下を訪ねた。「天下二分の計」である。

 

 周瑜が言う。

 「孫権様。本日は、我が“天下二分の計”を上奏したく、こちらに参りました。」

 

 「ほう。天下二分の計、とな。よろしい、聞こうではないか。」

 

 「まず、劉備も狙うであろう益州、そして漢中を私が先んじて攻め滅ぼします。そうすれば、北は曹操、南は孫権が領有することになります。」

 

 「うむ。劉備はどうする?」

 

 「劉備はひとまず、荊州に押し込んでおきます。その上で、劉備を煌びやかな宮殿や美女、酒の類で骨抜きにし、有用な戦力だけをこちらに取り込みます。」

 

 「それで?」

 

 「あとは、西涼の馬超と同盟を結び、時来たらば、漢中から私が、襄陽から孫権様が出陣し、天下を争う、と言うことです。」

 

 「そんなことが可能なのか?」

 

 「はい。そのためには、一刻も早く益州攻めを行うのが肝要かと思います。」

 

 「しかし、公瑾。お前は未だに傷の癒えていない体ではないか。そんな体でこの激務に耐えられるのか。」

 

 「これしきの傷、何ともございません。是非、ご決断を!」

 

 「・・・。わかった。それでは任地の江陵に戻り、開戦の準備をせよ!」

 

 こうして、周瑜は江陵に戻ることになった。

 

 この間、周泰は周瑜につきっきりであった。

 

 周泰から見て、この体で戦、それも大戦の総大将を担うなど、普通では考えられないくらいの容態であった。周泰が言う。

 「周瑜様。上奏された大計を為すには、まずは自分のお体ではございませぬか。」

 

 「幼平よ、時は待ってくれないのだ。私がそんな呑気なことをしていたら、あの劉備が見過ごすわけがない。」

 

 「劉備とは、それほどの・・・?」

 

 「ああ、英雄ではないぞ。梟雄だ。一見、人柄が良さそうには見える。それがまた、質が悪いのだ。」

 

 「なるほど・・・。しかし、そうだとしても・・・。」

 

 「幼平、これ以上は言わないでくれ。もう、覚悟はできているのだ。」

 

 周泰は、周瑜の覚悟を理解し、黙った。

 

 そして、周瑜の事を出来得る限り支えよう、と周泰も覚悟をしたのである。

 

 ところが、である。江陵に戻る途中の永安の軍営にて、周瑜の傷が悪化し、容態が急変したのである。周泰から見て、今までで深刻度合いは一番であるといえる最悪な状況となった。周瑜は言う。

 「幼平・・・。私はもう駄目だろう・・・。今までとは違う苦しみだ・・・。」

 

 「周瑜様!そんな弱気ではだめですぞ!」

 

 「・・・。しかし、自分の体の事は自分が一番わかる。そこで、最後の言葉を残すので、よく聞いてくれ。」

 

 「・・・わかりました。」

 

 「まず、私の後任であるが、子敬を推薦する。あまり目立たないが、政略、軍略全てにおいて大いなる才を持つ。子敬なら、安心できる。」


 「わかりました、魯粛殿ですな。」

 

 「そして、孫権様には、劉備には気を付けるようにと・・・。」


 周瑜は続ける。

 「あとは幼平・・・。再び、孫権様の下に戻り、その盾となってくれ。側近くで、お助けし、お守りしてくれ・・・。」


 「わかりました。必ずや、周瑜様の言う通りに!」


 「もっとあったのだが・・・。忘れてしまった・・・。あとは、生きている者たちが命がけで、孫権様にお尽くしするのだぞ・・・。」

 

 周泰は、周瑜の手を握った。周瑜も僅かに握り返したが、その力は直ぐに弱弱しく、そして、なくなった。


 孫呉の大軍師、周遊公瑾、三六歳の若すぎる死であった。

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