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周泰  作者: 涼風隼人


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第26回 周泰、南郡争奪戦(前)

 曹操は赤壁の戦い敗退後、許昌を目指して退却した。

 

 そして、荊州の要衝と言える「江陵」には、一族であり、武勇の誉れ高い名将、「曹仁」を総大将として残した。

 

 曹仁の率いる精鋭五千に、荊州の投降兵約五千を合わせて一万が江陵を守る。

 

 一方の周軍は精鋭二万である。先鋒は淩統率いる二千である。若干二〇歳ながら、この大戦の先鋒を任されたのである。

 

 「牛金」は、江陵城からその景色を見て、若造の淩統が先鋒であることに激高し、曹仁に言った。

 「曹仁様!あちらの先鋒はまだ年端も行かぬ若造でございます!我々は、なめられております。これではこちらの士気が下がります。何卒、私に兵三〇〇をお与えください。必ずや、討ち取って見せます。」


 「ふむ・・・。子義(牛金の字)の気持ちはわからなくもない。よかろう、兵三〇〇を与える。ただし、深入りは厳禁だ、わかったな。」


 牛金は拝礼して、早速兵三〇〇の編成に入った。


 そして、江陵城の城門が開かれる。牛金は威勢よく飛び出していく。まさか城門が開くとは思わなかった淩統だが、牛金の奇襲ともいえる突撃をさらりとかわし、あっという間に牛金を包囲したのだ。淩統が言う。

「さあ、これは狩場だ。思う存分、武功を挙げよ!」


 淩統軍が牛金軍を圧殺しようとしたその時である。


 ものすごい咆哮が聞こえてきた。淩統軍、全員の動きが止まった。その咆哮は、敵の総大将、曹仁から発せられたものであった。

 「我が名は曹仁!知らぬ者はおらぬであろう!牛金は大事な将ゆえ、俺が自ら迎えに出てきてやったわ!」


 そうすると、淩統の包囲網の一点をものすごい圧力で粉砕し、牛金以下三〇〇の兵をあっという間に救出し、江陵城の城門は固く閉ざされた。


 淩統は周瑜に謝罪する。

 「大都督、申し訳ございません。まさか、曹仁自ら出て来るとは思いも至らず・・・。どんな処罰でもお受けいたします。」


 「公績よ。この程度でいちいち罰していたら、我が軍に将はいなくなるわ。ただ、忘れるな。あれが総大将と呼ばれるには必要な器量だ。」


 「わかりました。必ずや、自分もそうなれるように精進を致します。」

 

 淩統は拝礼して、退出した。

 

 周泰は、この戦より、孫権の命令で「周瑜の盾」となっている。周瑜の傍らで見た敵の総大将曹仁は、並の将ではないことがすぐにわかった。周瑜が周泰に聞く。


 「幼平よ。曹仁をどう見る?」


 「並の将でないのは一目瞭然でした。それに、やられたとはいえ、公績の対応の速さも中々のものであると感じました。」


 「なるほど・・・。この江陵城を見て、どうだ。」


 「正直申し上げて、そう簡単な戦いではないかと。」


 「やはりそう思うか・・・。速戦速攻が理想であったが、考え方を変える必要があるな。」


 周瑜と周泰が会話をしているときに、甘寧が、提案があるとやってきた。甘寧が言う。

 「大都督。江陵を落とすには、まず、守備の薄い“夷陵”を先に落とすのが得策だと思います。兵五〇〇程度で結構です。お与えいただければ、すぐに落として見せます。」


 「なるほど。確かに夷陵の守備は薄いとの情報は入ってきている。そこを奇襲で落とすか・・・。いいだろう、やってみよ。」

 

 夷陵は、江陵の背後を押さえる要衝と言える。

 

 甘寧は、すぐさま急行軍五〇〇を編成し、速攻で包囲戦を展開、即座に陥落をさせた。

 

 「夷陵陥落」に周瑜軍は湧いた一方で、曹仁軍はすぐさま曹仁自ら兵五千を率いて、夷陵奪還に動いた。

 

 甘寧の兵はわずかに五〇〇である。緊急で軍議が開かれた。意見は二つに分かれる。

 

 曹仁がいない隙に、江陵城を徹底的に攻めるか、包囲された甘寧の救出に向かうべきか。

 

 結論は中々でなかった。しかし、呂蒙が言う。

 「俺は興覇と一緒に働いてきて、完全にこれからの我が国に必要な将になると思っている。少数で夷陵を落としたこの漢を見捨てたとなれば、我ら孫呉の恥となろう。」


 周瑜が言う。

 「しかし、敵は曹仁。興覇の救出を優先するなら、私が主力を率いて戦う。しかし、その間、この本陣は誰が守るのだ?」


 呂蒙が言う。

 「俺も、興覇の救出に向かいます。そして、その間本陣を守るのは、公績が適任でしょう。」


 周瑜が言う。

 「公績に、本陣を委ねると?」


 呂蒙が答える。

 「はい。公績なら、少なくとも一〇日くらいは持ちこたえられるはず。公績、どうだ。」


 淩統が言う。

 「・・・。甘寧のために働くわけではありませんが、本陣を守れと言われれば、その役目を果たすまで。出来ます。」

 

 周瑜が言う。

 「わかった。只今より、この本陣の総指揮は公績、お前に任せる。兵五千をおいていく。こちらから、安易に仕掛けないこと。守りに重点をおくように。」


 淩統は拝礼し、本陣の総指揮をとることになった。


 周瑜が周泰に言う。

 「幼平、淩統のことを信用していないわけではないが、補佐としてここに残ってくれ。なるべく早く、帰る様にする。」


 「畏まりました。曹仁は油断なりませぬので、お気を付けて。」


 「ああ、では行って参る!」


こうして、周瑜、呂蒙といった主力部隊が甘寧救出のため、夷陵に向かい、曹仁との激闘を繰り広げるのである。

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