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周泰  作者: 涼風隼人


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22/38

第22回 周泰、再び黄祖討伐戦に参戦する

 西暦二〇八年春、孫権は再び黄祖を討伐すべく、軍を編成した。今回の孫権の兵力は二万五千であり、前回の三倍強の兵を整えた。


 一方、黄祖軍の兵力は前回同様、三万である。


 この戦いにも、孫権は自ら出陣した。


 そして先鋒には、満を持して周瑜を総大将とし、呂蒙、淩統、董襲、馮則という水陸混合の部隊が結成された。


 対する黄祖軍は、今回は「陳就」という者を水軍都督に任命した。陳就は、大型船二隻を鎖で繋ぎ、そこに弩兵千人を配置し、防衛線を構築した。

 

 この陳就の防衛線はかなり強力で、孫権軍は苦戦を強いられる。周瑜が策を考えていると、淩統と董襲から提案があるという。


 淩統が言う。

 「董襲殿と話したのですが、あの二隻の大型船をつなぐ鎖を断ち切ってしまえば、いい話だと思います。」


 董襲が言う。

 「鎖を断ち切るのはそう簡単ではないかもしれませんが、小型船で侵入してやろうと思えばやれぬことではない、と我々は考えております。」


 淩統が言う。

 「既に各々の隊からこの作戦に命を懸けてもいいという者、それぞれ一〇〇の兵士は用意させて頂いております。ご命令さえ頂ければ、決死の覚悟で、あの鎖を断ち切って見せます。」


 周瑜は果たしてその作戦が可能なのか、しばらく目を閉じて頭の中で絵図を描いた。

 「できなくは、ない」

 そう結論付けた。周瑜が言う。

 「公績、元代(董襲の字)よ。お前たちの提案、悪くはない。しかし、本当に命懸けの仕事となるが、成し遂げられるか。」


 二人は同時に答えた。

 「必ずや、成し遂げて見せます。」


 淩統と董襲は、小型船で素早く乗り込み、兵士たちは命がけで鎖を断ち切ることに全力を注いだ。気づいた敵兵たちは、必死に防ごうとするが、遂に、鎖の切断に成功したのである。


 すると、大型船は流されていき、方向感覚を失っている。


 そこを呂蒙軍が急襲し、水軍都督の旗を掲げる船に乗り込み、乱戦の中、みごと陳就を討ち取ったのである。


 水軍都督を失った黄祖軍は完全に瓦解し、黄祖軍は水陸ともに潰走した。


 今回、黄祖は水軍を陳就に任せ、自らは陸地に布陣していた。いつもの様に逃げようとしたが、馮則の執拗な追撃にあい、遂にその場で斬首され、長きにわたる因縁の対決はここに終わりを迎えたのである。


 そして、黄祖軍唯一の人物であり、甘寧に孫権軍への投降を勧めた蘇飛も捕らわれの身になった。

孫権は、黄祖と蘇飛を深く恨んでおり、黄祖と蘇飛の首を入れるための箱二つを用意していたくらいである。


 しかし、ここで甘寧が孫権に言う。

 「孫権様。蘇飛殿は、私の恩人と言える方です。どうか、命だけはお助けください。」


 「蘇飛は長らく黄祖に仕え、私たち孫氏にとっては、恨み骨髄の者であり、許すわけにはいかぬ。」


 「しかし、もし、蘇飛殿がいなければ、こうやって私は孫権様にお仕えすることもかないませんでした。どうか、お命だけはお助けいただきたく。」


 甘寧は、額が割れるほど頭を下げて蘇飛の命乞いをした。

 そして続ける。

 「もし、蘇飛殿が再び反する様な行いをした場合、どうぞ、私の首をとって、あの箱にお納めください。」


 周泰は、この一連のやり取りを、親衛隊長として、孫権の側で聞いていた。いつもは、こういったやり取りに口を出すことは無いのだが、今回は甘寧の熱さに心が動き、孫権に言った。

 「孫権様。興覇殿(甘寧の字)の言葉には心があります。この言葉を無下にしてはならないと、この幼平、考えております。」


 「幼平・・・。お主が、口を挟むのは初めての事ではないか?お前は、蘇飛を許せと申すか。」


 「蘇飛を許すのではなく、興覇殿の気持ちを受け入れるのです。それならば、出来ることではないでしょうか。」


 「・・・わかった。興覇よ、お前の願い聞き届けよう。」


 甘寧は何度も礼の言葉を繰り返した。


 蘇飛は解放されることになった。甘寧が見送る。

 蘇飛が言う。

 「興覇よ、私の為に命乞いを必死にしてくれたと聞いた。心より、感謝する。」


 「本当であれば、これからもご一緒に働きたかったのですが、それは許されませんでした。私の力不足です。」


 「いや、私もそう若くはない。田舎でひっそり暮らして、この生涯を終えようと思う。」


 「本当に残念ですが、ここでお別れです。あなたから頂いた御恩、この興覇、一生忘れませぬ。」


 「興覇、お前の活躍を祈っているぞ。」

 

 こうして蘇飛は、その後、歴史の舞台に登場することなく、その生涯を終えた。 

 

 そして、孫権は孫氏の宿願であった黄祖討伐と江夏を手に入れ、喜びに満ち溢れていた。


 しかし、孫呉の存亡そのものを揺るがす報せが、間もなく孫権の所に届くのである。

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