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周泰  作者: 涼風隼人


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第15回 周泰、民政を学ぶ

 孫策は、皖城を陥落させた孫権に、今後の皖城の一切を任せることにした。正式に太守に任命したわけではないが、実質的な太守としての役割を担うことになったのである。

 

 それに伴い、孫策は孫権に、周泰や蒋欽にも民政というものを学ばせよ、と命令を出した。

 

 近い将来、周泰や蒋欽が一軍を率いて城を占拠した時、占領行政が出来るようにしておけ、ということである。

 

 孫権が言う。

 「この度、兄上からこの皖城の一切を任された。幼平と公奕にも協力してもらいたい。」

 

 周泰と蒋欽は拝礼した。孫権が続ける。

 「この皖城は、我々の手で落としたばかり。民は我々を恐れている。まずは、それを少しずつでも解消すること。そして、まだ劉勲の残党や反乱分子が紛れている可能性もある。その辺りの対処をして、治安の向上を図るために、巡察を強化したいと思っている。」

 

 周泰が言う。

 

 「民の教化を孫権様が行い、私と公奕が残党や反乱分子への対処を行うということでよろしいでしょうか。」

 

 「いや。我々三人が一丸となり、民の教化にも治安の向上も行う。兄上より、今後の事を考えて、占領行政を三人して学べ、ということだ。」

 

 蒋欽が言う。

 「ただ戦うだけではなく、後の事も自分たちで何とかしろ、ということでしょうか。」


 「そうだな。幼平も公奕も、近い将来一軍を率いて数々の城を落とすことであろう。その際、占領行政のことをわかっていなければいけないということだ。」

 

 周泰と蒋欽は再び、拝礼した。

 

 占領行政のまず大事なところは、兵士たちが民に危害を及ぼさない、略奪をしない、ということをわかってもらうことである。

 

 孫策軍は、その規律の徹底さは完璧といってよく、兵士たちが粗暴な振る舞いをしないことは、江東周辺では既に良く知られていた。

 

 次に大切なのが、治安維持である。

 

 やはり、攻城戦の後などは、城壁や城門に綻びが生じ、盗賊の類が侵入しやすい隙が生じやすいのと、もともといた兵士や豪族などが反乱や秩序を乱す行動をする可能性があり、そういった部分を取り締まる必要があった。

 

 孫権はまず、万一、民に被害を与える兵士がいたらすぐに申し出るように、城内や近隣の集落に周知し、城壁や城門の綻びも最優先で修繕を行った。

 

 そして周泰と蒋欽を随時警備に当たらせ、反乱分子が動けない様に牽制することを徹底した。

 

 そうすることにより、皖城の民は、今までの生活が保障されたと感じ、孫策の支配を受け入れつつあった。

 

 周泰も蒋欽も、警備を主としつつも、時に民の声を直接聞いて、改善すべきと思ったことなどは、すぐに孫権に報告し、その対応を素早く行った。

 

 蒋欽が言う。

 「幼平よ。民の声を直接聞く、というのは大切なことだな。」


 「ああ。俺もそう思うようになった。民がいなければ、いくら城を手に入れてもどうにもならないからな。」


 「ああ。空城を手に入れたところで、そこに人がいない限り、何も生み出すことは出来ないからな。」


 「ああ。俺たちはこれからも数多くの城を落とすことになるだろうが、民に対する思いやりは常に持たねばな。」


 孫権が言う。

 「これも、もともと兄上が厳しい軍律で、終戦後の占領行政を行ってきた効果が、この江東地域には根付いてきた、ということだ。やはり、兄上を見習わねばなるまい。」

 

 周泰と蒋欽は拝礼した。


―三ヶ月後―

 皖城の民たちは、すっかり孫策の民、と言う感じになった。もともと、前城主の劉勲の評判は芳しくなく、もうすでに劉勲を懐かしむ声などは皆無であった。


 そこに、皖城で一番の名士と名高い「橋公」が孫権を訪ねてきた。孫権は何事かと出迎えた。


 橋公は、拝礼して孫権に言う。

 「孫策様の支配がはじまり、既にそれなりの期間が過ぎましたが、何の混乱も生じず、民たちの生活は以前よりも豊かに、安全になったと皆、喜んでおります。」


 「それは、よかった。まさに我が軍の方針に基づいて統治をさせてもらっている成果が出ているということで、その様な言葉を頂くと、こちらも嬉しく思う。」


 「そこで、ご提案があり、参りました。私には妙齢な娘が二人おります。人々は、大橋、小橋とその美しさを褒めたたえてくれております。そこで、大橋を孫策様に、小橋を孫権様に献じたく、本日は伺わせて頂きました。」

 

 大橋と小橋が美しい姉妹である、というのは孫権も話では聞いていた。孫権は言う。

 「お気持ちはわかりました。まずは、兄の孫策に報告します。お答えは、その後、こちらからお伝えに参りますが、それでよろしいでしょうか。」

 

 「結構でございます。よき、ご返事、お待ちしております。」

 

 橋公は、拝礼して退出した。

 

 孫権は、ことのあらましを書面にしたため、呉郡にいる孫策に伝えた。この時、孫権はまだ自分には妻帯は早く、小橋に関しては周瑜に差し上げてはどうか、そうすれば名実ともに義兄弟になれる旨の提案をしたためた。

 

 孫策からの返書では、孫権の提案通り進めよ、という指示が届いた。

 

 早速、孫権は橋公の下を訪ねて言った。

 「橋公殿。こちらからの提案ですが、小橋殿は私ではなく、我が軍の軍師であり、名族である周瑜に頂けないでしょうか。さすれば、このお話、進めさせて頂きます。」


 「なるほど・・・。私としては、孫権様に是非、という考えもあったのですが・・・。」


 「私はまだ、妻帯を考えておりませぬ。我が軍の周瑜は、兄である孫策を支える側近中の側近。悪い話ではないと思いますが。」


 「わかりました。それでは、大橋を孫策様に、小橋を周瑜様に差し上げたく存じます。」


 こうして、絶世の美女として名高い大橋、小橋姉妹はそれぞれ、孫策と周瑜に嫁ぐことになり、この婚姻関係によって、皖城は名実ともに孫策の支配下に入ったのである。

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