第13回 周泰、孫権の家臣となる
孫権は宣城の戦いで周泰に命を救われた。
自分の未熟さのせいで、周泰の命を失いかけた。
そのことについて、周泰に対する大いなる感謝と、自分の未熟さへの深い反省という気持ちを抱えながら、ここ最近過ごしていた。
この気持ちに関して、どうするのが一番なのか。
何となく答えは出ているが、兄である孫策が果たして認めてくれるかどうか。悩んでいても事は進まないので、覚悟を決めて孫策の軍営を訪ねることにした。
孫策は江東の地図を広げ、何か考えているようであった。
声を掛けるか悩んだが、孫権は言う。
「兄上。お忙しいところ申し訳ございません。兄上にお願いの儀があり、参上致しました。」
「お前が俺にお願いとは珍しいな、仲謀。聞こう。」
孫権はいつもと違い、少し緊張気味な表情で言う。
「周泰を我が家臣に頂けないでしょうか。」
「周泰を・・・。周泰は、この軍の中核を担う人材だと俺は思っている。俺が今、一番期待している漢だ。お前に扱えるのか?」
「十分に承知をしております。周泰も兄上を心から尊敬して仕えているのもわかっているつもりです。それでも是非、我が家臣に頂きたく。」
「命の恩人だからか?」
「それもございますが、私の未熟さを、周泰を側に置くことで常に戒め、自分の成長につなげたいと思っております。そして・・・。」
「そして?」
「いずれは、私が周泰を守ることのできる漢になりたいと思っております。」
「ほう、お前が周泰を守るか・・・。想像はつかないが、まあ、いいだろう。ただ一つ約束しろ。最初に言った通り、周泰はこの軍の中核を担っていく人材だ。お前の未熟さで、また周泰の命を危険に晒すような事があれば、許さぬ。そして、守ると言った以上、どんな事があろうとも周泰を守り通せ。わかったか!」
「はい。この仲謀、兄上の仰せに従います。この約束を違えた場合、如何様な罰もお受けいたします。」
「いいだろう。周泰は今日からお前の家臣だ。大事にするがよい。そして、蒋欽もつけてやろう。蒋欽もまた、この軍の将来を背負う人材だ。この二人を使いこなし、孫権隊として、十分な武功を挙げろ!」
「兄上、本当にありがとうございます。この仲謀、必ずやご期待に沿えるよう、尽力致します。」
こうして、周泰と蒋欽は孫権の家臣となった。
孫権は早速、自ら二人に会いに行った。孫権が言う。
「まずは、幼平。宣城の戦いではお前に命を救われた。改めて、礼を言う。そして、お前の命を危険にさしてしまったことを、心から謝罪したい。」
孫権は頭を下げた。周泰が言う。
「孫権様、おやめください。私は自分の職分を果たそうとしたまでです。私こそ、孫権様の命を危険に晒してしまったこと、お詫び申し上げます。」
「あれは私の未熟の至り。幼平が責任を感じる事は無い。既に聞いていると思うが、これからは私の家臣として、この未熟者を助けてくれ、よろしく頼む。」
孫権は再び頭を下げた。周泰が言う。
「もったいないお言葉です。この幼平、必ずや孫権様をお守り致します。」
周泰は拝礼した。孫権が蒋欽に言う。
「公奕よ。お前も今日から私の家臣となる。不満もあるだろうが、よろしく頼む。」
「何をおっしゃいます。何が不満でございましょうか。幼平同様、この公奕、命を懸けて孫権様をお守り致す所存でございます。幼平と共に、二枚の盾となること、お約束申し上げます。」
「二枚の盾・・・。非常に頼もしい言葉、感謝する。二人とも、この未熟者への諫言は大歓迎だ。思ったこと、気づいたことは、遠慮せずに何でも言ってくれ。その言葉で罰するなどは決してしないこと、ここに誓おう。」
周泰と蒋欽は拝礼した。
こうして、若き孫権の下に、周泰と蒋欽といった二枚の盾が加わることとなり、孫権隊は大いに強化をされたのである。




