第12回 周泰、孫策と周瑜に感動する
西暦一九八年、孫策軍に一人の漢が加わった。
「周瑜公瑾」である。
孫策と周瑜の出会いは古く、約八年前に遡る。
孫策の父である「孫堅」が洛陽に「董卓」討伐に向かう際に、自分の家族を廬江郡の舒県に避難をさせた。そこに周瑜が住んでおり、ふたりはまだ一五歳の少年であったが、すぐに意気投合し、固い友情を約し「断金の交わり」を結んだ。
そしてこの八年間、孫策は袁術から独立し江東制覇に乗り出し、周瑜は袁術の支配圏で時を過ごしていた
が、周瑜は、袁術の下にいても未来が無いと悟り、旧知を頼り、孫策軍に参加することを決断したのである。
この時の孫策の喜びようは例えようがないほどであった。
「公瑾、公瑾よ、よくぞ参ってくれた!」
孫策は、自ら出迎えた。
周瑜は拝礼して答える。
「孫策様。本当にご無沙汰しております。あなたのご武勇について、聞かぬ日は無いほどのご活躍、自分の事の様に嬉しく思っておりました。」
「そうか。公瑾よ。我が軍は今、連戦連勝であり、軍紀も整っているつもりだ。しかし、まだ足りない部分もあるであろう。朱治と共に、軍制の改革など、どんどん取り組んでくれると、ありがたい。」
朱治が言う。
「周瑜殿。私に遠慮などはいりません。どうぞ、ご自由にご自分の持つ才能を孫策様の為に活かしてくだされ。私はそれで十分です。」
「新参者の私にその様な重責が担えるかどうか・・・。」
「公瑾よ、遠慮をする必要はない。我が軍は、実力があれば、新参も古参も関係なく扱っている。だから、自分の持てる力を発揮してくれれば、それでよい。」
「わかりました、私の出来得る限りのことを致しましょう。」
孫策がひと際大きな声で言う。
「皆の者、よく聞け!今日、ここに私は一人の天才を手に入れた。周瑜公瑾だ!天才の名にふさわしく、ここで建威中郎将に任命し、兵士二千と騎馬五〇を与える!」
軍中がざわつく。この待遇は、今、孫策軍で「将軍」と呼ばれる者と同じ待遇であり、現在は「程普」と「呂範」だけであった。
これだけでも、孫策がいかに周瑜の才能に期待していたかが理解できる。このやり取りを周泰と蒋欽は見ていた。蒋欽が言う。
「周泰よ、体の方はもう、大丈夫なのか?」
「ああ。おかげさまでな。丈夫に生んでくれた父と母に感謝をしておる。」
「そうだな、お前は本当に驚くくらい頑丈だ。ところで、あの周瑜様は、そんなにすごいお方なのか?」
「私も良くは知らない。ただ、早く仲間に迎えたい人がいる、と言うのは孫策様に聞いたことがある。恐らくそれが、周瑜様ということだろう。」
「見た感じが、武辺者の俺たちとは違い、気品にあふれてさわやかだよな。」
「ああ。おそらく、軍制や軍略といった、軍師としての役割を期待されているのであろうな。」
「なるほど、朱治様のような感じか。」
「しかし、漢同士の友情とはいいものだな。」
「幼平よ、お前には俺がいるぜ。」
「ああ、公奕よ。お前にも俺がいることを忘れるな。それで、十分だ。」
こうして、孫策軍に一人の天才、周瑜が加わり、これからの孫策軍の戦い方そのものが、変わっていくのである。




