第33話 知恵と器用さと運で戦うアレ
2026/10/15追記:謳い文句ちょっと変えました。
知恵と器用さと勝負運→知恵と器用さと運
ラミアナイト様からアイテムボックスの指輪をカツアゲされそうになっている俺だよ。
正直とっても渡したくない…!
「こレは…その…」
「どうした?魔王軍の幹部であらせられるアヌラール様に貢献できるのダぞ。光栄なことダろう」
「そーだそーだ!さっさとお渡しするんだゾ!」
案内役のインプも一緒になって急かしてくる。
腹立つ。
俺は無意識に指輪を付けている手にもう片方の手を添えていた。
隣では親方が俺の身を案じるようにしてこちらを見ている。
「命の方が大事、大人しく渡そう」
親方はそう言いたげだが、すぐにそれを口にしないあたり判断は俺に委ねてくれているようだ。
あんま揉めても迷惑かけちゃうし、渡すべきだよな…
でも、本当に観念するしかないのか?
俺達の物流革命はここで終わりなのか?
中にはホネスケからもらった他の指輪も入ってるのに…
…いや、ラミアナイト様は意外と話を聞いてくれるタイプっぽいし、仕事に使ってる旨だけでも話してみよう。
「その…この指輪は、アイテムボックスが使えテ
「はぁ~?【異空間収納】ぅ?だったらなおさらゴブリンが持っててどうすんだヨ!ゴブリンが空間魔法なんて扱えるわけねーダロ!」
「………」
案内役のインプによる横槍は一旦無視して、俺はアイテムボックスを出現させた。
「キキッ!?」
「……ほう」
驚くインプと静観するラミアナイト様の前で、盾を何枚か取り出しつつアイテムボックスの用途について説明する。
「こんな風に、防具の運搬に活用してルんです。集めた素材も基本的にはここに入れていて…も、もちろんアヌラール様に貢献したい気持ちはあリますが、これがあるといっぱい持ち運びができて、魔王軍の為にたくさん働けルな~がんばれるな~なんて…」
「…なるほど」
ラミアナイト様から発せられていたカツアゲの圧が一旦弱まる。
よかった、交渉の余地はありそうだ。
「しかし、ゴブリンの身でよく空間魔法の発動イメージが掴めたものダな」
「発動イメージ…?」
「魔力を宿した魔石の中に術式が固定されているとはいえ、魔法を発動するには明確なイメージの力が必要ダ。空間魔法のように高度な魔法は、生まれながらにして魔法感覚に特化している種の魔物にしか扱えないと思っていたが…」
「自分で魔法を構築したこともねーのに道具の魔法はすんなり使えるなんて、まるでニンゲンみたいなんだゾ!」
「なっ…」
そう繋がるの…!?
「ゴブリンのくせにナマイキなんだゾ!なんでそんなマネができるんだヨ!」
「そ、それは…」
くっ…急にさっぱりわからん詰められ方をされてしまった…!
魔法感覚ってなんだ…!
よくわからないけど、魔法を扱うにはそれなりのイメージ力が必要で、並みのゴブリンがそのイメージ力を持っているのはどうやらかなり不自然なことだったらしい。
しかし、俺の中身が人間であることもアイテムボックスを発動する際のイメージが秘密道具であることも当然言うわけにはいかない。
というか言っても伝わらない。
伝わったらそれはそれでまずい。
「その~…魔法が得意な仲間にイメージの仕方を教えてもらって、それでなんとカ使えるよウになりました」
嘘はついてない。
実際、扱えるようになったきっかけはウオタローの助言だったし。
嘘はついてないよ、うん。
「魔法が得意な仲間ァ?…あー、あの城にやたら魚を持ってくる青いリザードマンのことカ」
「よくチェックしテんなぁ…」
「ん~~~…確かにアイツはオマエ達とよくいるし、強そうな魔力してたケド…あの手の魔物はできても単純な属性攻撃魔法のゴリ押しで、空間魔法に馴染みはないんじゃ…」
おいやめろ。
なんか無駄に鋭いのやめろ。
「コイツハ、村デイチバン、賢クテ器用ナゴブリン、デシタ。見テ覚エル、ヨクデキル。盾作リモ、スグ覚エタ。ダカラ、ユビワモ使エタ、思イマス」
「!」
親方が一歩前に出てフォローに入ってくれた。
するとインプがメンチを切るようにして親方ににじりよる。
「はぁ~~~?ちょ~っと手先が器用なのと、魔法感覚があるかどうかはまた話が別なんだゾ!」
「オレハ、ラミアナイト様ニ話、シテイル。オマエニハ言ッテイナイ」
「何ーッ!?」
キーキー騒ぐインプを他所に、ラミアナイト様は少し考えるような仕草をみせてから口を開く。
「…まぁ良い。オマエが仲間と器用さに恵まれたゴブリンであることはわかった。その【異空間収納】を魔王軍の為に活かそうとしていることもな」
「そ、そレじゃあ…!」
指輪はこのまま使い続けてOK…!?
「ダが…いちゴブリンの働きが良くなることよりも、アヌラール様の手によって新たな''作品''が生み出されることの方がよほど魔王軍の為になるとは思わないか?」
「作品…?」
俺がそう聞き返すと、ラミアナイト様は腕を広げて演説するように語り出した。
「アヌラール様はニンゲンが作った装飾品を魔改造することで''闇の装飾品''へと変貌させることができるのダ。闇の装飾品はこれまでも多くのニンゲンどもを惑わせ、数々の作戦において大いにその威力を発揮してきた偉大なアイテム…そんな偉大なアイテムを生み出すための素材となり得る装飾品を、たダの雑用係の手元に置いておくというのはあまりにも勿体無い話ダ」
「そ、そウ…ですね…」
結構しっかりした理由で回収しようとしていたんだな…。
個人的には闇のアクセサリーなんて明らかに物騒なもの作らないで欲しいところだけども、魔王軍の拠点のど真ん中でそんな意見は通用しない。
やはりこの指輪とはおさらばするしかないようだ。
便利なのもそうだけど、もらいものだったからちょっと申し訳ない。
ごめんなホネスケ…せっかくくれたのに…。
俺が指輪を庇うように添えていた手を退け、観念しようとしていたところでラミアナイト様が言葉を続ける。
「…とはいえ、今回はワタシの部隊もオマエ達が作った盾の世話になる。【異空間収納】を使った仕事ぶりの恩恵を受ける立場にあるわけダ」
「え…」
「それに、オマエ達のように真面目に働く魔物はとても珍しい。勤勉な働き手が重宝しているという道具を奪うのはワタシとて少々気が引ける」
「え…!」
ラ、ラミアナイト様ぁ…!
なんと慈悲深い御姉様なのでしょうか!
これはひょっとして今回は特別に見逃してくれるという流れなのでしょうか!
「ここはひとつ…」
「ここはひトつ…?」
「その指輪を賭けて勝負といこうジャないか」
「え…勝負!?」
なんでそうなるの御姉様!?
ラミアナイト様とゴブリンの俺が勝負って何!?死?
「オマエはその辺のスライムより弱そうダが、賢さと器用さはなかなかのようダ。本来納めるべきである装飾品を我が物として扱いたいのであれば、それに値するダけの能力があることをこのワタシに示してみるが良い」
「し、示すったって…」
「ワタシに勝つことができれば、その指輪は回収せずに見逃してやろう」
それは実質見逃す気がないという話では…?
ただの負け確イベントなのでは…?
どう考えても無事じゃ済まないのでは…!?
話がこじれてきたところで親方からストップがかかる。
親方は自分の背に隠すようにして俺を後ろに下がらせ、代わりに前に出た。
「オレ達、タダノゴブリン。ラミアナイト様ト勝負、トテモデキナイ、デス。ドウカ、オ許シヲ」
「そう案ずるな。何も決闘をしようなどという話ではない。そこのインプから聞いたぞ?なんでも、この城には独自の勝負形式があるそうジャないか」
何それ知らん。
「それは体力や魔力を消費することなく読み合いの勘を鍛えられることから、出撃を控えた魔王軍の暇潰しとしても重用されているのダとか」
何それ。
そんなのあんの?
「問われるものが知恵と器用さと運というのもなかなか面白いではないか」
いや知らん知らん知ら…ん?
今なんか、どこかで聞いたことある謳い文句が出てきたような…。
いや、まさかな。
まさかそんなはず…
「確かなんと言ったか…インプ」
ラミアナイト様が案内役のインプに促すと、そいつは自信満々に胸を張って答えた。
「ハイ!指を使って数字で戦う魔物の智闘、''指スマ''デス!」
「やっぱり指スマかよ…!」
やっぱり指スマかよ―――!




