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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第一章 異世界の片隅で指スマ

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第3話 ゴブリン集落デビュー

ゴブリンの五つ子である俺達は生まれ育った巣穴を旅立ち、仲間がいるという''村''を目指してひたすら夜の森を進んでいた。

森の中はいろんな音やにおいがしていて、生き物の気配もあちこちから感じる。

俺はかーちゃんからもらった石斧の持ち手をギュッと握りしめ、兄弟とはぐれないよう必死に走った。


足を進めるほど森は鬱蒼と深くなっていく。

迷子になっているのではと不安になりそうなほどだ。

しかし確かに、前に進むほど強く感じるにおいがある。

血と油と獣と糞尿が合わさったようなこのにおい…これこそが、村にいるという仲間(ゴブリン)のにおいなのだろう。

このにおいに不快感を覚えないんだから、俺ももう立派なゴブリンだな!


なんて思っていたが、俺はまだまだゴブリンを分かっていなかったのだと思い知ることになる。


村に向かう途中、何度か魔物と遭遇した。

最初はコウモリみたいな魔物が三匹。

牙を剥き出しにしながら上から襲いかかってきたが、兄弟達が石斧で反撃して地面に叩き落とした。

生まれて初めての勝利に兄弟は「ギィィィィイ!!」と雄叫びを上げる。

兄弟の頼もしい姿にちょっと感動する。

ついこの間まではいはいしてた子達がこんなに強くなって…!

仕留めた魔物を羽を掴み、一人一匹ずつ戦利品として持っていくようだ。


少し進むと次はスライムの群れが現れた。

数が多くて囲まれたが、兄弟達は片っ端から石斧で叩き潰していった。

スライム達は一撃食らっただけで形を崩し、ただの液体となった。


そして最後には狼のような魔物が現れた。

コイツは殺意が高くてかなり身に危険を感じた…。

強敵だったが兄弟達は力を合わせて立ち向かい(タコ殴りにし)、なんとか勝利を納めた。

一番活躍した兄弟が両手で掲げるようにして仕留めた魔物の体を持ち上げ、運んでいく。


さて、こうして村に着くまでの間に兄弟四人がそれぞれ戦利品を手にしたわけだが、俺はというと…

殺るか殺られるかの世界にビビり散らかしてほとんど何もできなかった。

えいやとなんとか倒せたのがスライム一体…

お兄ちゃん目線でみんなの成長に感動している場合ではない。


…覚悟してたつもりなんだけどなぁ。

いざ命のやり取りを目の当たりにすると、やっぱり元現代人としては怯まざるを得ない事鳥の如し。

つまりチキンヤローだ、俺は。

魔物同士でもこんなに戦うなんて…俺やっていけるのかな?

そのうち兄弟達からも見捨てられたりしない?弱すぎて。


くよくよしながらも歩き続けると、森の中に拓けた場所が見えてくる。


「ア…アレ、村……?」


「ギャッ!ギャッ!」と兄弟は嬉しそうな声をあげながら駆け足になった。俺もそれについていく。


俺達は無事、全員揃って村に足を踏み入れることができた。

そこは村というよりは野営地のような感じで、焚き火を中心にして簡易的な寝床がいくつもある。

更にその周辺には木や草、骨などで作られた屋根付きの建物らしきものがちらほら見られ、そして何より…ゴブリンがいっぱいいる!100人くらいいるのではないだろうか。それは言い過ぎだ。でも多い!


「結構広イんダナ…!」


異世界に生まれてから約3ヶ月間、巣穴暮らししか知らなかった俺にとってそこはちょっとした都会に思えた。

キョロキョロと村を見ている俺達に気がついた、数人のゴブリンが駆け寄ってきた。


「ナカマ!ナカマ!シンイリ、キタ!」

「シンイリ!シンイリ!」

「シンイリ、マモノ、ミセロ」


兄弟達は誇らしげに仕留めた魔物を掲げる。


「シャドーバット、サン。ブラッディウルフ、イチ…ブラッディウルフ、クワレルシンイリ、オオイ。コイツシトメル、オマエラ、ナカナカヤル」

「ギッ!ギッ!ギッ!」


早速村のゴブリンに認められたからか、喜ぶ兄弟達。

その様子を誇らしく思う気持ちと、自分だけ何もできなかった不甲斐なさで複雑な気持ちだ…


「……ン、オマエ、ナニモモッテナイ」

「オ、オレハ……」

「ン、オマエ、モウコトバ、ハナセルノカ」

「エ、あ、ハ、ハイ…話スことダケなら、デキマス。戦ウのは、チョット……」

「オ、オマエ……メチャクチャコトバハナス。メチャクチャアタマ、イイ」


そんなに…?

でもかーちゃんもよく褒めてくれてたな。

なるほど…ゴブリンの世界では言葉がたくさん話せると賢いと見なされるのか。


正直、俺に戦闘は無理だ。

慣れてかなきゃとは思うけど、慣れたとしてもそんなに戦えないと思う。

だからこそ、別の長所をアピールしなきゃ。

俺が村の仲間にアピールできる、唯一の長所(チート)……!


「オ…オレ、話スコト、たくさんデキマス!言葉ならイッパイ分カリマス!自炊経験もアリマス!ヨロシクお願いしマス!」

「「ギィィィィィィ!!」」


俺の(ゴブリンにしては)流暢な喋りに、オーディエンスが沸いた。な、なんか嬉しい!


「ギッ!ギッ!ギッ!」


兄弟達は村のゴブリンに俺も認めてもらえたことを喜んでくれているようだ。

あったかい…!

ゴブリンの世界…あったかいよ……!


こうして、兄弟達と一緒に初めての村デビューをなんとか果たせた。

これから群れでの生活が始まるんだな…頑張るぞ!

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