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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第三章 宝と誘惑、それと指スマ

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第30話 お呼び出し

俺地下遭難事件の翌日。


ホネスケからもらった例のアイテムボックスを盾の搬入に使えるか試すべく、島に作り置きしてある盾を入れてみることにした。


何枚入るかな~と思いながらとりあえずひょいひょいと突っ込んでみたところ、あるだけ全部入ってしまった。

小石の盾12枚と海の盾6枚。

計18枚を収めてもなお、なんだかまだまだ入りそう。


「めちゃくちゃ入りますね、これ…」

「メチャクチャ入ル…」


とはいえ、いきなり全部入れて運ぶのもなんか怖かったので一旦中身を半分に減らしてから城に持って行くことにした。

運んでいる最中にアイテムボックス内でモノがぶつかり合って、せっかく作った盾がボロボロになったりしたらやだなーと思ったからだ。


しかし、そんな考えは杞憂にすぎなかった。


城に着いてアイテムボックスから盾を取り出してみると、入れた時と同じ綺麗な状態がちゃんと保たれていた。

しかも取り出しやすい。

アイテムボックスに手を突っ込みながら取り出したいものをイメージすると、不思議と手元にそれが触れてきて簡単に取り出せる。


ゴトッ…ゴトッ…


アイテムボックスから盾を出して、いつものように装備品の山に添えていく。


「便利ダナ…」

「便利でスね…」


その圧倒的な利便性に唖然とする俺と親方。

重い荷物を持つこともなく、盾を9枚も運べてしまった。

こんなに便利でいいんでしょうか…。


アイテムボックス(これ)があれば、たくさん作って一気に納品というスタイルも簡単に出来そうだ。


とはいえ、いつ城の情勢が変わるかわからないし、城に来ないとその変化にも気づけない。

相変わらずこまめに登城(出社)するようではあるが、一旦毎日から2~3日に1回ペースに切り替えてもいいかな。


「コレハ、アイテムボックス、入ルカ?」

「入る入る。入れちゃえ入れちゃエ」

「ヘヘ」

「へへ」


装備品の山にある壊れた防具もアイテムボックスがあれば容易に持ち帰れる。

今日はでっけぇ鎧2つと籠手3組を持って帰っちゃうぞ。へへ。


なんて便利なんだアイテムボックス。

ホネスケがくれた指輪のおかげで、魔王軍雑用係ゴブリン界隈に物流革命が起きた。

まぁその界隈にいるの二匹だけなんですけど。


「ユビタノユビワノオカゲダナ」

「いやぁ、ホネスケのおかげデすよ」


この指輪を譲ってくれたホネスケに、改めてお礼をしに行かないとな。


◇◇◇


「ホネスケ~、いルぅ~?調子どぉ~?」


シーーン…


「…近くにはいないっポいな」

「気配、ワカルノカ?」

「いや、聞こえてたら返事してくレるだろうなーと思って…」


俺と親方は納品終わりに暖炉の部屋まで足を運び、地下に呼び掛けをしてみていた。

しかし、反応がない。

どうやら不在のようだ。


もう地上に出たのかな?

少し歩いただけでは見かけなかったけど、まぁ城は広いからなぁ。


…ホネスケも、魔物の気配はわかるよな?

わかるなら上の階には行かないと思うけど…

なんか心配になってきたぞ。


「大丈夫カな…」

「アンデッド、斬ッテモ、刺シテモ、叩イテモ死ナナイ。大丈夫ダロ」

「アンデッドすゲぇな…」


今日のところは諦めて帰ることにした。


暖炉の部屋を出て、来た道を戻る。

外の景色がよく見える風通しの良い拱廊(きょうろう)を通ると、魔物のいない静かな庭が見える。

いや厳密には相変わらず空にちょっと何かいるんだけど、あれはいつもいるやつなのでたぶん城の見張り役とかなんじゃないかな。

つまり何が言いたいのかって言うと、穏やかでいい夜だなってこと。


やっぱり俺も平和が好きだなぁ…。

いい感じに異世界を感じながら、適度に穏やかな暮らしを続けたいよ。


◇◇◇


2日後。


今日も小石の盾6枚と海の盾3枚、計9枚をアイテムボックスに入れて城へ向かう。

こんなに盾を運んでいるのに全く重くない。

なんて楽々チン々なんだ。


マジ物流革命。マジ文明開化。

魔法とはなんと偉大で素敵なものなのだろう。

便利な魔法に感動しながら森をルンルンと歩くゴブリンがここに二匹。


いつものように城にワープし、部屋からロビーに出ようとすると…


「……待テ」


親方が何か異変を察したのか、俺を制止した。

ひとまずワープ部屋に留まり、部屋の外に耳を澄ませてみる。


「キキッ」

「キキキッ」


パタパタパタパタ…


なんだ…?

いつもより活気がある。

メシ係の魔物じゃない魔物がいる?


俺と親方は少しだけ扉を開けて、ロビーの様子を覗いてみた。


そこから見えたのは、ナメプーそっくりのインプ達が装備品の山からモノを運び出している光景。

よく見ると、運んでいるのは俺達がいつも納品している海の盾だった。

1匹1枚持つのがやっとのようで、両手で一生懸命盾を持ち上げながらパタパタと飛んで上の階へと運んでいる。


城の魔物が活発になったということは、また魔王軍が出撃する準備が始まったということなのだろう。

自分の仕事が平和の敵であることを嫌でも思い出す…。


複雑な気持ちでいると、親方が静かに扉を閉じた。


「…アレヲ手伝ワサレルノハ、ナニカト面倒。今日ハ帰ルカ」

「そうですね…こっそり帰っちゃいマしょう」


俺達がこっそり島へ帰ろうとしたその時。


『何コソコソしてんだヨ、ゴブリンども!』

「「!」」


どこからともなく、頭に声が響いてきた。


『そこにいるのはわかってんだゾ!オイラ探知はその辺のデーモンより得意なんダ!』


扉の向こうか微かに聞こえてくるパタパタと羽音が、ひとつこちらに近づいてくる。


そして次の瞬間、


ガチャ…


と扉が僅かに開いたのだが、


ダンッ!


「ギャッ!?」

「あ」


親方が蹴るようにしてそれを押し返し、扉を開けようとした魔物の驚いた声も聞こえた。

そのまま片足で扉を抑えながら、槍も構えて軽く臨戦態勢を取る親方。


「い、いいんですカ親方、こんなことして…」

「イヤナ予感ガシテ、ツイ…」

「ついカ…じゃあ仕方ない」

「仕方なくねーーーヨ!開けロッ!」


ガチャガチャガチャガチャ!


外にいる魔物がキレ気味に扉のドアノブを何度も回している。

が、親方が足で抑えているので当然開かない。


魔物は近くまで来たからか、念話ではなく肉声に切り替えたようだ。器用だね。

そして念話の時点でちょっと思ったけど、ものすごく聞き覚えがある声と口調。

もしかして…ナメプー?


「今3階に上級部隊のラミアナイト様が来てんだヨ!盾のことでオマエ達をお呼びダ!いいから出て来い!」

「ラ、ラミアナイト様ぁ…?」


なんだよ上級部隊って…

明らかに強そうで怖いじゃねーか。


「装備品をチョータツしに来たらしくてヨ、オマエらがよく持って来るなんかのウロコとなんかの破片がくっついてる盾のこと気に入ってたゾ!」

「だから海の盾が運ばれてルのか…小石の盾は?」

「石ころの盾なんかラミアナイト様が使うわけねーダロ」

「言い方ってもんがあるだろお前ぶっとばすぞ」


そりゃ見た目も性能も全然違うだろうけど、どっちも一生懸命作ってんの!

リザードマン部隊は「矢が防げそう」って喜んでくれましたよ!


「オイラがラミアナイト様にあの盾を見せたんダ!ゴブリンが持って来るってことも言っタ!どーだ?嬉しいダロ!泣いて喜べ!そして出て来い!」

「余計ナ真似ヲ…」


親方はそう言って眉間にシワを寄せた。


「ヨケイじゃねーダロ。魔王軍のための盾なんだかラ」

「おい!ちょっと正論を言ウな」


魔王軍の元で働く魔物としてはダメな考えかもしれないけど、正直俺達はあまり大きなことに関わりたくないんだ。

魔王軍の待機拠点(ここ)で出てくる大きな話なんて十中八九平和の真反対事だろうし、おっかない魔物とは極力会いたくない。

何故ならおっかないからだ。


とは言え、もう話を通されちゃってるんじゃなぁ…。


「ビビんなっテ!オイラがちゃんとラミアナイト様のいる部屋まで案内してやるからヨ!だから出て来いッ!」

「やだそれ世界一信用ならないんでスけど…キミさ、オレのことを地下に置いていったあのインプなんじゃ

「ごちゃごちゃ言わずにいーから来いヨ!オイラもう連れて来マスってラミアナイト様に言っちゃったんだゾ!あんまモタモタしてると皆殺しになっちまうかもしれねーダロ!」

「な、何ぃ~…!?」


そんな怖い魔物なのかよラミアナイト様ってぇのはよぉ…!


「…ワカッタ。話、オレガ行ク」

「!」


親方は構えていた槍を下ろす。

その顔はどこか腹を括ったような表情をしていた。


「コイツノ言ッテイルコトガ本当ナラ、オレ達ヲ呼ンデイル魔物、1階ニイタ魔王軍ヨリ、ズット強イ魔物。逆ラウノハマズイ。ユビタ、島デ待ッテイロ」

「ま、待っテろって…」


やっぱり強い魔物は会うこと自体が危ない存在ってことだよな…。


無理難題を言われるかもしれないし、

機嫌を損ねたら即死かもしれないし、

どこまで理性的に話してくれるかもわからなないし…


そんな相手のところにひとりで行くなんてダメだって…!


「親方…!」


俺がひとりで行こうとする親方を止めようとしたその時。


「部屋を出るときに2匹来てるって言っちゃったんだゾ。どっちも来い」


扉の向こうからケロッと告げられる無慈悲な追加情報に俺と親方は一瞬固まり、ため息。


「ま~細やカな報告だこと…」

「本当ニ、余計ナコトバカリスル」

「オマエらさっきから態度が悪いゾ!はーやーくー出ーてー来ーいィ~~ッ!」


ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!


外にいる魔物が苛立ちながら、抑えられて開かない扉のドアノブを何度も回して催促する。


「流石に観念するカ…」

「ン…」


ガチャリ


俺と親方は渋々扉を開けてロビーに出た。


「やーっと出てきたんだゾ!手間かけさせんなよナ!」


待ち構えていたのは、パタパタと浮いている一匹のインプだった。


…やはり俺を地下に突き落として放置したあのナメプーな気がしてならないのだが、インプなんてみんなこんな感じかもしれないのでまだちょっと確信が持てない。


そのインプはすぐに階段の方へ飛んでいき、「コッチだコッチ!」と俺達を手招きした。


どんなに物騒でも、魔王軍に呼ばれたら雑用係は行くしかないわけだ。

くぅ~!下っ端ゴブリンはつらいよ!

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