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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第三章 宝と誘惑、それと指スマ

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第27話 魔法のオタカラ

地下通路をガイコツについていく形で進んでいく。


少し歩いただけで暗さが一気に深まる。

いくら魔物の目が暗闇に強いとはいえ、月明かりすらない地下ともなると流石に前が見えなくなってくる。


これ以上進むようならやっぱり引き返そうかな…

と思っていたところで、先導していたガイコツが足を止めた。


『ココだ!』

「え、ここ…?」


ガイコツが見ているのは、なんの変哲もないように見える通路の壁。

入り口らしきものは全く見当たらないが…


ガイコツは壁にビタンッ!とタックルをして、そのまま全身を使って壁を押し始めた。


すると…


ゴゴゴ…


「!」


壁の一部が少しずつ、回転扉のように動き始めたではないか。

けれど壁が重いのか本人が軽いのか。

ガイコツは足をバタつかせながらかなり頑張って壁を押している様子。


「て、手伝いマす!」


俺も一緒に壁を押して、通路の壁と回る壁がほぼ垂直になるまで動かした。


『オマエ力あるな!やッぱひとりよりふたりか!』

「へへ…自分ゴブリンなんデ!」


タフで筋力のある魔物の体に感謝!


『さ、入れ入れ!この壁は押すのをやめると勝手に戻るからな!ササッと入るのがコツだ!』


骨(・)だけにコ(・)ツ(・)ってかぁ!

…いや、このツッコミをするにはまだ関係値が足りない気がする。やめておこう。


開かれた壁の奥に空間が広がっていることはなんとなくわかるものの、暗すぎて中の様子は全く見えない。

この中に入るのはなかなか勇気がいるな…中だけに。


『ン?どしたどした』

「あ、いや…ちょっ…と暗すぎて、進むの怖いなーとか思っチゃったりして…」

『暗い?ンじャ明かりがないとな。ン~…ほいッ!』


んばっ!とその場でガイコツがバンザイをすると…


ピカァァ…!


「うわ!?」


ガイコツの全身がうっすら青白く発光し始めた!

ハロウィンのパレードとかにいそう…!


『どうだ!明るくなッたか!』

「な、なったなっタ!ありがとウ!すごイねそれ!魔法?」

『さァ?』

「さぁと来タか…」

『オレサマフィーリングで生(・)き(・)て(・)る(・)からな!ケケケ!』


…これはツッコんでいいやつなのだろうか。

とりあえず触れないでおこう。


ガイコツのおかげで周囲が少し明るくなったので、改めて中の様子を覗いてみる。

通路と同じような石の壁と土の床で出来ている広めの空間。

そこに木の机と椅子、ベッドのように見えなくもない木の板が置かれている。

そして何よりも目を引くのは…

机の横に置かれている、2つの大きな宝箱!


「すげぇ…めちゃくちャ宝箱の形してる…!」


宝箱に惹かれ、部屋に足を踏み入れようと壁から手を離すと…


ゴゴ…


「あ、そウだ…この壁押さえとかないと戻っちゃウんだった…」


俺は足を止め、再び壁を押さえた。

ここが閉まりきっちゃうと外の様子が聞こえなくなりそうでちょっと困るな…。


『ン?どしたどした』

「あ、すんません何度も…さっきの場所から音とカしたら気づけるように、ここが完全には閉じちゃわないヨうにしときたくて…部屋にあるものを壁止めに使ってもいいデすか?」

『なら宝箱だな!オマエはそのまま壁押さえとケ!持ッてくる!』

「あざっス…!」


ガイコツは宝箱の方まで駆けていき、2つあるうちの片方をずりずり…ずりずり…と押したり引っ張ったりしてこっちまで持ってきてくれた。


壁が回る位置に宝箱が置かれたところで、俺も押さえていた手を離してみる。


ゴゴゴ…ガコッ


壁が戻る途中でしっかりと宝箱に引っ掛かり、完全には戻らず動きが止まった。


『止まッた!やッぱ困ッた時はオタカラだな!』

「オタカラ…やっぱりこノ箱の中にオタカラが…?」

『そうだゾ!ほれ!』


パカッ


ガイコツが宝箱の蓋を開くと、中には大量の金貨と宝石が詰め込まれていた。


「おわ~!?めっちゃオタカラっ!!」

『金貨をひたすら立てて並べるとめちャくちャ暇が潰せるゾ!並べたやつを倒すのも楽しい!』

「ドミノ倒しカな…?」


魔物の世界では金や宝石はあまり価値を持っていないのかな。まぁ使いどころないもんな。

それでも俺はちょっと欲しいよ。中身人間だもの。


『でもこッちは魔法の気配がしない方のオタカラだ。本命はあッちの宝箱だぜ!』


ガイコツは再び部屋の奥にある宝箱の側まで駆けていき、その蓋をパカッと開けて俺を手招きする。

暗闇の中で青白く発光するガイコツが宝箱の元へと手招きする絵面は、失礼ながら大変ホラーである。


『扉を押さえてる方(そッち)の宝箱と違ッて、こッちの箱は動かせねーンだ。魔法かなンかで固定されててピクリともしないゾ!』

「なるほど…だから部屋に入る必要があルのか。よし…お、お邪魔しマ~す」


意を決して俺も部屋の中に入り、宝箱の側まで近づいてみる。

箱の中を覗くと、綺麗なアクセサリーや小物が無造作かつ大量に入っていた。


「わ~色々あル…!こレ、全部魔法のアイテム?」

『大体そうだ!オマエもこの中から自分を助けてくれそうなオタカラを探してみろ!考えるな…感じるのだ!』

「でもオレ、魔法の気配とかさっぱりスぎてどれが何やら…この本はなんだろ?」


宝箱の中に一冊だけ入っていた、ノートのような本を手に取ってみる。


『それだけは魔法の気配がしないゾ。本なら日記とかなンじャないか?』

「あー日記かぁ…あり得そウだな。だとしたら勝手に中を見る訳にもいかないカ」

『でも、オタカラについて何か書いてあるかもしれないゾ?』

「ぐっ…確カに…」


なんならこの地下のことに関しての記述もあるかも…出口とか出口とか出口について。


『ケケケ!見ちャえ見ちャえ!秘密は暴かれる為にあるのだ!』

「なんてコと言うんでしょこのガイコツは!でも…ぐぬぬ…目は通すべきカ…すんません!」


俺は申し訳なく思いつつも、ノートを開いてみる。

そこには、ついさっき見た宝箱の中身と同じようなアクセサリーやオブジェの挿し絵と共に文字が書き記されていた。


それは見たこともない文字の羅列。

けれど…


「読める…読めルぞ…!」


脳内で瞬時に翻訳されているかのように、書かれている内容がすんなりと頭に入ってくるではないか。

やはり俺は言語関連で何かしらのチートを持っているのかもしれない。

いやただの異世界補正かもしれない。

いやチートかもしれない。

チートだと思うことにしよう。

プラシーボって大事だからね。


なんにせよ助かる~!


「これ、宝箱の中身について書かれてルよ!少なくとも日記ではなサそうだ…管理簿とか、取扱説明書的なものカな」

『ッてことは、オレサマの指輪の効果もそれでわかるのか!?』

「そウだね!どれどれ…」


ペラペラとページをめくってみる。


「あ、人差し指に着ケてる指輪とかこれじゃない?」

『うひョー!読ンでくれ!読ンでくれ!』

「えーっとネぇ…」


俺はノートに書いてある説明文をそのまま読み上げた。


''変質の指輪(シフトリング)''

あらゆる魔力性質変換(エーテル・シフト)を自在に行えるようになる。

ただし、変換効率は使用者の魔力操作練度に比例する。


うん、文字は読めるけど何言ってるかわっかんね!


『なるほどなるほど…』

「お、今のでわかっタ?よかった、俺全然意味わからなかったから…」

『いや、全くわからン!ケケケッ!』


わからないんかい!


『わからないものは下手に外さない方が良さそうだなァ。他の指輪についても書いてあッたりしないか?』

「うーんとネぇ…」


ペラッ…ペラッ…


「見つけた!その小指につけてるヤつがこれっぽい!」

「お!」


''兎集めの指輪(ラビットリング)''

ウサギがちょっと寄ってきやすくなる。

ウサギっぽい魔物にも有効。


やだかわい~。

ファンシーな指輪~。


『ほー、狩り向きだな!』

「あ、そういウ用途…?」


全然ファンシーじゃなかった。

ちゃんと実用的なものだった。


「…隣のページにあるやつも、そっちの親指につけてるヤつじゃないか?どれどれ…」


''旅商人の指輪(アキンドリング)''

中規模程度の【異空間収納(アイテムボックス)】(内部時間経過:遅め)が使用できるようになる。

大事なものを入れた際は、指輪を無くさないよう要注意!


「って…アイテムボックス!?」


すごい!マジの異世界魔法キタ!!


「ちょ~っと見てみたイな~なんて…」

『右の親指だな?よ~し…ン~開けッ!アイテムボックス!』


ガイコツが右手を宙にかざすと…

何やら空間が歪みだし、やがて渦巻くもやのようなものが現れた。


「なんか出た…!これがアイテムボックス!?」

『あそれ!あそれ!』


ガイコツは宝箱にある魔法のオタカラのいくつかテキトーに手に取り、ポイっ!ポイっ!とアイテムボックスに放り込んで見せた。


「入っていく…!吸い込まれるように入っていく!」


俺が感動していると今度はアイテムボックスに手を突っ込み、先ほど放り込んだオタカラをジャラッと掴んで取り出して見せた。


『ジャーン!』

「おぉ~!」


手品を披露したマジシャンのようにドヤるガイコツと、手品を見た観客のようにパチパチと拍手する俺。

正直楽しい。


「すごい…これがアイテムボックス…!まるで四次元ポケ○トだ!」

『コレ、つけたまま手ェ突ッ込むと危ないな。中で指輪を落としたりして、そンで気づかないまま閉じた日には一生開けないアイテムボックスになりそうだ』

「早い。早いよ。オレまだ魔法に感動してる最中だカらそういう現実的な話はまだちょっとついテけないよ。…でも確かに、扱いには注意が必要そウだね」

『だなァ。ッてことで、気を付けろよ!』

「え?」

『オマエにやる』

「え…いいの!?」

『おう!』


ガイコツはそう言って、自分の指から旅商人の指輪(アキンドリング)と兎集めの指輪(ラビットリング)を外して俺に手渡してきた。


『ウサギのはおまけだ!受け取れ受け取れ!』

「えぇ~マジぃ?ホントにいいの?これたぶんめっちゃ便利なモのだよ?」

『いーのいーの。オマエ、アイテムボックス見た時が一番テンション上がッてたからな。ならオマエが持ッてた方がイイ!オレサマが持ッていてもあンまり使わないだろうしな。ケケケ!』


ガイコツはケタケタと骨を鳴らしながら笑っている。

イイやつすぎるだろ…!


俺は二つの指輪をありがたく頂戴することにした。

アイテムボックスがあれば、盾でもなんでも運び放題だ!

ついでにウサギやウサギっぽい魔物も寄ってくる!

…いや、魔物が寄ってくるのはまずいな。

ウサギの方はひとまず着けないでおこう。


「ありがとウ!大事にすルよ!」

『ケケケ!礼を言うのはオレサマの方だ。ずッとどれで自分が助かッてるのかわからなくて、どれひとつ外せなかッたからな。それぞれの効果が気になッて夜も眠れなかッたンだ!まァオレサマ元々寝ないンだけどな!』


アンデッドって寝ないんだ…。


「''オタカラで助かった''って言ってタもんね。…今も助かってるっていウのは?」

『よくぞ聞いてくれたッ!』

「うぉ…!?」


ガイコツはスクッと立ち上がり、大きく一歩下がって片手を肋骨に当てながら天井を仰いだ。


『ある日、天よりお告げが聞こえたのだ。''私についてこい!''…と』


おぉう…なんか始まったぞ…!


『その声に導かれるようにしてオレサマは目覚め、声のする方へ向かおうとした!しかし!オレサマはココから出られなかッた!何故なら出口がどこにもなかッたからだ!』


舞台劇のように語るガイコツ。

動きも話し方もオーバーだが、それが様になっていて本当に役者さんみたいだ。


『それでもオレサマはめげることなく、声がする方へと歩き続けた!当然進めない!けれどとりあえず歩き続けた!』


ガイコツはその時の様子を再現して見せる。

壁に向かってひたすら歩き続ける姿は、方向転換できないまま進み続けるバグったNPCみたいだ。


『そうこうしているうちにお告げの声はだンだンと遠くなり、ついには聞こえなくなッてしまッた…するとどうだ。オレサマの体からどンどン力が抜けていくではないか!嗚呼、もうダメだ…人生とはなンと短いのだろうか。いやそれにしたッて短すぎるだろ!そう思ッた』


どちらかという長い人生を終えた後の姿なのでは…?

というツッコミは恐らく野暮なのでやめておいた。


『しかしその時…!』

「その時…!?」


そこでガイコツの動きが止まる。


「…ん?」

『………』

「……え、何、どうしたの。怖い。急に固まらないで」

『…スマン。オマエ急いでるんだッたな。オレサマの話は一旦置いといて、まずはオマエが助かるオタカラを探そう』

「そうだった…!!」


オタカラやらガイコツ劇場やらに夢中になって、俺も自分が置かれている状況を忘れかけていた。


ガイコツが二重の意味で場を明るくしてくれているから空気が和らいでいるものの、どっこい俺は軽くフツーにさりげなく確実に逃れようもなく遭難している状態なのだ。


気を取り直し、俺はノートと宝箱の中身を交互に見ながら脱出に使えそうなアイテムを見繕うことにした。

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