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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第三章 宝と誘惑、それと指スマ

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第24話 世間話はほどほどに

ロビーは相変わらず落ち着いた雰囲気だ。

メシ係の魔物達がうろついているだけで、おっかない魔物の姿は見かけない。


メシ係が集めている食料が増えていく一方ではないところを見ると、城に魔王軍が全くいないってわけでもないみたいだけど…

少なくとも一階は静かだ。


ネズミっぽい魔物やコウモリっぽい魔物、コウモリっぽい羽してる目玉が一個の魔物なんかが今日もせっせと食料を運んでいる。

みんな違ってみんな小さい。見慣れてくるとちょっと可愛い。


同じ職場で働いているわけだし、メシ係の魔物とも仲良くなれたりしないかなーと思ってちょっと声をかけてみたこともあるんだけど…

逃げられるか噛まれるかのどっちかで、まともな交流はできそうになかった。

仕事の邪魔だったのかもな…

その節は余計なことしてすんませんでした。


小さい魔物達が働く姿を邪魔しないように横目で見つつ、俺も納めるべきものを納める。


一度剣を床に置いて、体にくくりつけてあるツタをほどく。

そして背負っていた海の盾を装備品の山にそっと添えるようにして置いた。


ゴトッ…


「ヨし、納品完了!」


あとは帰るだけだ。

とはいえ、油断は禁物。


俺はきっと、帰りもスライムに追われながら森を颯爽と駆け抜けることになるだろう。

万全を期さないとな。

家に帰って報告するまでがクエスト(おつかい)だからね!


「おいゴブリン!」

「わ!?ビックリしたぁ…!」


俺が準備体操を始めようとしていると、突然誰かから声をかけられた。

声が聞こえてきた方を見てみるものの、誰もいない。


「コッチだコッチ!」


反対方向からまた声がした。

振り向いてみるが、誰もいない。


「シシシ!どんくせぇゴブリン!」


今度は頭の上から声が聞こえてくる。

見上げてみると…


メシ係の魔物達よりは大きくて、それでいてゴブリンよりは小さい紫色の魔物の姿が見えた。

パタパタと背中の羽を動かしながら、俺の頭上に浮いている。


初めて見る魔物だ…どことなく悪魔っぽい。

ゴブリンも似たようなもんだが。


「キミは…ここの魔物カい?」

「そーダ!オイラはインプ!ゴブリンと違って魔法が使えて空も飛べる!オマエよりエライ魔物ダ!」

「そ、それはそレは…ん?魔法が使エる…」


確かインディセ様の話では、アヌ…アヌ…アヌなんとか様のところから来ているという、魔法が使える魔物達が上の階にいるんだよな。

そんでその魔物達が城にある大体の魔方陣を管理してくれているんだとか。


「もしカして、上の階の魔物ですか?」

「そーダ!オマエらがワープできるのはオイラ達のおかげだからな!泣いて喜べ!」

「お、お世話になってマす…!」


やっぱりそうだった。

今日もスムーズにワープできたおかげでスライムから逃げ切れました。


インプは俺と同じ目線になるところまで降りて来て、怪訝そうな顔をしながらこちらをじーっと見てくる。


「な、なんでしょウ…?」

「オマエ、この間ここでリザードマン部隊とやってた''アレ''、なんだヨ」


藪から棒にそう聞いてきた。


「''アレ''…?」

「いっせーのってやつだヨ!」

「あ~、指スマのこと?」


なるほどね。

指スマが気になって聞きに来たわけだ。

前にロビー(ここ)でリザードマン達とやっていたのを見ていたんだな。


「あれはちょっとした遊びダよ。暇つぶしにうっテつけなんだ」

「アソビだぁ?あのなぁゴブリン。アソビってぇのは追いかけ回したり突き回したり引きずり回したりすることを言うんだヨ!あんな地味でよくわかんねぇ儀式みたいなもんの何がたのしーんだ!」


やめてね物騒なこと言うの。


「んー、地味なやり取りだけで勝負ができるところが楽しい…って感じカな?…''知恵と器用さと運の勝負''みたイな?」


前に親方が言っていたことをそのまま言ってみる。


「知恵…?フーン…」


お、話聞いてくれそうかも。


「ちょっとルールを覚えるようなんだけど、オレが育った村のゴブリンや魔王軍のリザードマン達は面白がっテくれたよ。やってミる?」

「はぁ?ルールってなんだヨ!オイラ達は魔物だぜ!?ニンゲンじゃねーんだゾ!」


人間っぽいことに抵抗がある魔物もいるのか…

こういう考えの方が魔物の世界では主流だったりするのかな。


でも追いかけ回したり突き回したり引きずり回したりする以外にも、楽しいことがあるかもよってことを広めたいよ俺はよ。


もうちょっとプッシュしてみよう。


「でも~…ほラ~…そう!ルールを守れるのは、知能が高い魔物であるコとの証明にもなるんじゃないかな?」

「ム…そうカ…?そうかも?」

「そウそう。指スマは賢い魔物の嗜みだよ?ちなみにキミは、数って数えラれる?」

「バカナメんナ!1から10数えられるゼ!かしこいからな!」

「お、じゃあすぐできソうだね」


てなわけで、俺はインプに指スマを教えてみることにした。

リザードマン達との様子を見ていたのもあってか、説明は案外スムーズに終わった。


「ふ~ん…」

「どう?一戦やってみナい?」

「やらない」

「あリゃ」


お気に召さなかったようだ。無念。


「…オマエらってヘンなゴブリンだよナ。指スマ?とかいうのやってたり、糞の掃除したり…オマエは特にヘンだ!」


インプは俺のことをビシッと指差してきた。


「え…そう?どの辺が変だろウ?」

「若いゴブリンなのに無駄に滑舌がイイ!まるで人間みたいにしゃべる!ヘンだ!言葉知りスギ!」


ギクッ。


「ソ、ソンナコト、ナイヨー」

「アレ?ホントだ…そんなことないナ…」


すごい。ここから入れる保険があった。


「キノセイ、ジャ、ナイカナー」

「うーん…?気のせいだったのカ…?」

「キノセイダヨー」

「気のせいカ…」


インプは小首を傾げながらも、気のせいということでやり過ごせたようだ。


騙してごめんな…

でもこんな魔物の巣窟みたいな場所で

「前世は異世界の人間でしたー!記憶そのままありまーす!中身ほぼ人間でーす!」

なんて言うわけにはいかないんだ。

そんなん言ったら八つ裂かれちゃうよ俺。


「なぁゴブリン。オマエ、この城にアヤシ~イ場所があるの、知ってるカ?」


気を取り直したインプが、また新たな話題を持ちかけてきた。

怪しい場所…それって…


「モしかして、貴重なアイテムなんかガあるかもしれないっていう隠し部屋のこと…!?」

「そうなのカ?よくわかんねーけど…思ってたより詳しいナ。ヘンだ」


インプはジト目で再び俺を怪しんだ。

ヘンじゃないゴブリンの基準が分からないよ~…!


「イ、インディセサマカラ、ハナシキイテタンダヨー。カクシベヤ、ドコニアルンダロウネー?」

「ゴブリン…」

「ナ、ナニ~…?」

「オイラ、それがどこにあるかなんとなく解るんだヨ」

「え!?マジ!?」


インプはコクコクと頷き、話を続ける。


「ずっと妙な気配があって気にはなってたんだけどヨ、下は野蛮な魔物や糞の臭いがいっぱいで調べる気になれなかったんダ。ヒトリ怖いし。でも全部キレーにどっか行ったから、よーやく調べられるゾ!」

「ホント?掃除した甲斐があっ

「ってコトでトクベツにオマエも連れてってやる!コッチだ!ついてこい!」

「え」


インプは突然、自分の尻尾を俺の片腕に巻きつけてグッと引っ張った。

そしてそのままパタパタとどこかへ向かい始めようとするではないか。


「チょっ…今!?オレも!?待った待った!いや隠し部屋はめっちゃ気になルけど…今ひとりで行くワけには…!」

「ビビんなゴブリン!オイラがついてる!」

「やだカッコいい…って違う!そういウ問題じゃ…イテテ!ひ、引っ張らなイで!」


こうして話している間にも魔物はお構いなしに突き進んで行く。

ちゃんと自分の足で走ってついていかないと、腕が引っ張られ過ぎて千切れそうになる…!


インプに引っ張られる形で、ほぼ強制的に目的地へ同行させられてしまう俺。


あぁ、ワープ部屋がどんどん遠退いていく…なんなら剣も床に置いたままなんですけど!

まずいよ~…非常にまずい。


俺の初クエスト(おつかい)の雲行きが怪しくなっていくんですけど…!?


「あぁ~モ~…えらいこっちゃ~!」

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