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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第三章 宝と誘惑、それと指スマ

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第23話 おつかいクエスト

2026/3/21追記:誤字修正しました。

誤:鱗の盾→正:海の盾

この世に生まれてから早数ヵ月。

''ユビタ''の名をもらった俺のゴブリン暮らしは、最近とってもいい感じです。


島でのんびり盾作ったり、

ちょっとだけ城を散歩したり、

うまい魚を食べたり、

仲間と楽しく指スマしたり…


こういう時間がずっと続くなら、ここでの生活も悪くないんだけどな…

なんてことを思うのはもう何度目だろうか。


というわけで俺は今、追いかけてくる島スライムから一生懸命逃げています。


タッタッタッタッ…


「クソ~…!なんでオレひとりだとこんなに寄ってくんだよ~…!」


1v1はなんとかなっても、複数いると相変わらず身の危険を感じるので逃げる一択です。


親方といる時はここまで寄って来ないし、ウオタローといる時に至っては全く寄りつかなかった気もするんだけど、俺だけでいるとすぐにわらわら寄って(襲って)来ます。

やっぱり相手が強いとか弱いとかスライムにも分かるのかな。

いや露骨すぎるだろ。もう少し気を使え俺に。


でも仲間に助けは求めません。

だってこれは、初めてのソロクエスト(おつかい)だからね!


◇◇◇


遡ること十数分前…


「よし…こんなモんかな」


今日の分の作業を終えた俺は、いつものように城に行く為の支度を始めていた。


ここ最近はメシの時間が近くなったら作業を終わりにして、城の様子を見るついでに完成している盾を数枚持っていくというのがルーティーンになりつつある。


需要が凄かった時のように出来たら出来ただけ無理に持っていくのではなく、毎日ちょっとずつ持っていく感じだ。

正直このスタイルが一番丁度いい。

一度にたくさん運ぶのは大変だからね。


最近は海の盾も少しだけど納品し始めた。

ウオタローがいるならこれからも増やしていけそうだしな。

ちなみにウオタローに渡したあの海の盾は、沼のおうちに大事に飾ってあるとのこと。

嬉しいけど装備してくれ。


そんでもって親方は一昨日くらいから、新しい作業に勤しんでいる。

城にあった装備品の山から、穴の開いた鎧や兜…でいいのかな?なんか西洋っぽいヘルメットを数点島(こっち)に持ってきて、補強できないかと色々試しているのだ。

…なんで穴が開いているのかは謎なんだけどね。槍?銃?…魔法か?

何にせよ怖すぎる。


そんな怖すぎる謎の穴をみんな大好きスライム土で塞いで、乾かないうちに表を鱗や殻なんかで覆ってみたりしているようだ。

でも親方曰く、目立つし弱点をわざわざ敵に教えているみたいであまりいい方法ではないとのこと。

まだまだ研究中のようだ。


「ン…モウ城、行ク時間カ。少シ待ッテクレ、オレモ行ク」


親方はかなり作業に没頭していたようだが、俺が城に行く準備をしているの気づいて一度手を止める。


…でも、本当はまだ作業してたいと思うんだよな。


親方は何をするにも、いつも俺の近くにいるようにしてくれている。

俺ひとりだと危ないと思ってくれてのことだろう。実際危ないんですけども。


そりゃ俺的にも親方がいてくれると安心だけどさ、だからっていつまでも世話になってばかりではいけないと思うんだ。

親方だって自分の時間が欲しいだろうよ。

今がまさにその時ではないだろうか。

少しはひとり行動もできるようになって、親方の負担を減らそうじゃないか。


俺はもう島スライムだってひとりで倒せるゴブリンだからね!

…3体以上いたら逃げるけどね!


「城の中も今は落ち着いてるし、ちょっと行って帰るくらいナらオレだけでも大丈夫ですよ!たぶん」


俺がそう言ってみると親方は少し驚いた顔をして、考え込むように俯いた。

そして暫しの間があった後、意を決したように小さく頷き、答えが返ってくる。


「…ソウダナ。オマエ、ソロソロ、イチニンマエ。コドモアツカイ、ヨクナイ…カモシレナイ」


あ…そっか。

単にオレがクソザコだから守ってくれてるだけかと思ってたけど、まだ子供だからっていうのもあるんだった。

この世界に生まれて一年経ってないもんな。

中身はごりごりに成人男性なんだけども。


「ナラ、マズハ、ヒトツカラ。海ノ盾ヲヒトツ背負ッテ、城ニ届ケテミロ」


野生の魔物に気をつけながら転移の魔方陣まで辿り着き、城にワープしたら海の盾を納品して、またここに帰ってくる…

簡単な内容ではあるが、まずはその簡単なクエスト(おつかい)をひとりでクリアできるようにならないとな。


「気ヲツケロヨ。盾置イタラ、スグ戻レ。様子オカシクテモ、スグ戻レ」

「はい!いってキます!」

「ン」


俺はツタで括った海の盾を背負い、いつも使っている鉄っぽい剣を持って出発したのだった。


◇◇◇


そして今に至る。

6匹のスライムに追いかけられながら魔方陣を目指して森を駆け抜ける俺。


「あとちょっと…あトちょっとで魔方陣!うぉおおおお!」


いつもの魔方陣が見えてきたところで、そこそこ走りから全力疾走に切り替える。


タッタッタッタッタッ!


渾身のゴブリン走りで地面を蹴り上げ、追ってくるスライム達に一気に差をつける。

その勢いのまま城に繋がる魔方陣の上に飛び乗った!


次の瞬間、俺の全身がまばゆい光に包まれる。


そして視界が開けた時には…

いつものワープ部屋に到着していた。


「ふぃ~…着いたぁ…」


俺はとりあえず魔方陣から降りて、部屋の床に座り込む。


魔王軍がうろついていた時はヒヤヒヤしながら立ち寄っていた城が、ホッとできる安地になる日が来るとは。


しっかし怖かった~…

走ってさえいれば速さで負けることはないんだけど、そのうち前方からも現れて挟み撃ちとかされちゃったらどうしようってめっちゃヒヤヒヤした。

野生の世界って怖い。


あと俺がひとりで行動してることが島スライムにとってめちゃくちゃお食事チャンスなんだということもよく分かった。

やっぱり弱い個体は狙われちゃうんだね…

誰が弱い個体だ!!!


…それでも、俺も盾もこの通り無事だ。

ちゃんとこのクエスト(おつかい)の第一関門を突破できたぞ。


あとは納品、そして帰還あるのみ!


一呼吸整えてからゆっくりと立ち上がる。

俺は背負っている海の盾を装備品の山に納品すべく、ワープ部屋を後にした。

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