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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第二章 とある魔物部隊と指スマ

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第20話 打診

ワープ部屋に向かう道中、いつものロビーを通りかかると…


「……ン、ゼンイン、デテキテイルナ」

「あ、ホントだ。早いナ…」


リザードマン部隊が総出でロビーにたむろしていた。

ずっと部屋で待機させられてたわけだし、出撃がないならそりゃすぐにでも帰りたいよな。


リザードマン達の中にウオタローの姿はない。

もれなく全員赤い。

ということはやはり、今日はまだ島にいるのだろう。

早く知らせてあげないと。


ロビーを横切ろうとすると、リザードマン数匹がこちらに気づいて声をかけてきた。


「おいゴブリン!オレタチ、帰る!帰る前に、指スマ…ゲッ、ゴブリン、クソくさい」

「そう言わなイでくださいよ~。城の中キレイにしてたんデすから」

「オレタチ、帰る。城キレイ、カンケーない」

「む、無情すギる…」


とはいえ、リザードマン達は最初に会った時よりだいぶ取っつきやすくなった気がする。

指スマのおかげ…というのもなんだが、暴れる以外の楽しみが増えたことで殺気みたいなのがグッと減ったように思う。

楽しいことが多いと人生も豊かになるもんな。

そこはきっと、魔物も同じなんだ。


「早ク、沼、帰ル!」

「バカ。帰る、マダ。ノロマ待つ。ボスに、言われた」


ボスタローが…?

ふーん、アイツにも挨拶の概念とかあったんだな。

ウオタローはあれからも色んな魚差し入れしてたし、流石に黙って帰るのは悪いって思ったのかな?

いい心がけじゃないか。


少し辺りを見回りしてみると、いた。

壁にもたれ掛かり、目を閉じて腕を組んでいるボスタローの姿があった。

ちょっとカッコよくて腹立つな…


でも、そっか。

みんなここでウオタローのこと待ってくれてたんだな。

群れのやつらもちゃんとウオタローのことを仲間だと思ってるんだ…よかった。


「声かけてきマすね。島にいルと思うんで」

「ノロマ、そろそろ来る時間。どーせ、来る」

「それより、オマエら!指スマしろ!」

「指スマ!指スマ!ゲッゲッ!」

「そんナに…?」


いやハマりすぎだろ。

そんなにずっとやってて飽きないのか?


と、根が人間の俺は思ってしまうが…

村のゴブリン(みんな)同様、リザードマン達にとっても指スマはちょっと複雑でレベルの高いゲームだったみたいだ。

魔物にとっては''ルールのある遊び''自体、理性やら知性やらを問われる高度なものに感じられるのかもしれない。


親方も''賢さと器用さと勝負運が問われる勝負''って言ってたしな。

あの時はボスタローを煽るためにオーバーなこと言ってるだけかと思ったけど、本当にそういうものなのかも。


あとこれはなんとなくだけど、魔物って全体的に''飽きてやめる''ってことがあまりない気がする。

楽しくないことはすぐに飽きるというか、興味を失うけども、一度ハマるとずっとそれをやっている気がする。

見方によっては、執拗なほどに。


踊りや、釣りや、モノ作り…

それぞれ自分が楽しいと感じたことを毎日のように繰り返す。

きっと、戦うとか、襲うとか、奪うなんていうことも、楽しいと感じたならずっと…


…良くも悪くも、魔物は''飽きにくい生き物''なのかもしれない。


そんなことを思いながらリザードマン達と指スマを軽く一戦交えていると、ペタペタと足音が聞こえてきた。


「あ、みんな~!」


島から魚を持って帰ってきたウオタローが合流する。


「今日はおっきい魚ないよぉ~。そこそこの魚ぁ。食べる~?」


そう言って、ウオタローはそこそこの魚を群れの仲間に見せる。

指と指の間に魚の尾を挟むようにして、それぞれの手に3尾ずつ持っている。

計6尾。大漁である。


「おぉ~!食う!食いたい…ケド、オレタチ、沼、帰る」

「え!みんな、帰っちゃうの~…?」


仲間から帰ることを知らされ、ウオタローの魚を見せていた手がゆっくりと下がっていく。

尻尾も下がってる…明らかに寂しそうだ。

やっぱり仲間と一緒にいたいんだな…


すると、ずっと黙って壁に寄りかかっていたボスタローがのしのしとこちらに近づいてくる。

ウオタローの前まで来ると、そこで立ち止まり…


「……」


……な、何も言わない。

なんだよ。

言いたいことがあるならちゃんと言えよ。


「…?どうしたのぉ?」

「………」

「……??お腹すいてるのぉ?」


何か言いたげのようだが、なかなか口を開かないボスタロー。

そんなボスタローの口を勝手に開けて、持っていた魚を押し込むウオタロー。やめてあげなさい。


ていうかなんでボスタローはされるがままなんだ?

ウオタローが何もしてない時は乱暴な絡み方してくるくせに、何かしてきた時は何もしないのか…?

やっぱりよくわからないやつだ…早く帰れ。


口が塞がってしまったボスタローは上を向き、突っ込まれていた魚をがふ、がふ、ごくりと丸呑みした。めっちゃ爬虫類っぽい。

リザードマンって獲物の丸呑みもするんだな。

歯があるから咀嚼するのが主流かと思ってた。


なんてことはさておき…

口の中が空になったところで、ボスタローがようやく言葉を発する。


「………オマエは、どうすル」

「ボク?」


どうするって…何。

え、嘘、やだ。


「オレたち、帰ル。オマエ、城、沼…どっちにすル」

「え!」

「え゛ッ」


思わず声が出てしまった。

やっぱりそうだ…これ…

一緒に帰らないかって話だ…!


ウオタローも沼に帰っちゃうの…!?

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