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魔王軍に指スマを教えたらやたらと流行ってしまった件について ~異世界転生したのはいいけどただのゴブリンだったので大人しく余生を謳歌するくらいのつもりだった~  作者: ロイヤルミルク麦茶
第二章 とある魔物部隊と指スマ

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第18話 静かになった城

食事中の方は少々ご注意回

結局、朝になってもリザードマン部隊が待機している大部屋の魔方陣が光ることはなかった。


ひび割れた壁や天井から朝日が差し込む中、待機中であるリザードマン達はというと…


「いっせーの、イチ!」

「ゲッ!当てやがった!」

「ゲッゲッ!」

「いっせーの、ロク!」


めちゃくちゃ指スマをしていた。

どんだけやるんだよ。

ウオタローはもちろん、俺と親方もルール確認や実況解説をさせられる形でずっと付き合わされています。まぁ楽しいけどね。


魚をつまんだり指スマしたり…

なんか、ただの親睦会みたいな一日だったな。

出撃前とは思えないくらい平和だ。

ていうかこれ、本当に出撃するのかな?


「クァ~…」


あくびをしているやつまでいるし。

もうなしでよくない?暴力反対。

何事もラブ&ピースじゃね?割とマジで。


なんて魔物らしからぬことを俺が思っていると、

ウオタローとの一戦以降、ずっと静かに座っていたボスタローがスッと立ち上がった。

すると、和気あいあいとしていたリザードマン達が静かになり、皆がボスタローに注目する。


…ああ、ちなみにボスタローっていうのはリーダーのリザードマンのことね。

ウオタローがいる群れのボスだから、ボスタロー。いい名前である。

とはいえ、実際に呼んだら串刺しにされる気がするので心の中だけでそう呼ぶことにした。

うっかり口に出してしまわないよう気をつけたい。


「見張り以外、休ム」


ボスタローがそう指示すると、見張り以外のリザードマン達はその場で体を丸め、仮眠を取り始めた。

統率が取れてるな…


「ふぁ~…たのしかったぁ」


満足そうに大きなあくびをするウオタロー。

他のみんな(リザードマン)と同じように床に丸まって休み始める。

ここ数日、差し入れの魚を釣るために頑張ってたもんな。

ゆっくり休んでくれ。


「ふァ~…」


俺もあくびが…

そういや今日…ていうか昨日起きるの早かったし、俺も眠くなってきたや。

どれ、ちょっくらひと眠り…


「ゴブリン、群れ、違う。寝るなら、部屋出ロ」

「あ、ハい…」


…ということで、ボスタローに半ば追い出される形で俺と親方は大部屋を後にした。


ちょっと一緒に寝るくらいいいじゃんか!

と思わないこともないのだが、あの場はあくまでも魔王軍の待機部屋なので、雑用係が一緒になって寝るのはよろしくないというのも分からなくはない。

寝ぼけたリザードマンに獲物か侵入者あたりと間違われて、うっかり仕留められちゃう可能性だってある。

お互いのためにも棲み分けは大事だよね、きっと。


俺達はそのままいつもの小部屋に向かい、眠りについた。


◇◇◇


それから数日。

リザードマン部隊が待機している部屋の魔方陣は、相変わらず光らないようだ。


しかし独断で待機をやめるわけにもいかないようで、基本的に彼らはずっと大部屋にいる。

時々ロビーに出て装備品の山を眺めたり、食べ物をつまみ食いしたり、用を足しに外へ出たりはするものの、またすぐに部屋に戻っていく。

主な楽しみと言えば食事か指スマ…そんな日々が続いていた。


こうなってくると最早俺の希望的観測などではなく、十中八九出撃は中止か延期になったと思うんだけど…困ったことにこれといった連絡がない。

何かトラブルでもあったのだろうか。

そのトラブルはなんやかんやでこっちが対処することになるやつではないだろうか。

対処もそうだけど、トラブルの責任を擦り付けられたりしないだろうか…

そんな社会人時代の思考回路が俺の心を勝手にざわつかせる。

俺が待機してるんじゃないのにね。


ウオタローはちょくちょく島に釣りに出ては魚を持って待機部屋に寄り、ついでに指スマしたり、一緒に眠ったりしているようだ。

仲間を釣りに誘ったりもしたらしいが、やはり部屋を離れるわけにはいかないとのことで島には来ないみたいだ。


俺と親方は待機部屋に出入りする理由がなくなったので、とりあえずいつも通り島と城を行き来しながら盾作りの作業に戻っていた。

たまにロビーで話しかけられて、指スマを一戦二戦することはあったかな。


それはそうと…

ここ最近の殺伐としていた城の空気が、いつの間にか落ち着いた気がする。

上の階からは相変わらず色んな魔物の気配がするけど、1階にいたおっかない魔物の気配はほぼなくなったように感じる。

城の庭というか、城壁の内側近くをうろついていた魔物達もすっかりいなくなっていた。


みんなおうちに帰ったのかな?

って、そんなわけないよな。

きっとどこかへ''出撃''したんだ。

勇者がいそうなところをちょっと偵察しに行ってる程度で終わっててくんないかな~…

人里とか襲ったりしないで欲しいな~…


「はァ~~~…」


この数日で新たに作った小石の盾を、防具の山に数枚そっと添えたところでため息が出てしまう。

今日も今日とて、自分のやっていることが微力ながら世界の平和を脅かしているのかもしれないと思うと…


ダメだ、考えるのはやめよう。

どうにかできることでもないからな…


気晴らしも兼ねて、今日は親方と城をちょっと散策してみた。

普段は強い魔物の気配を避けながら移動を最小限に留めていた為、まだまだ知らない場所が多い。

少し歩いただけでも知らない廊下や扉がたくさんある。

落ち着いた雰囲気の城を歩き回れるのは観光みたいで結構楽しい。

いつもこのくらい魔物が少なかったらいいのに。


「この廊下ノ柱立派でスねー。…特定の順番で叩いタら、隠し部屋への道が開ケたりして…!」

「…タタイテミルカ?」

「叩いてみマしょう!」


俺と親方はいろんな順番でコンコンと柱をノックしてみた。

しかし何も起きなかった!


◇◇◇


気を取り直して、普段は絶対近寄らないようにしていた城の外にも出てみた。

といっても城壁の内側を少し歩いてみただけだけど。


地面にはたくさんの足跡と、食べ残しの骨と、糞…魔物がいた痕跡がこれでもかと残っている。

魔王軍がここで待機していた確かな証だ。怖いね。


積み上げられた石レンガの城壁は厚く、高く、城をぐるりと囲んでいる。

登れるタイプの城壁だったりしないかな?

上がちょっと道みたいになってるやつ。

そこには宝箱なんかがあったりして…!

なんて淡い幻想を抱きながら城壁を見上げてみると、上空で翼のある大きな魔物が数匹ほど滑空している様子が視界に入る。

俺は高いところには絶対に行かないと誓った。


◇◇◇


半日ほど城を歩き回ってみて、分かったことはひとつ。


「いやこの城糞まみれダな!!」


城の中も外も糞まみれだということだった。


魔物の世界なんて臭くないところの方が珍しいので、城内の糞尿臭もそこまで気にしたことはなかった。俺ゴブリンだし。

とはいえ、あくまでも外から漂ってきているだけだと思っていたので、屋内にもまあまあな数の実弾(糞)が落ちていたのは衝撃的であった。

丁度普段通らないようにしていた、魔王軍の待機部屋として使われていそうな大きな部屋やその付近の廊下なんかがホットスポットである。


外のは土に還るだろうけど、中は木や石の床だし、これじゃ糞も還るに還れないだろ…

リザードマン達が毎度律儀に外へ用を足しに行くことがいかに知性ある行動なのかを思い知る。


そういやインディセ様もなんか言ってたな…

土がないとこですんなっつってんのにしちゃうヤツがいるって。

そしてそれを掃除しとけって。


「…掃除しマす?」

「ヤルナラ、イマノウチダロウナ」

「はァ~…」


ということで、城の探索は一旦終わり。

俺達は明日から魔物の糞を掃除します。

それも雑用係ゴブリンの仕事だからね…クソ~!

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