小判鮫戦法
俺達はマジックアイテムを使って、レイの元へと帰還した。
これは何も打つ手がなくて苦し紛れにやったことというわけではない。
俺にはきちんと、アマタに追いつき追い越すだけの秘策があった。
そのことを伝えるため、あらかじめとってあった宿をキャンセルし、レイの元へと降り立ったのだ。
善は急げというやつだ。俺達がこうして足踏みしている間にもアマタはきっとダンジョン探索を進めていることであろう。
俺は、女の子を一人に残してしまったことを今更ながに心配し、レイに声をかけた。
「大丈夫だったか? レイ」
「別に特に変わりはないよ」
レイは特に何かあったという様子もなく、ただいつもと同じ日常を送っていた。
それよりも俺が息切れを起こして、レイの元へ駆け寄ったことに何か疑問を覚えているようだ。
「そんなに息を切らしてどうしたんだい? まるで今にもどこかへ走り出してしまいそうな勢いだけれども」
「そうですよ! 何か閃いたことがあったんならば、私達にも教えて下さいよ」
そう言ってルリが、俺が閃いたことが何なんのかを必要に問いただしてくる。
正直言って俺の考え出した方法は、あまり褒められたものではない。
自慢げに話すのもおかしいのかもしれないが、とにかく話さないと始まらない。
俺は、どのようにしてアマタに追いつくのかを皆に発表した。
「いいか? 俺達がアマタに追いつく方法なんだが言うならば小判鮫戦法だ」
「小判鮫戦法?」
ルリがキョトンとした顔で、俺へ聞き返してくる。
どうやら俺の言ったことを一割も理解できていないそんな様子だ。
俺もこれを閃いたときはそんなに上手くいくのだろうか疑問であったが、それを確かめるためにもレイに
質問をしに来たという側面もある。
「そうだ。できるかどうかは正直わからないが、俺が思いついた最善の策がこれだ」
そう言うと皆真剣な表情を浮かべて、俺の作戦に聞き入った。
正直名前の通りあまり褒められた作戦ではないので、言うのも躊躇ったが俺は直球で聞くこととした。
「まず俺のスキル『利き鼻』を使って、アマタの位置を把握する。そこでおそらくダンジョンの内部に入ったら
ある一点から動かなくなるときが来るはずだ。ここまではいいか?」
俺は確認の意味を込めて、皆に顔を向けて尋ね返す。
皆、首を縦に振り肯定を示した。
「そこでダンジョンに入ったであろうときを見計らって、レイの移動魔法を使ってダンジョンに乗り込もうっていうのが
俺の作戦だ」
俺がそれを告げ終わると、皆何か引きつった顔をした様子であった。
そのことに気がついた俺は、「しまった」と内心思うが平静を装った。
「どうした? 正直褒められた作戦ではないのはわかっている。けど俺達に残された最善の作戦だと思っている」
俺が皆に同意を求めると、レイが発言をした。
「ハハハ。正直に言っていいかい? 面白い作戦だと思うよ、それにできないことではないと思う」
「本当か? ならこの作戦で行こう」
「ただ、この作戦には致命的な弱点が二つある。まずひとつは、アマタがダンジョンをきちんと見つけることができるかどうか
というもの。もう一つは、あのアマタを出し抜いてダンジョンの守護者を先に倒せるかという問題。これはどう解決するつもりだい?」
レイが聞いてきた質問は、最もだ。
それは俺も心配に思っていたことだし、正直今でも不安だ。
だが俺は自身ありげに振る舞ってこう切り替えした。
「あのアマタが、ダンジョンを見つけられないってことがあると思うか?」
それを聞いたレイは、黙った。これは暗にありえないと言っているようなものである。
「そしてもう一つの不安材料の方も想定はしてある。それは俺達が一人目の守護者を倒した時と同じようなことをするんだ」
「と言うと?」
「ダンジョン攻略や、敵の討伐はアマタ達攻略組に任せて俺達はスキル『潜入』で息を潜めておく。それで疲弊しきったアマタ達を
尻目に美味しいところだけ、掻っ攫っていく。どうだ? 悪くない作戦だろう」
俺の作戦を聞いた皆は、反論の余地なしと言った具合に黙りこくってしまった。
この作戦が世界を救う義賊がやるようなことか? と聞かれたら俺は素直に「はい」とは答えられないが。
とにかく、俺達はこの作戦の方針に従ってダンジョン攻略を進めていくことにした。
ブクマ、★、感想等いただけると大変励みになります。




