5巻 2章 2話
四国海中都市。
革ジャンを着て、銀天街アーケードを並んで歩くブラストとポーリー。あちこちから海鮮の浜焼きやタレの焦げる香ばしい香りがする。
「そろそろお腹すかない?」ブラストはポーリーに聞いた。
「そーだな。スタンドに寄ろうか。食べ歩き平気?」
「全然平気。」
「そこだ。メニューが貼り出してある。」
「よー船長ー!おーとっ!新しい彼氏かー?どーもー!」ホットドッグ屋の店主が陽気に挨拶した。
「うっす。」ブラストはうなずいて微笑んだ。
ポーリーも横で微笑んだ。
「私、ソーセージとハラペーニョ、ミートソースで。」
「オレはー、ソーセージにチリコンカンにチーズで。」
「あいよ。ソースたっぷりのせていいかい?」
「最高ー。」ブラストはハンドサインを出した。
2人はホットドックを食べながら歩いた。口の周りも気にせず。
ポーリーが教会の脇道で止まった。腰にぶら下げてたバンダナを解いて口を拭き、ブラストの口の周りのソースも拭き取った。
ポーリーはウエストポーチにバンダナを押し込んで言った。
「ちゃんと無効モードになってる?」
「OKー。ここどこ?」
ポーリーは何も答えずニコニコしながら手招きした。ブラストの方を向いたまま前をゆらゆら髪を揺らしながら歩く。ブラストは微笑みながらポーリーに誘われるままに歩き、小さい噴水の奥にあるアーチに入った。ポーリーが台座にチャーム付きの鍵を置くと、石壁が開いた。
ゴゴゴ。
「おー。カッケー。」
「この先はもっとすごいぞ。ブラストの驚く顔が楽しみだ。ついて来て。」
石の洞窟に入った。淡いピンクの間接照明が通路を照らしている。
ブラストは「わー。」と息を吐いた。
照明を辿って通路を進むと、大広間に出た。石棚ごとに数軒の小屋が並び、通路の先にはオープンラウンジがあった。向かい合う長いソファーがあり、その奥の1人掛けソファーに、本を読む黒髪の男性が座っている。奥にはテーブル席がいくつかあり、1組の高齢の男女がお茶を飲んでいる。他にキッチンスペースやカウンターのワークスペースもあった。
「オシャレー。秘密基地感あるね。」ブラストは目を輝かせて振り返った。
「ナイチンゲールにようこそ。ブラスト、ずっと探してたんだろ?」
「!?、、ポーリー?」ブラストは片手で口元を押さえた。目は泳いでいる。
「あれ?嬉しくなかった?」ポーリーは顔をのぞきこんだ後、奥にいる人達に軽く手を振って手招きした。
ブラストは洞窟内を見渡した。
「え?、、うれし、い、、嬉しいよ!でっ、ここ何?どうして?」
「紹介するよ。ナイチンゲールのメンバーのサティアとサムスカーラとアマデウスだ。ギルドのブラスト。」
白髪に黒のラインが入ったボブヘアの女性、サティアが言った。「おかえり、バルテレモン。必ず待ってるんだぞ。ってこの事かい?」
「そーだよ。何から話そうかな。ブラスト、とりあえず長いソファーに座って。」
「何か飲み物を用意しましょう。」黒髪のウェーブロングヘアの男性は本を置き、立ち上がってキッチンに向かった。
グレーのセミロングヘアにグレーの髭の男性、サムスカーラは通路を見ながら言った。「今日は来客が多いねー。」
ブラストは振り返って驚いた。そこにクラウンとすみれがやって来た。お互い顔を見合い「あー!」「あー!」声が揃った。チョコはブラストを見るや駆け寄った。
飲み物が出されるまでの間、クラウンとブラストはチョコを挟んで座り、お互いの経緯を話した。
ポーリーは足を組み、片手を背もたれに伸ばし、ソファでくつろいでいる。
すみれはサムスカーラとサティアと久しぶりに再会し、近況を話している。
アマデウスが数種類のティーバッグとお湯の入ったポットを2つ持ってきた。「どうも。好みがわからないのでお好きなのをどうぞ。」
それぞれ好きな飲み物を作った。
クラウンは影のあるアマデウスが気になって声をかけた。「あのー、直接じゃないけど前にギルドで会った事あります?」
「ああ、よく覚えてるね。ふふ。」
「その感じが印象に残ってて。ナイチンゲールのメンバーだったんだ。あれ?犯罪専門家だったのは本当?」
「本当です。もう辞めました。クラウン氏、サティアが呼んでいますよ。では。」アマデウスは言い終えると、マグカップを持って1人掛けソファに座り、読みかけの本を開いた。
ブラストはポーリーと長いソファに座っている。「じゃあ、本名はマリリン・バルテレモンって言うんだ。そっちの呼び名もいーなー。」ブラストとポーリーは笑いながら話している。
奥のテーブル席では、すみれの父と特に親しかったサムスカーラが思い出話をしている様だ。
クラウンはサティアのいるテーブル席にマグカップを持って座った。
「あの子達はいつから付き合ってるんだい?」
「最近です。クエストで出会って。」
「そうか。まあギルドなら安心か。おや、なんだか疲れてないかい?長旅だったのかい?」
「いえ。色々あって。さっきすみれさんと来る時に、サティアさんは導き手だったと聞きました。せっかくの機会だから、僕も聞いていいですか?」
「ああー。なんだろね。わかる事でよければ。」
「突然の喪失感と切なさで、ぐちゃぐちゃーって、なって。どうしていいかわらなくなって。」
サティアは聞きながらうなずいた。
「完全な人間なんていないんだから。一度、自分の事を不完全であると認識して穏やかに過ごせばいい。安らぎも感じられよう。」
「はあ、安らぎたーい。なんか、ぎゅーって苦しい感じがして苦手で。安らぎはどこにありますか?」
「それなら目を閉じて。力みをやめて力をゆるめてみて。深呼吸が奥深くまで染み渡るのを感じるんだ。」ゆっくり話すサティアの声を頼りにクラウンは脱力して深呼吸した。
数分後、サティアは優しく声をかけた。「大きく息を吐いて。安らぎがみつかっただろう?」
クラウンは瞬きして目を開けた。
「ああー、なんとなく落ち着いた。ありがとうございます!」
「変化は必然であると知れば不安を吹き飛ばせよう。」
クラウンは心の安定を取り戻した。
⭐️
しばらくして、それぞれの会話が落ち着いた頃、ポーリーがみなを集めた。ナイチンゲールやブラストが追ってる魁達の話を少しして、その日はナイチンゲールを後にした。
ナイチンゲールは200年前の創設メンバー達がモジュールを使って、銀河に散らばった同志に一斉にメッセージを出した。集まったのは元ギルドや元警察官、元検察官、弁護士など、善行の為に動ける者達。そういった気骨のある高齢者を集めて、犯罪者達の一斉検挙に繋げた。
現在は犯罪者達がそれを真似をして、モジュールを使えばバレずに個人情報のやり取りや犯罪計画の指示を出せる為、悪用している。
ブラストはナイチンゲールも黒幕のグループの一つと思っていたが、ギルドの討伐リストに乗らない様な犯罪者達にも立ち向かう、社会貢献する結社であった。世間にはコードネームを名乗り、世直しをしていた。ブラストは何よりポーリーが犯罪者でなく安心した。
⭐️
続く。
絵:クサビ
ジョーです⭐️
アマデウスが、13年前にギルドの犯罪専門家モーツァルトとして活動していた回は、4巻2章3話になります。クサビ先生が、その頃の姿を描いて下さっています。怪しいです。




