5巻 1章 5話
翌日。
「うーん。やっぱイジメ止まってないか。笑うな。とか数件メッセージが届いてるな。今日はダンス部の日かー。うーんと、クラウンさん、今日は午後になったら接触しましょう。」ビクトールはディスプレイに学校のマップを出して言った。
「もうチョコは行かせない様にしよう。接触方法を考えなきゃ。」
「大丈夫。依頼人に忘れ物を届ける身内のふりして正面から乗り込みますから。」
「ここで依頼人に会うんだ。」
「そうです。だいたいこの辺りで会う事が多いですね!クラウンさん大人だから学校に申請お願いします。」
「うん、いいよ。」
「もう1個お願いが、、あのー、オシャレしてもらえますか?イジメ再発防止になるんで、、。」
「そんな事で?」
「〈イケてる身内がいる〉はポイント高いです。」
「ポイント?」
「細かい事気にしないで。僕、服選びたい。」
⭐️
クラウンはビクトールが選んだ服を着て、忘れ物を依頼主に届けた。初対面に3人は緊張した。クラウンとビクトールは励ましの言葉を依頼主にかけた。依頼主は優しい笑顔を見せた。クラウンはビクトールに言われた通り学生達に向かって挨拶した。「こんにちは。お世話になってます。」学生達も注目し挨拶を感じ良く返してくれた。入り口で加害者が通りすぎる時、ビクトールは手をかざした。「ビクビク。」「そろそろ行くね。見守ってるからね。じゃあね。」クラウン達は依頼主に挨拶をしてから中学校を出て、レトロな喫茶店に向かった。
⭐️
レトロな喫茶店。
ダンス部の風景が映し出された。クラウンとビクトールはLiveログを見守った。
加害者がグループのみなと「昨日のなんだったんだろ?」「静電気たまってたんじゃない?」と話している。部活の時間になり、グループ毎にダンスを踊っては交代していると、再び加害者の髪が逆立ってウニの様になった。加害者はミラー越しに気づいて、踊りをやめ、見渡した。見渡すと、みなが引いている。手を伸ばし数歩進むが、みな「来ないで」という手つきや表情を見せた。
近づこうとすると、みな逃げる様に距離を取った。加害者は自身の荷物に駆け寄り、キャップを深く被った。「なんだよ!みんなして、、。」つぶやくと部屋を駆け出して行った。
クラウン達は加害者の家に向かい、電気のついた加害者の部屋を外から眺めた。
ビクトールは時計を見て言った。「そろそろ貯まった頃かな?」
バチンッ!
一瞬光って家が停電した。
「これでまた様子を見ましょう。」ビクトールは帰り道の方向へ歩き出した。
「家ごとショートさせたの?」クラウンとチョコもついて歩いた。
「はい、通信機器も。へへへ。」
⭐️
翌日。
ビクトールは朝からメッセージチャットで依頼人とやりとりしている。
「一旦イジメ止まったみたい。1週間、経過観察して再発しなければクエスト完了です。たぶん、あの学校の雰囲気ならこれで終わるかな?」
「そーなの?どう言う事?」
「もっとハードでしつこい時の対処は違いますけど、、ショートさせてネットやSNSをとりあげたから、かなり怖かったんじゃないかな。これまでのパターンで多いのが、数日から1週間も経てば新しい噂や新勢力に変わって、もう以前と立場が変わっちゃうんです。」
「ふぅーん。学校に報告するパターンもあるの?」
「あります。暴行、窃盗、ハードな場合にはログを提出して申請します。加害者がセラピーに通うので学校にしばらく来なくなるから、原因を断つっていう意味では良いんですけど、、実際被害者は、その後も気まずい気持ちをずっと抱えて悩んでいる場合もあるんです。」
クラウンはビクトールの話に深くうなずきながら聞いた。「そーなんだ。それも辛いね。」
「依頼主がざまあと思うと思いますか?一瞬そうよぎったとしても根が優しい子達は違うんです。『こんな事したくなかった』『自分にも非があったんじゃないか』とか、どこまでも友愛や協調を模索するんです。これを学んで欲しいよ。今の時代、わざわざ学校に登校してるんだから。」ビクトールは真剣な顔で話した。
⭐️
イジメの報告は1週間を過ぎてもなく、ビクトールの予想通り、イジメの再発はなかった。ビクトールは、依頼主を「セラピーにもなるから、また話そう。」と、セラピスト主催のオンライン座談会に誘ってクエスト完了した。
「クラウンさんとクエスト2つもできちゃったー。へへっ。次もやろうよ。朝ごはん楽しみすぎる!」ビクトールがクエスト依頼をチェックしていると、クラウンに虎徹からメッセージが来た。
ーかねてより病気療養中の処、本日兼定殿が享年六十七歳にて永眠されました。ご冥福をお祈りするとともに、謹んでお知らせ申し上げます。通夜、葬儀告別式は下記のとおり、仏式にて執り行われます。ー
「へえっ?!あ、、そんな、、。」クラウンはショックを受けて少しの間、沈黙した。
ビクトールは心配そうにクラウンに声をかけた。「大丈夫ですか?」
「あ、、ごめん。動揺してて、、。ビクトール、知り合いに不幸があって、すぐ出発しないといけなくなった。」
「そーなんだ。もっといたかったな。僕、温かい飲み物いれるね。待っててね。」
ビクトールはホットキャラメルラテを一生懸命に作ってくれた。
マーブル模様に混ざっていく。甘くてほろ苦く優しい口当たりが、クラウンの気持ちを落ち着かせてくれた。
飲み終わり、別れの挨拶の時。
「チョコ、また遊ぼうね。クラウンさん、また会いに行ってもいい?」ビクトールは涙目で言った。
「もちろん!」クラウンは片手を伸ばし握手とハグをした。
クラウンは寂しい気持ちを抱え、チョコと部屋を後にした。
⭐️
2章に続く。
絵:クサビ




