5巻 1章 4話
翌朝。
ブラストからクラウンにメッセージが届いた。
ーポーリーに誘われて、しばらく捜査に出る事にした。虎徹さんから連絡来ると思うから、お見舞いに行ける様になったら知らせて。ビクトールによろしく。ー
クラウンは思った。
ハニは僕と入れ替わりでスノーの応援に行くし、せっかくビクトールが来てくれたから、今度は僕がクエスト手伝ってみようかな?
クラウンは考えながら朝食を作り始めた。ビクトールがいい匂いに誘われ起きて来た。
ビクトールは、はふはふ言いながらハムエッグにかぶりつき、上を見ながら、うーん!と喜んだり、フレンチトーストを大きめの一口に切って頬張っては、首を振って味わったり。美味しそうに食べてくれて、クラウンはとても嬉しくなった。
「ビクトール、僕、今時間あるから、ビクトールのクエストに参加してもいい?」
「えっ!?僕といいんですか?お願いします!ちょうど依頼が来てたんだ。」ビクトールはディスプレイを出した。
ディスプレイにはビクトール宛に、クエスト依頼のログがメッセージ付きで来ていた。ビクトールはタップした。
ー誰か、私と同じ気持ちの人はいませんか?ー
「ん?これだけ?」クラウンはきょとん顔でビクトールを見た。
「依頼のスラングです。合言葉?みたいな。せっかく美味しいごはんの途中だから、食べてからログチェックしましょう。あんまり気分の良いものじゃないので。」ビクトールは背筋を伸ばしてカフェオレを冷ましながら飲んだ。
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ログの内容は同じクラスの女子生徒によるイジメの記録だった。ビクトールはログを止めてはメモをした。数時間見ては、ティータイムを挟んで。を繰り返し、ほぼ一日かけて全て見終わった。ビクトールは優しい顔で言った。「クラウンさん探すの得意でしょ?犯人探すの手伝ってね。」
「うーん。結構ハードな内容だったね。依頼人が心配になるよ。」
「比べちゃいけないけど、これで短い方かも。被害にあった時だけ繋げてこれだから。実際は嫌な気持ちで長い間過ごしてるんです。しかもこの子、逃げずにまだ頑張って学校通ってる。」
「どうやって対処するの?」
「僕のパワーを使ってに決まってるでしょっ?へへっ。明日、登校前に探しに行きましょう!クエスト受けますよ?」
「うん!受けて。早く助けに行こう。」
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翌朝、朝日が昇る前。まだうす暗いなか、クラウンはおにぎりを4つ作ってビクトールに食べさせた。ビクトールは残らずペロリとたいらげた。
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依頼人が通う中学校の校門の前に到着した。
「ここならいいか。フレイヤ、加害者の家を探して。」
炎の女神が現れた。ビクトールはヘルメットをサングラスモードにしてフレイヤを興味津々で見ている。「本物だー。」ビクトールが言うと、フレイヤは軽くポーズを決めてから空に高く登った。何度か宙返りをして、住宅街の方角へ飛んで行き、時間切れになって消えた。
マップに加害者のマーキングポイントがついた。「便利ー!」ビクトールは感動した。
「チョコ、案内して。」クラウンが話しかけるとチョコからプリズムが出た。チョコについて歩いた。
20分ほど歩くと、立派で大きな家の前に着いた。しばらく待って登校時刻が近づくと、モッズコートを着たクラウンは、ギルドスーツが見えない様にコートの前を閉め、チョコと加害者の家の前でさらに待った。
ロングヘアーの女子中学生が出できた。チョコが足元に近づくと「あっち行け!」ドン!片足でチョコの脇腹を軽く蹴った。チョコは耳をペタっと下げた。クラウンが慌てて呼び止めた。
「蹴らないで!すみません、大人しい子なので。チョコ、動かないで。」
クラウンがチョコにそーっと近づき足止めしている間、女子中学生の背後からビクトールが現れ、手をかざして囁いた。「ビクビク。」ビクトールが離れると、クラウンはチョコをさっと抱え「ごめんねー。」と言いながら立ち去った。
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クラウンは最初の角を曲がったところでビクトールと合流した。
「上手くいったね!チョコは大丈夫?」
「ビックリしたけど平気。ほら。」クラウンがチョコをビクトールに近づけると、両手を伸ばしてしっぽを振った。ビクトールはチョコを抱っこしてなでた。「よし、よし、怖かったね。クラウンさん、この先の喫茶店に行こう。」
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クラウン達はレトロな喫茶店に入ってあれこれ注文した。ビクトールはディスプレイを立ち上げ依頼人に連絡した。ウインドウはまだ真っ暗だ。
ナポリタンとグラタンを食べていると、クリームソーダが2つ届いたタイミングで、ウインドウに授業風景が映った。ビクトールが前のめりになった。
「来たっ!これLiveです。こっちの音は聞こえません。」
クラウンはディスプレイを見ながらアイスクリームを一口食べた。
授業を受けている加害者の髪が、静電気でウニの様にだんだん逆立っていく。
後ろの席の学生達がクスクス笑い出した。先生はざわつく方を2度見した。「おや?髪型どうした?下敷きで静電気遊びしました?」学生達が見て一斉に笑った。加害者は訳がわからず、キョロキョロした。髪を押さえても隙間から髪の毛が逆立っていく。
「保健室に行きましょう。保健係は付き添ってあげてくれる?バチッとくるかもしれないから触らない様に行きましょう。皆さん少しの間、自習して下さい。」先生が加害者を連れて教室を出ると、クラスは笑い声に包まれた。10分ほどで先生が保健係と戻ってくると教室は静まり、授業が再開すると画面ウインドウは再び真っ黒になった。
「これがビクトールのパワー?」
「そう。僕の雷は追跡型で蓄積型。」
「蓄積?」
「はい。だから明日もやります。依頼人とメッセージのやりとりして、接触するタイミングは変えますけど。」
「おーん、、そうか。これでイジメなくなるの?」
「さあー?相手次第?まっ、その、1回でやめるパターンは少ないかな。ゼロじゃないけど。」
「こんな依頼がひっきりなしなんて、、。」
「大人がちゃんとやらないからだよ。」
ビクトールはどこか冷めた顔で言った。
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続く。
絵:クサビ




