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トレモロ 5  作者: 安之丞


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5巻 1章 2話



夜になって、ハニはビクトールと海賊討伐クエストに四国に向かった。


カエサルを運転しながら、隣で嬉しそうにしているビクトールと話している。


「ハニさんのギルドスーツ、バーガンディにカラー変えたんですか?」


「そうなの。休暇中にメンテに出した時、変えたの。」


「ビクトールのクリームカラーもいいね。うふふ。もうクエストの詳細みた?商船だけじゃなく、漁師さん達も被害にあってるの。討伐レベル20だけど大丈夫?」


「はい、今レベル26です。大丈夫だけど、普段は実戦的な事はしてないから邪魔しないように気をつけます。」


「うん。無理はしないでいーよ。ギルドになって1年くらいでレベル26はすごいね。」


「へへ。教育関係からたくさん依頼があって、報酬もいいんです。さっきから流れてる曲いいなー。シティポップ?誰だろ?」ビクトールは曲を検索した。


「『君はQueen』だよ。みつかった?」


「あった!リストに追加できた。へへっ。」


⭐️


「トレモロ5」


四国の東側、夜の阿波港に着いた。


カエサルを駐車場に停め、ハニはいたずらっぽい顔をして歩きだした。「ブラストは先に来て働いてるから。ビックリさせよう。こっち。うふふ。」


ビクトールは少し緊張しながらついて行く。


青いギルドスーツを青いライトが照らし、ブラウンの無造作ショートヘアのブラストが見えた。


「ブラストー!」ハニは明るく手を振った。


「うーっす。あれ、1人増えたって、この子?」ブラストは振り返り言った。


「そう。私達、1度会ってるんだよ。誰だと思う?」


「ビクトールです。」ビクトールは照れながら挨拶した。


「よろしく!ブラストです。えっ、ノーヒント?綺麗な子だなー。見たら忘れなそうだけど記憶にないなー。うーん、、ギブ!ははっ。」ブラストは困り顔で笑った。


ハニがビクトールにウィンクすると、ビクトールは金の卵のログを出して言った。「この卵、僕です。へへっ。」


「えーーっ!!マジか!偶然会ったの?」


ブラストの驚いたリアクションにハニとビクトールはハイタッチした。


「私達に会いに来てくれたんだよ。」


「マジで!スゲー。クラウンに会った?てか元気になった?」


「うん。もう背中の怪我も治って、スノーの所に行ったよ。終わったらこっちに来るって。」


「良かった。もうすぐ商船が戻ってくるから、終わったらお茶しながら話そう。ビクトールの話聞きたいよ。」ブラストは言った。


ビクトールが嬉しそうに笑顔でうなずいた。


カン!カン!カン!カン!


突然、警鐘が鳴り、灯台の非常灯が辺りを照らした。


燃える商船が波止場に入って来た。

港に戻ってきた商船は、船体や帆の至る所が燃え、攻撃され破損しボロボロになっていた。


挿絵(By みてみん)


ブラストは波止場に向かって駆け出し、ハニとビクトールも後を追いかけた。


ブラストはショックウェーブで帆に着いた火を消し飛ばし、ハニは消火栓を開け、タクシスで2本の放水ホースを操り、素早く船体を消火した。


渡り板が商船にかかると、駆けつけた救助隊員とビクトールは怪我人の救助活動をした。


商船の積荷は盗まれ、デッキには船員達の死体が転がり、怪我人も大勢いた。


商船を駆け回る一人の女性がいた。女性は紫色の瞳と同じ色のカールヘア、褐色の肌、革のジャケット、パンダの目のようなメイクをし、動ける船員と救助隊に指示を出している。


「船員のリストを照合して!それとライフジャケットと浮き輪を持ってきて!誰か!モーターボート貸してくれないか?!」


ひとりの漁師が手を上げた。

「ポーリー船長!俺のを使っていいぜ!」漁師が鍵を投げた。


「ありがとう!」ポーリーは鍵をキャッチした。


船員がライフジャケットを船に投げ入れ、ポーリーはロープを解いて船に飛び込みエンジンをかけた。ブラストも浮き輪を担いで走り出す船に飛び込んだ。

エンジンがうなりをあげ、モーターボートは猛スピードで走り出した。


挿絵(By みてみん)


ブラストがポーリーに聞いた。


「どこに向かうんだ?!」


「何人か海に落ちた!荷物なんかほっとけって言ったのに!その小島の先で奇襲されたんだ。こっちに流されてるはずだ!見つけてくれよ!」


ブラストはギルドのヘルメットを暗視モードにして辺りを探した。小島に近づくとうつ伏せになった男が浮いていた。


「船長いたぞ!」ブラストが指した。ポーリーは革のジャケットを脱ぎ捨て、頭から海に飛び込んだ。


バシャーン!


ポーリーは浮上すると物凄いスピードで泳いだ。


ブラストはモーターボートをゆっくり近づけ、他にも木板や樽につかまって海面で手を振る3人を見つけ、浮き輪やライフジャケットを投げ、船に引き上げた。戻って来たポーリーと、ぐったり動かない船員も引き上げた。ポーリーが助けた船員は、傷だらけで真っ白になって亡くなっていた。ブラストはディスプレイに出した船員リストを確認して言った。「全員揃ったよ。戻ります。」ポーリーは黙ってうなずいた。ブラストは涙目のポーリーの顔をじっと見た。


「何?」ポーリーは気丈に振る舞った。


「いや、何も。」ブラストは船を出した。


⭐️


港に戻ると船員は病院に送られ、ポーリーは漁師にお礼を言って船員達と帰っていった。


⭐️


翌朝。


ブラスト、ハニ、ビクトールは漁業組合センターに集まった。地元の漁師達、商船団、そこにポーリーの姿もあった。


HOMAREから来た赤い鎧の武将が出て来て、みなに挨拶をした。「キャプテンポーリー。昨夜の奇襲攻撃から生きて帰るとは大義であった。褒美を取らす。さすが海賊。船さばきは天下一品だ。次も頼んだぞ!」


「任せろ。」ポーリーは鼻をツンと上向きにして言った。


武将は続けて話した。「これより海賊討伐の作戦を立てる。湾岸包囲網ぞ!」


それから数日間、湾や小島、海底の地形の確認や模擬戦を行った。


⭐️


続く。

絵:クサビ

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