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トレモロ 5  作者: 安之丞


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5巻 2章 7話



「クラウン、こっち来て。」ブラストのコール。


「今行く!」クラウンはブラストに呼ばれると、不貞腐れたジャグラリを無視してノクターン号に乗り込んで行った。


その後ろをチョコが口の周りをなめながらお尻をフリフリ通り過ぎた。


続いてヴァルが来た。船首を二度見して立ち止まった。


「ワーオ!生け取りってこういう事?念の為。」


ヴァルは近づいて手をかざした。「リドゥ。」


ジャグラリの目は紫色のグラデーションになっていく。

「ああ、そこの人。来る時、サメと目があったんだ、ああ、あんたもギルド?、、ぐー!がー!」ジャグラリは眠った。


⭐️


ノクターン号の地下。


檻の中でジャグラリは目を覚ました。

「はー。すっきり寝た〜。」格子の檻の先に置かれた樽や木箱、ロープ、桶を見渡した。6畳ほどの檻の中には丸めたマットとブランケット、簡易エコトイレのバケツがあり、ジャグラリは船の中にいると分かって安堵した。


階段からブラストとヴァルが降りてきた。ブラストはペスカトーレとクロワッサンを檻の隙間から置いた。「食事だ。」


ヴァルは炭酸水を数本、隙間から置いた。


「うまそうだな。」ジャグラリは手を擦り合わせた。


ブラストとヴァルが少し嬉しそうな顔で見合った。「話す気になったか?」ブラストがたずねた。


「誰が教えるか!何度も言わせんな。俺が悪党ならギルドのリストにのってるはずだから好きにすればいいだろ。誰からも被害報告なんて来てないだろ!」


「ずっとこんな感じ?」ヴァルは聞いた。


「ダメだ。こいつナチュラルボーンだ。行こ。」ブラストは拗ねた目をして、ヴァルと立ち去った。


⭐️


しばらくしてハニが降りて来た。


ジャグラリはニヤけて立ち上がり格子にダラっと体をくっつけた。

「よー。べっぴんさん。あんたなら今の稼ぎの50倍稼げる所、イイ男紹介してやるよ。どうだ?もう放してくれよ〜。」


「紹介してくれるの?相手は何してる人?私、好みにうるさいの。」


「政治家、有名人、資産家の紳士、若手の起業家、あんたは誰と遊びたいんだ?豪華なパーティーを開いてド派手に遊ぶ相手も見つけてやれるぞ。」


「そんな遊びに興味ないわ。顔は広い様ね。被害報告来てないって自信あるみたいだけど、仲介した先で大勢が行方不明になってるのよ?」


「大勢行方不明って、、逃げたやつもいるだろ。あのなー、生きてる娘達(こたち)も大勢いるぞ。話聞いてこいよ。」


「聞いて来たわ。あなたが過去に仲介した女性達に接触したけど誰も被害は訴えてなかった。けれど紹介された男達からは、暴力に薬物に自由を奪われ、ひどい目にあってたわ。」


「そうか。悪いやつがいるもんだ。俺だって全部は把握しきれねーし、女だって好みの男にはしゃいで渡した大金も喜んで受け取ってたし、たまに愚痴も聞いてやってたんだぞ。そんなに嫌なら逃げればいいとも言ったぜ?なあ俺、優しいだろー?」


「はあー。」ハニはため息をついて、檻の中で空になった食器をさっと取り、その場から立ち去ろうとした。


ジャグラリは鼻をすすって匂いを嗅ぎ、息をたっぷり吐いて言った。

「ススン!はぁー。あんたの好みは無垢な正義感に黒髪ロン毛の柔い系が好みかー。」


「!」ハニは目を開いて一度ジャグラリを見たが、フン!と顔を背けて階段を登った。


階段を上がって甲板にでると「ハニ、大丈夫?」甲板でクラウンはログを見守りながら待っていた。


「平気。悪い事してる自覚ないっていうか。協力する気もなさそう。けれど相手の好みを熟知してるわね。」


「それに鼻が効くね。僕たちのシャンプーの香りで付き合ってるのもわかったみたいだし。」


ハニはうなずいた。


⭐️


しばらくして船員が2人降りてきた。「リフレッシュタイムだとよ。両手あげて柵を掴め。」


「へっへー。気が効くじゃねーか。」ジャグラリはニヤけて柵を掴み、大人しく連れ出された。


甲板に出ると夕陽が見えた。スノーと虎徹が竹刀を持って立っていた。


「勇ましいらしいな。竹刀を取れ。」虎徹が竹刀を足元に置いた。


ジャグラリは竹刀を蹴った。「誰がやるか!」


バシッ!


「アウ!イッテー。」


スノーが竹刀でジャグラリの背中を叩き、竹刀を肩にかけて言った。「さっさと握れ。お前の勇ましさは見せかけか?」


「はーん?やってやるよ。」だるそうにジャグラリは竹刀を拾った。次の瞬間、虎徹に竹刀を投げつけた。


バシッ!


虎徹は竹刀で弾いて空中に浮かせ、ジャグラリの頭を叩いた。


バシッー!


「イッテー!」


虎徹は竹刀をキャッチすると投げ返した。「拙者とスノー殿に交互に攻めてこい。はじめ!」


バシッ!バシッ!バシーン!


「アウ!イッテー!もう勘弁してくれ。リフレッシュにならねーよ!」


バシッ!バシッ!バシッ!バシッ!


「シシッ!まだ元気あんじゃねーか。ほら。竹刀持て。」


虎徹とスノー相手にどう立ち向かっても負け続けた。スノーに竹刀ごと弾き飛ばされて、気持ちが折れたジャグラリは座り込んで足を開き、竹刀を横に振りながら泣いた。「なんだよー!俺が何したってんだー。バチバチしやがって〜。えぐっ。」


「よくそんなんで悪党と渡り歩いてたな。シシッ。」


「悪党?!俺にとっては上得意客だ!」


バシッ!虎徹は甲板を竹刀で叩いた。

「立て。己の弱さに打ち勝て!剣道で根性を叩き直せ。」


ジャグラリは竹刀を虎徹に投げつけ横に丸まった。「もうやんねーよ。」と小声で言ってうずくまった。


「節度を重んじ、我慢強さ、自己管理能力が鍛えられる。続けられよ。」


スノーと虎徹は竹刀を樽に立てて、船員に檻に戻す様に合図した。船員はジャグラリを抱えて地下に連れて行った。


⭐️


クラウンはノクターン号の作戦室で1人考えていた。みなに集めてもらった情報をディスプレイに出して並べた。思い浮かぶ過去のログも並べた。クラウンは白いシャツを腕まくりして、思いつくままにボードに書き込んだ。書き尽くし、ボードに頭をつけてゆっくり目を閉じた。数分間、深呼吸をした。


ジャグラリの言葉が気になってハニとの会話をもう一度見直した。クラウンは作戦を閃いた。立ち上がってキッチンに向かいお酒の瓶と炭酸水のボトル、氷を入れたグラスを2つ持って部屋に向かった。


コンコンコン。


「アマデウスさん、今話せますか?」


「、、、はい。今開けるよ。」


カチャ。


黒いシャツを着たアマデウスが静かに扉を開けた。部屋は温かみのあるシェードランプの柔らかい光が灯っている。


「梅酒飲みますか?」


「ああ、いいね。ロックでもらおうかな。」


クラウンはグラスに注ぎアマデウスに渡し、自身のグラスには梅酒を少しと炭酸水を注ぎ混ぜた。クラウンとアマデウスは乾杯した。


「あの、アマデウスさんってずっと精霊探してます?」


アマデウスは一口飲み終えると、部屋の窓の方へ歩いて行き、窓を開けてバルコニーに手をついた。夜の海の風が優しく吹いた。


「ふふふふふ。、、鋭いね。」


クラウンもバルコニーに出て手すりに背を向けアマデウスの隣に立った。


挿絵(By みてみん)


「僕が昔、ヴァルのエレメントストーンをみつけられたのは貴方が導いた様に思えて。」


「探してる相手が一緒だったから偶然が重なったんだろう。ふふふ。」


「さっき色々考えてみたんです。なんで悪党達は必要もないのにエレメントストーンをみつけられたのか?それは鉱物や資源発掘の副産物だったのかなって。ギルドの中には精霊の力を借りてエレメントストーンを探せる者達もいます。、、そして精霊はエレメントストーンを探せる。貴方はずっとその精霊を探しているんじゃないかな?って気がして。純粋に悪党追いかけてたらごめんなさい。」


「ふふふふ。謝らなくていい。その通りだ。」


「どんな精霊?」


「子供の頃、夕暮れにピアノを弾いていると歌いにくる精霊がいた。ある日を境に来なくなってしまい、さらわれたと聞いた。」


「夕暮れ、、うん。それなら場所もそうかな?と目ぼしい星があるんです。ジャグさんにたずねに行きませんか?」


「興味あるね。今から?」


「はい。これ飲んでから。」


⭐️


続く。

絵:クサビ

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