5巻 2章 8話
クラウンは、アマデウスに思いついた作戦の相談をしながら、グラスの梅酒ソーダを飲み干した。
2人は地下の檻に向かった。
「ジャグさん、こんばんは。魁はトラピスト-1にいる?」クラウンはほろ酔いで微笑んで言った。
「!!」ジャグラリは不意をつかれトラピスト1という言葉にビクっと反応した。
アマデウスは腕組みしてじっと見ている。
「な、なにいってんだ。デタラメ言いに来たのか?はん?」ジャグラリの目は泳ぎ、アマデウスを見たりクラウンを見たり辺りを見回しそわそわしている。
アマデウスが檻に近づきジャグラリに言った。
「これから魁を討伐しに行く。こちらに付かないともろとも死ぬ事になる。救済してやる代わりに、彼の作戦にのれ。それが唯一生き残る道。悪党でないのなら照明しろ。」
「はん?はは、、脅しかよ。俺はー!悪党じゃねー。、、何して欲しいんだよ。」
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翌朝。
東京湾で、ポーリーとアマデウスは、ノクターン号の宇宙潜航艦とドッキング作業をしている。
虎徹はまごろくと話している。「しばしHOMAREを頼む。」
「なんかあれば総出で加勢に行くからな。」
その近くでビクトールはクラウンの手を握った。「僕も行きたかった。」
「非統治エリアだから何かあっても警察もギルドも来てくれないし、侵入禁止の所だからね。見守ってて。」
「うん。アースに必ず帰って来てね。」
心配そうな顔のビクトールをクラウンはぎゅっとハグした。「みんなで帰ってくるよ。ビクトールも協力してくれてありがとう!」
ビクトールもぎゅっと抱きついて無事を祈った。
ノクターン号はドッキングを終え、ポーリーと船員達が乗り込んでいく。ブラストはビクトールとまごろくに手を振った。
クラウン、スノー、ハニ、虎徹、ヴァル、犬達も手を振って乗り込んだ。
「俺はここで。招待状はきっちり出すからよ。」ジャグラリは船から降りようとした。
「お前も一緒に来るんだ。これが終わったらお前向きの仕事を私が紹介してやる。先に歩け。」アマデウスはあごを少し上げ、歩けと合図した。
「俺向きの仕事ってなんだよ。」ポケットに手を突っ込んでジャグラリは歩いていった。
ノクターン号は出航し、東京湾を離れると銀河に向かって飛び立った。宇宙連盟の条約によって、あらゆる開発と侵入が禁じられているトラピスト1へ向かった。
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1週間後。
ノクターン号。
船員たちはウキウキしている。
「金曜日の夜だ〜!俺達のリクエストのカレーを3日かけて仕込んでるらしいぞ。」
「3日?スゲー。ギルドが来てからメシがうまいな!」
「クラウンが隠し味にバナナ入れてるってよ。」
「ほー!どんな味になるんだー?」
「甘口カレーが好きだから楽しみ〜!」
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ノクターン号のキッチン。
2日前から仕込んでいるカレー鍋を、クラウンとヴァルはそれぞれ焦がさない様に底から丁寧に混ぜている。「ヴァル、味見して。」「ん〜。甘さの後からスパイシーさが来て、うまさがクセになる!」クラウンは満面の笑みを浮かべた。
ハニとスノーはスライスした野菜を並べてオーブンに入れている。「ハニ、カボチャはオレ切るから代わって。」「ありがとう!次のやつオーブンいれちゃうね。」ハニはローズマリーを散りばめた。
ブラストと虎徹は別添えのサイコロステーキを豪快に焼き上げている。「ブラスト殿、いくぞ?」虎徹が酒をフライパンに振りかけた。ボウッ〜!ジャーー!「っしゃー、ファイヤー!」ブラストは炎が燃え上がるフライパンを煽った。部屋中にカレーとハーブとステーキの焼ける香りがたった。
「いい香り〜!」みな声が揃った。
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夕飯の時間になると、作業を終えた船員達が続々とトレーを持って並んだ。みな「美味い美味い」と言いながらバクバク食べた。お代わりにも駆け足で並ぶ。たくさん食べて落ち着いた頃、酒もテーブルに並び、晩酌をしながら船員達は犬達とおやつがどっちの手に入っているか当てるゲームで盛り上がっている。
ジャグラリは酒のグラスを持って、クラウンの隣の席に座った。
「招待状ができた。乗客が100人乗れる豪華戦艦客船も手配済みだ。こいつらがよだれたらすくらい豪華でド派手なパーティー組めたぞ。どこの星に降ろせばいい?」
「トラピスト-1e。アースに環境が近いから誘いやすい。」クラウンは答えた。
「よく知ってんな。居場所までなんでわかったんだ?」
「戦争や災害、何が起きても影響されない場所だから。ま、それだけじゃないけど。」
ブラストがグラスを持って隣に座った。
「降ろす所だけど、ターミネーターラインの昼側に指定しろよ。」
「ターミネーターラインの昼側ね。ぬかりねーな。」
アマデウスも来た。「彼らは衛星を持っている。ふふ、行くぞ。」「衛星も持ってんのか。」ジャグラリは呆れた顔で立ち上がった。アマデウスは招待状を送らせる為、ジャグラリを作戦室に連れて行った。
「アマデウスさんは本当にアイツの面倒見るつもり?」ブラストはクラウンに聞いた。
「これが終わったら、アスリートやアーティストのスカウトやらせて、企業とマッチングさせる仕事をやらせるらしいよ。」
「へー。ま、向いてるか。いつかなんかやらかしそー。」ブラストは少し笑った。クラウンもうなずいて笑った。
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船長室。
「ポーリー、フルーツとお酒どう?」ハニがイチゴと葡萄とシャンパンを持ってきた。
「おー!いいね!ありがとう。あのさー、ブラストとクラウンはいつもあんな感じで仕事してるのか?」ポーリーは言いながら、冷えたシャンパンをグラスに注ぎ、泡が立ち上がるグラスをハニに軽く傾けた。
ハニはグラスを合わせた。「そうね。昔からずっとあんな感じ。ふふっ、美味しっ。」
「横で聞いてても衛星使ってなんかオブジェ見つけたーとか、トラピストは潮汐ロックだからーとか、今向かってるのはトラピスト-1fだろ?eじゃないの?とか。あの2人の話にはついていけないよ。」
「私もその分野はよく知らない。えへへ。私もクラウンに聞いたら、潮汐ロックは同じ面を見せて回ってるってことみたい。」
「ああ。ブラストには月の同じ面が見えてるのに似てるって言われたけど、未知の星に行くってのに遠足気分で驚きだよ。」
「うふふっ。トラピスト-1fにクラウンとヴァルのお楽しみが待ってるみたい。」
ポーリーは机に腰かけ、ハニとフルーツをつまみながら、リラックスしてお互いの彼氏の話を楽しんだ。
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数日後。
ノクターン号はトラピスト-1fの夜側に侵入した。分厚い雲を抜けると、建物はなく、広い海の遠くに隆起した陸地が見えた。夜の海に着水した。
「そのまま潜水ー。」ポーリーが舵を取る。
真っ暗なモニターの前でクラウンとヴァルとブラストはお菓子とソーダを持って集まった。お菓子につられて犬達も来た。
水深800m。
モニターに何か映った。
透明の袋状の真ん中に小麦色の丸が浮かんで見えた。扁平型で透明のヒレで泳いでいる。
「ワオワオワオ!クラウンみて!パンケーキバットフィッシュの幼魚だー!」ヴァルはテンションが上がってクラウンの肩をバチバチ叩いた。
「本当だー!かわいいー!痛いよ、ヴァル。」
「あれ何?袋の中身が無いのもいる!カッケー。」ブラストは指差した。
「あれはね、ホウズキイカだよ。もう水深1000m近いね。横向きのシルエットが面白ーい。あれ?もう底が見えてきた?」
「ポーリ〜!どうするの?止めないの?」ヴァルがうろたえた。
「ポーリー、ポイントあってる?」ブラストが焦って聞いた。
「大丈夫だって。さわぐな。」ポーリーは顔色を変えず答えた。
「ポーリ〜!もっと速度落とさないとマジでやばい!」ヴァルはクラウンに抱きついた。
「うわっ!うわー!」クラウンはただ驚いている。
「おおー!ぶつかるー!」ブラストも大騒ぎ。
3人は海底にぶつかるかと思いきや、そのまま雲の中を通ったみたいに境界を越えると、その先にはさらに深海が広がっていた。
「あれ?」
「あはは。」
「ふー。」
3人は、ほっとして飲み物やお菓子に手を伸ばした。
「濃度が変わったんだよ。深海の生き物には詳しくても、海の事は知らねーんだな。」ポーリーは順調に航海を続けた。
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続く。
絵:クサビ




