5巻 2章 6話
小さな島が並ぶ諸島。南国の爽やかな風と波の音が気持ち良い。5000以上ある島のひとつに、海賊が補給に立ち寄る港がある。ノクターン号は港についた。
「ポーリー船長!買い出しに行ってくる!その後はいつもの酒場で。」
「ああ、頼んだよ。あとで私達も顔を出す。」
金貨の入った皮袋をポーリーは船員に渡した。ノクターン号の船員達はウキウキで下船していく。
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夜になって港町の飲み屋通りは賑やかだ。
海の上にせり出たデッキには樽が並び、樽の上にはキャンドルが灯されている。体の大きな男達が樽のテーブルを囲み立ち飲みしている。
ブラストとポーリーはアイリッシュパブの看板がかかった店の扉を開けた。
ポーリーはマスターと先に飲んでいる船員達に軽く手をあげ挨拶した。
ブラストとポーリーはビールを注文した。
「船長、連絡ありがと。来てるよ。」マスターが囁きながら、店の奥の演奏者達の辺りをブラストとポーリーに目配せした。ギターやバンジョー、フィドル、ティン・ホイッスルを手にした4人がアイリッシュチューンを軽やかに奏でている。店内はカウンターからテーブル席まで賑わっている。
ポーリーはセッションの音にノリながらうなずいた。
ブラストはビールを受け取り、カウンターでポーリーと乾杯した。ブラストはカウンターに背中をつけて、飲みながら演奏者達の方を見た。奥でスパンコールのワンピースを着た女性2人と一緒に座っているのは子守のジャグラーだ。色黒でパーマヘアに小綺麗な服装、すらっとした体つきで女性達と親しげに話している。
店の扉が開き、ジャケットに十字架のピンバッヂをつけた中年の男性が来店して飲み物を頼んだ。それからビールグラス片手に辺りを見渡し、子守のジャグラーに近づき声をかけると向かいに座った。女性達はジャケットを着た男性の両隣に椅子を近づけて座り、体を密着させた。ジャケットの男性は照れながら書類の束を出して子守のジャグラーに渡した。子守のジャグラーは封筒を取り出しサインをして封筒を渡した。4人はビールで軽く乾杯をした。子守のジャグラーはビールを飲み干し、おかわりを買いに立ち上がり、カウンターに近づいてくる。ブラストの前で横を向き、ビールを飲むブラストの袖からギルドのワッペンを二度見した。ブラストが声をかけようと目を合わせると子守のジャグラーは後ろに勢いよく下がり、客にぶつかりながら後退した。
「いて!」「もう!」「オーイ。」ぶつかった客達は驚きながら声を上げる。
子守のジャグラーは壁際まで下がると横に移動しながらテラス席に向かう。ブラストは目を見ながら追いかけた。
子守のジャグラーがテラス席で飲んでいる大男3人を呼んだ。「護衛!護衛!」ブラストを指差している。
大男達はブラストに向かっていく。
「お前ら中で暴れんなよ。テラスでやりな!そいつは捕まえろ!」ポーリーは船員達に呼びかけ、子守のジャグラーを指差した。
「ウオー!!」船員達が次々と立ち上がり、逃げようとする子守のジャグラーを掴んで両脇から2人がかりで担ぎ上げた。別の船員が樽を引きずってくると、ジャグラーを抱えたまま走り込み、お尻から一気に樽に叩きつけた。
バゴーン!ドスン!
衝撃で樽の蓋が割れ、尻から樽の中に落ちた。船員達は子守のジャグラーを捕まえた。
ブラストがテラス席に向かうと髭もじゃの大男達は樽を蹴飛ばし、スペースを作った。ブラストが3歩近づくと、大腕を振り回して殴りかかって来た。ブラストは下がってラリアットをよけると、後ろで見ていた大男2人がブラストを突き飛ばした。ドン!突き飛ばされたブラストは、待ち構えていた大男にラリアットをくらった。
ボン!
「はうっ!」ブラストは体をかがめ、うしろに数歩下がりながら胸を押さえ苦しさをこらえた。
ブラストは体を少し起こしてサイドステップで近づき半身を傾け大男の顎を狙ってサイドキックを蹴り上げた。
べチン!!
ギルドスーツのブーツがめり込み、スーパーキックをくらった大男は後ろに大きく吹っ飛び海に落ちた。
ボチャーン!
次の瞬間ポーリーは、残る大男2人の背後に積まれた樽の上に飛び乗った。
目の前の大男2人に後ろから飛び乗り、すねを首に押し当て、2人の間で前転し受け身をとった。
バシン!!
大男2人は後ろから首を蹴られて前に転がり、勢いよく海に落ちた。
ボチャーン!ボチャーン!
ポーリーは2人まとめてアストロシザーズをきめた。「あっちからあがれるぞ〜!」ポーリーは立ち上がって船着場の階段を指差して笑った。
「船長ーキメたなー!」
「フォー!お前ら最高で最強!」
ポーリーが歌うと船員は肩を組んで一緒に歌った。
ブラストは気持ちよく酔いがまわり、その光景を微笑ましく眺めた。
再び演奏者達はアイリッシュチューンを奏でた。
十字架のピンバッヂをつけたジャケットの男がブラストに近づき握手を求めた。
ブラストは手を握り返した。「ドクター、ご協力ありがとうございます。」
「怪我人が出なくて何よりです。」
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ノクターン号。
「オーイ!テメーら!殺す気かー!」子守のジャグラーが叫んでいる。
船員達は子守のジャグラーを船首に縛り付けている。
「夜はお前に油をかけてトーチライトにしてやろうか?」
「ミイラの船首像もいいなー!」
子守のジャグラーは身震いした。
「その辺にしとけ。」ポーリーは舵に向かって歩いて行く。
「夜の海にでるのか?怖すぎだろ!せめて船の中に吊るしてくれよー!なあー頼むよー!」
「出航ーー!」ポーリーは声を張り上げた。
「オーー!」
ザパーン!
ノクターン号は東京湾に向かって出航した。
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朝日が昇る。
ブラストが船首に縛られた子守のジャグラーの様子をのぞきこんだ。
子守のジャグラーは下を向いたままだ。何度も波に打たれて、パーマヘアにワカメも絡んでいる。
「ポーリー、1回話して水分とらせるから引き上げてくんない?」
「拷問タイムか。私がやってやろーか?」
「いい、いい。ちょっと話すだけだから。ははっ。」ブラストは笑ってポーリーをなだめた。
「引き上げろー!」ポーリーが言うと、船員達は子守のジャグラーを引き上げ、持って来た椅子に座らせ縛った。
「はあ、はあ、あんた、ギルドだろ?助けてくれよ。」
「答えてくれたら水飲ませてやるよ。医療関係者と会ってただろ。臓器売買か?」
「もうやってねーよ。それも知らなかったんだよ。」
「大金もらっておかしいとか思わなかった?」
「ゴールデンベビーの抗体を医療に生かしてーっていうから業者を紹介してやっただけだ。俺はー!イイコトして大金稼いでるんだ!」
「勇ましいつもりか?自分だけ儲かれば幸せか?」
「はーん?ギルドが海賊と組んで説教か?最悪のペアだなー。はーん!」
ブラストが水の桶を持って来た船員に合図した。船員は桶の水をぶっかけた。
バシャーン!
「ぶはっ!ゲホ、ゲホ。」
「いやいや、尺ですくって飲ませてやって。」ブラストが言うと、船員達は雑に水を飲ませた。
「お前が仲介してる奴らはどこにいる?」
「なんでタダで教えてやんないといけないんだよ。ゴホ。」
「いいことしてる気になってんじゃねーよ。本当は男達や女達、子供達が紹介先でどうなるか知っててやってたろ?」
「わかってからはやってねーよ。俺は仲介屋。後の事は当人同士の問題だ。知るか!」
「お前はもう眠れ。」ブラストがスリープスタンプを取り出し立ち上がった。
「やめろよ。はぐっ!くー。くー。フガー!フガー!」
「吊るしとけ。」ポーリーは船員達に言った。
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東京湾。
クラウンは、ブラストから「子守のジャグラーを生け取りにした。これからそっち行くわー。」と連絡を受けたので、港で待っていた。
「チョコ〜待てー。よしっ!」
チョコはしっぽをブンブンふって、おやつを食べている。そこにノクターン号が来た。
「あ!来たー。やっぱノクターン号かっこいいな〜。ん?へっ?!なんかついてない?」
クラウンは港に入って来たノクターン号に向かってゆっくり歩き出した。
クラウンはノクターン号の船首で、ぐったりした子守のジャグラーに話しかけた。
「カニがついてる、、どうも。」
「、、はっ、ドーモー。」子守りのジャグラーは話しかけられて意識が戻った。
「子守のジャグラーさん?」
「そのダセェ呼び方すんな!俺はジャッグラップ・グラージャ・ジャグラリだ!」
「じゃあージャグさん。」
「、、、なんだよ。」
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続く。
絵:クサビ




