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トレモロ 5  作者: 安之丞


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5巻 2章 5話



ホテルの料亭


「ハニ、聞こえる?」


「うん。クラウン、今まごろくさんが、料亭の女将さんに食事を全部出したら人払いする様に伝えたよ。」


「この前のスノーとビクトールのおかげで、そこにいる奴らは全員討伐対象になった。」


「OK.」


「クラノスケ、女将にこの店もグルやったんか?て話し聞いてみたら、悪さしてるのが元政治家や建設屋、採掘業者、病院やホテルの経営者、資産家、有名人を断れず、不祥事の時の逃げ込み先や悪行の集会の溜まり場になってしもたそうや。」


「まごろくさん、女将さんに今日の客が全員討伐対象になった事を伝えて、協力してくれる様に頼んでもらえないかな?」


「聞いてみよか。女将ちょっとこっち来て。これから中のやつらをやる。もう悪党との商いもしまいや、ええか?部屋が散らかるけど、十分こいつらから儲けたやろ。高価な器はしまっておいた方がええで。」


「お侍様、そうします。魯山人先生の器は守らないと。私どもも長い間断りきれず、仕方ありません。」女将は頭を下げてやり切れない顔で従業員達に声をかけて静かに裏口に向かった。


辺りが静かになった。

虎徹が立ち上がり、ハニとワッペンをぶつけた。


⭐️


ホテルの敷地内に作られた老舗料亭。

ライトアップされた日本庭園を進み、門と名前が書いた部屋の提灯の先に、和室の個室がある。そこに美しい江戸切子のガラスの器に盛られたデザートが運ばれていく。


部屋の中では、太鼓腹で高齢の男性達が話している。酒の強さを自慢したり、手配してもらった女性達が可哀想な最後を迎え、金で黙らせた話、一言で株価を動かした話、不当に安い価格で企業を手に入れた話、政治家に金を積んで自分達に都合の良い政策を推進させた話、利益の為に人権や環境を軽視する話など、腐敗しきっている。


スーツ姿の警護人達が部屋の外に立ち見張っている。


日本庭園の大きな石と石の隙間から、まごろくはすり抜けた。ハニも続く。竹薮に身を屈めた。


「ハニちゃん、正直に話して協力した女将に免じて屋根より上に投げてくれへんか?」


「そうね。あっ、承知の助っ。」


まごろくは懐かしい響きに、にこっと笑って兜の尾を引いた。兜からケルベロスのホログラムが飛び出し庭に駆け出した。警護人達を庭に引き寄せた。


ハニは竹林の中から両手を広げて構えた。「タクシス!」

「うわーっ!」「おお!」

ハニは警護人達をまとめて丸めていく。大きな丸い塊が空中にできると、空高く投げた。


挿絵(By みてみん)


まごろくは岩の上に飛び乗り、くないに手榴弾を付けて空高く投げ込んだ。


ドンッ、バーン!


警護人達はホテルの駐車場まて吹っ飛んでいった。


障子扉をバーン!


虎徹が勢いよく開けると、向かい合って座った9人の悪党達は、爆破音と思いビクッ!と身をすくめた。


虎徹は1人の悪党の髪を鷲掴みにして、刀を首に当ていった。「大人しく出頭しろ。逃げたら斬る。」悪党達はまわりを見回した次の瞬間、ちりぢりに逃げ出した。虎徹は悪党の首を斬った。


悪党達は酒に酔った足取りで、慌てふためき逃げ惑う。虎徹は軽く刀を振り、悪党のふくらはぎを斬った。悪党は足を押さえ悶えながら倒れた。


庭から向かってきたハニは、逃げて来た悪党達に指を開いて構えた。

「タクシス!」

両手を横に交差させると、悪党達が座っていた座布団が浮いてくるくる回り出し、4人の悪党を追いかけた。座布団は悪党達の顔面に貼り付き、地面に押し付ける。地面で暴れる悪党達にまごろくは高く飛び上がり、くないを両手で2連続投げた。


ドス、ドス!

ドス、ドス!


くないは4人に命中し倒れた。

まごろくは着地すると、庭を逃げ惑う悪党にくないを投げた。


ドス!


肩にくないが突き刺さり、肩を押さえて悪党が前屈みでよろめいた。


ザン!


虎徹の一太刀。首を斬った。


残りの2人を追って、虎徹は料亭の壁を飛び越え竹林を走っていく。開けた十字路に逃げた2人の悪党達の前に、刀を持った辻斬りが1人現れた。


辻斬りは、ゆっくり2歩前に出た瞬間、素早く斬りかかってきた。


虎徹は素早く横にかわし、下から振り上げ攻める。


辻斬りは足を開いて後ろに移動し、地面を踏み締めると、大きく刀を振り下ろして来た。


虎徹はタイミングを合わせ、しのぎに当て受け流した。


弾かれた辻斬りが片足を上げ蹴りこんで来た。虎徹は素早く後ろに身を引きかわした。


竹林が風でザザーと揺れる。


ワン!ワン!


十字路の向こう側からクラウンとスノー、犬達が走って来た。


スノーが悪党2人に駆け寄ると、辻斬りが向きを変えて、刀を振り上げスノーに飛びかかった。


「スノー殿!」


「シェル!」ガキン!

スノーが岩肌になって身を守り、前屈みになった。


虎徹は素早く走り込み、スノーの背中に背中をあわせて横回転し、着地するや走って来たクラウンとワッペンを合わせた。


立ち上がったクラウンと虎徹は構えた。

「ロージー!」

「飛翔!」

チョコからプリズムが出て輝き、虎徹の刀は炎を帯びた。


スノーは体を起こすと、悪党2人の首根っこを掴み、2人まとめて辻斬りの側に突き飛ばした。


虎徹は辻斬りに左から刀を一文字に斬り、素早く右から下に振り下ろした。

バーン!

バン、バーン!


斬られた辻斬りは爆発し、側でよろけた悪党2人も爆発した。


ビクトールが息を切らし走って来た。

「はあ、はあ、追いついた。はあ、もう終わってる。あとでログでみよ。」


クラウンとスノー、虎徹はハイタッチして再会を喜んだ。犬達は飛び跳ね、元気にしっぽを振った。


⭐️


続く。

絵:クサビ

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