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トレモロ 5  作者: 安之丞


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5巻 2章 4話



荒野に、金網のフェンスに囲まれた元軍事基地がある。コンクリートの床には軍のマークのペイントがそのまま残っているが、所々かすれている。建物の周りには木箱や酒の空き瓶が転がっている。


「クラウン、到着した。」

「スノー、頼んだよ。」

「オイッス。」


スノーはコールを切り、振り返って言った。「準備できたか?ビクトール。」

「うん!できました!本当にこの作戦でいいんですか?」

「オレ好みだ、シシッ!よし、ゴースト行くか。」

ゴーストはお尻を突き上げしっぽを振った。

スノーとビクトールはワッペンを合わせた。


⭐️


元軍事基地。


フェンスの入り口に2人の見張りがいる。ゴーストが近寄って行く。


「あの犬さっきも来たぞ。捕まえて飼うか?」

「ボスが新しい見張り欲しがってたな。」

「俺が捕まえる。こっちこい!」


ゴーストが見張りの手の届く距離まで近づいた。スノーは建物の陰からタイミングをみて構えた。「フリーズ。」


見張り2人がスローモーションになると、スノーは駆け出し、スリープスタンプを押し当て見張りを眠らせた。眠った見張りのポケットをさぐり、鍵を取り出すとフェンスを開け、そのままフェンスの中に入り鍵を閉めた。フェンスの外でビクトールは、眠った見張り2人を拘束バンドで縛り、物陰に戻った。

ビクトールが心配そうな顔でゴーストと見守っている。


心配をよそにスノーは堂々と監視カメラに向かって言った。「お前ら詐欺で稼ぎやがって。全員ぶっとばしてやる。シシッ!出て来い!」ドンドンドン!スノーは扉を強く何度か叩き、コンクリートの広場に歩き出した。ペイントされたマークのど真ん中で待ち構えた。


詐欺グループの3人が駆け出してきた。最後尾の詐欺師はまだ部屋にいる仲間に向かって大声で言った。「警察じゃねーギルドだ!1人で来てやがる!」


先頭の詐欺師が走ってスノーに殴りかかった。スノーは拳を避けながら、襟元を掴み、グッと引きつけ素早く体を入れ、前にバーン!と投げ飛ばした。スノーは背負い投げをした。詐欺師は投げ飛ばされ仰向けになると、重たいスノーの拳を側頭部にくらい気絶した。ゴズッ!スノーはスリープスタンプを押し当て、次の詐欺師を見ると、木箱に置いてあったバールを握りしめて向かって来た。

バールを大きく振り下ろし暴れ回る詐欺師を、スノーはバックステップ、上半身を回しよけ、バールは大きく空振りした。勢いで足元がふらついた詐欺師を、スノーは半回転で避け、そのまま回し蹴りした。バールを持ったまま詐欺師が金網のフェンスに激突した。


チチッ!シュバーン!!


金網から電流の火花が散り、詐欺師は弾け飛んで気絶した。

スノーが3人目を見ると、電流爆破に恐れて、木箱の横でへたり込んで座っている。


詐欺師の仲間が一斉に駆け出して来て広場に押し寄せた。「ボスー、アイツです。」座り込んだ詐欺師がスノーを指差した。


ボスは猪の顔に青いモヒカン、キャッツアイのサングラスをかけた大男。ベストを脱ぎながら仲間に言った。「こいつを殺(や)りてーヤツはいるか?」背中一面にマリアのタトゥーが入っている。


スノーは小声でコールした。「ビクトール、もう一発頼む。」


「はい!ビクビク。これで電流MAXです!」ビクトールは指示通り隠れたまま金網のフェンスに電流を流した。


スノーは大きく息を吐き、脱力して体をゆする。


詐欺師の仲間は木箱に乗って空き瓶を握り、ボスを応援した。


空き瓶を握りしめた詐欺師が2人前に出て来た。「ボス、俺らでぶちのめしますよ。」「このボケェ!」


「ぶちのめせー!」他の詐欺師達が騒ぐ。


スノーはニヤニヤ笑っている。


2人同時に構えると、飛び蹴りで向かって来た。スノーは両手を曲げた構えでガードし、後ろ足で踏ん張った。


スノーは次々に飛んでくる蹴りに、片膝を曲げ横に移動しながらガードし、フェンスに近づいていく。強い蹴りを片膝でガードし、顔面に飛んで来たハイキックを両手で掴んた。そのまま足を持ち上げフェンスに叩きつけた。


チチッ!シュバーン!!


青やオレンジの火花が散る。詐欺師は気絶した。スノーは飛び散る火花を浴びて前屈みになった、その時。


バリーン!


もう1人の詐欺師が空き瓶をスノーの後頭部に叩きつけ、ガラス片が肩に突き刺さった。


スノーは肩に刺さったガラス片を抜き取り投げ捨てた。


電流の衝撃に怯え、木箱に乗り見ていた詐欺師達は騒いだ。


割れた瓶の先を突き出し、もう1人の詐欺師がスノーを襲う。スノーは両手を伸ばしきって、切先を向けて突っ込んで来た詐欺師の肘の内側を一瞬押さえ横によけた。スノーは胸ぐらとベルトを掴んで詐欺師を頭上に持ち上げフェンスに投げつけた。


チチッ!バーン!バチーン!

「ギャーー!」


詐欺師は叫び、地面に落ちて気絶した。火花が散る中、スノーは振り返って言った。「シー、早くみんなでかかって来いよ。」


木箱の上で身を寄せ合った詐欺師達は首を横に振った。猪頭のボスは横で縮こまった詐欺師の尻を蹴り上げて言った。バスン!「どけっ!あいつを殺ったヤツはボーナスやるぞ!」誰も立ち上がらなかった。「オメーら、やる気ねーなー!ブルッブルッ!」猪頭のボスはブルブル鼻息を吐きサングラスを外した。その目は血走っている。


「ブルァッ!」猪頭を突き出してドスドス走り出した。

正面からタックルし、スノーを抱えて床に投げ捨てた。

そのまま木箱に駆け上がり、転がったスノーにダイブした。


ドスン!


「ぐはっ!」身を屈めて苦しむスノーを起こして木箱に突き飛ばした。詐欺師達がスノーを掴んで押さえた。ボスは助走をつけて両足で飛び蹴りした。


バコーン!


ドロップキックの衝撃で木箱も壊れた。詐欺師達は床に落ちた。


スノーが横に転がった。


「ボスー!とどめだー!」


猪頭のボスは勢いをつけて片足を上げた、その瞬間。スノーは床に両手をついて片足を蹴り上げた。バランスを崩した猪頭のボスはなんとか蹴り込もうと、倒れながら両足をスノーに蹴り出した。スノーは飛んできた両足首を掴み、肩に乗せながら相手をひっくり返しうつ伏せにして、引きずりながら体ごと回った。スノーはジャイアントスイングをした。猪頭をコンクリートに擦りながら3回転。「ブキッ!ブキキー!」猪頭を擦らない様に両手を横に開いて上体を反らせた。


挿絵(By みてみん)


スノーはさらにぶん回し浮かせて思いっきりフェンスにぶん投げた。


「ウラッ!!」


バチーン!ドンッ!バシューー!!


電流爆破で猪頭のボスを倒した。凄まじい火花がフェンスや電線から散り、詐欺師の拠点はショートした。


スノーは戦意喪失した詐欺師達を拘束し、ビクトールとゴーストを呼び込んでから警察に通報した。

ビクトールとゴーストはスノーに駆け寄り、怪我した箇所に水をかけて回復させた。


⭐️


ビクトールは、持ち込んだ機材でパソコンとモニターがたくさん並んだ部屋を調べ、送金先を突き止めた。スノーは地下のフロアで鍵のかかった柵の扉を開けた。そこにいたのは誘拐された技術者と子供達で、彼らは強制労働させられていた。

ビクトールはさらわれた子供達のログをディスプレイに出した。

「子供達は地下に居ました!もう青年になってるけどみんな面影がある。生体認証とご家族に連絡お願いします。」


「シシッ!クラウン、見てくれ。この拠点を作るのに金を出したやつの仲間だ。リストを送る。」


「スノー、情報と一致したよ。ホテルの料亭によく集まってるらしいから、潰そう。ヴァルがピックアップに向かってるから待っててー。ナイスワーク!」


他のメンバー達からもナイスワークのスタンプがスノーとビクトールに送られた。


⭐️


続く。

絵:クサビ

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