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王宮の大舞踏会に足を踏み入れた瞬間、割れんばかりの歓声と、何百人もの貴族たちの視線が私たちに突き刺さった。
「おい、見ろ……オブシディアン公爵夫妻だ……」
「なんて美しい……。それに、噂は本当だったのだな」
「冷酷無比な公爵様が、あんなに愛おしそうに奥様を見つめるなんて……」
「あのルシアナ様が、旦那様の命を何度も救ったという『戦女神』だそうだぞ。今や公爵邸の警備を仕切っているという噂だ」
……ちょっと待って。最後の噂、何?
私はただの、一刻も早く未亡人になりたい限界OL上がりの令嬢なんですけど。
貴族たちの間を通り抜けるたび、かつてはルシアナを「高慢な悪女」と蔑んでいた令嬢たちも、今や羨望と畏怖の眼差しを向けてくる。人間、実績(勘違いだけど)があると、こうも評価が変わるものなのか。
国王陛下への挨拶を無難に終えた後、ルファスは他の有力貴族たちに囲まれ、社交の渦に巻き込まれていった。
「少し席を外す。ルシアナ、俺の目の届く範囲にいてくれ」
「ええ、もちろんですわ。私はあちらのバルコニーの近くで、冷たいお飲み物でもいただいております」
私は淑やかに微笑み、彼を送り出した。
さあ——ミッションスタートだ。
私は給仕のトレイから、ルファスが好む、最高級のヴィンテージ赤ワインが注がれたグラスを二つ、極めて自然な動作で受け取った。昨夜必死に脳内シュミレーションをしていた成果だ。
そして、人混みに紛れ、バルコニーのカーテンの陰に隠れる。
周囲の目を盗み、ドレスのポケットから『千日草の根の粉末』を取り出すと、片方のグラスに素早く投入した。粉末はワインの深い赤色に溶け込み、一瞬で消え去る。
「ふふふ……これでお前は終わりよ、ルファス。このワインを一口飲めば、お前の最強の肉体はただの動かない肉塊と化す。その後は、あの美しい『底なしの魔力池』へ、招待してあげるだけ……!」
私は勝利を確信し、冷酷な笑みを浮かべた。
バルコニーの外を見ると、美しい月明かりに照らされた庭園が広がっており、その中央には、魔力を吸い取るという、怪しく紫に光る「底なしの魔力池」が静かに水を湛えていた。ロケーションも最高だ。
承知いたしました。王太子のキャラクター設定をゲーム本来の形に修正し、第1話・第2話と同様の「いつもの王道な暗殺未遂・勘違い・周囲の祝福」の黄金パターンへ後半部分をリライトいたします。
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### 第3話(後半リライト)「王宮の夜会と、魔力池が紡ぐ特大の勘違い」
国王陛下への挨拶を無難に終えた後、ルファスは他の有力貴族たちに囲まれ、社交の渦に巻き込まれていった。
「少し席を外す。ルシアナ、俺の目の届く範囲にいてくれ」
「ええ、もちろんですわ。私はあちらのバルコニーの近くで、冷たいお飲み物でもいただいております」
私は淑やかに微笑み、彼を送り出した。
さあ——ミッションスタートだ。
私は給仕のトレイから、ルファスが好む最高級の赤ワインが注がれたグラスを二つ、自然な動作で受け取った。そして、人混みに紛れてバルコニーのカーテンの陰に隠れる。
周囲の目を盗み、ドレスのポケットから『千日草の根の粉末』を取り出すと、片方のグラスに素早く投入した。粉末はワインの深い赤色に一瞬で溶け込み、姿を消した。
「ふふふ……これでお前は終わりよ、ルファス。このワインを一口飲めば、お前の無駄に強靭な肉体はただの動かない肉塊と化す。その後は、あの美しい『底なしの魔力池』へ、重力に従って落ちていくだけ……!」
バルコニーの外を見ると、月明かりに照らされた美しい庭園が広がっており、その中央には、怪しく紫に光る「底なしの魔力池」が静かに水を湛えていた。ロケーションも最高だ。
グラスを持ってバルコニーへ出ると、そこには先客がいた。
眩い金髪を上品に整えた、絵画から抜け出してきたかのような端正な顔立ちの青年。この国の第一王太子であり、乙女ゲーム『星祈』のメイン攻略対象であるカイル・ド・アステリア殿下だ。
「おや、オブシディアン公爵夫人。一人で涼みに来られたのかな?」
「これは、王太子殿下。ご挨拶が遅れまして失礼いたしました」
私は慌ててカーテシーを披露する。ゲームの彼は生真面目で正義感の強い、非の打ち所がない完璧な王子様だ。変に目を付けられるわけにはいかない。
「いや、構わないよ。噂はかねがね聞いている。冷徹な公爵が、あれほど熱烈に妻を愛するようになるとはね。先ほど遠目に見ていたが、君たちの仲睦まじい様子は、まるで神話の恋人たちのようだった。素晴らしい奥方を得た公爵が羨ましいよ」
カイル王太子は嫌味なところなど微塵もなく、爽やかで紳士的な笑みを浮かべてそう言った。さすがはメイン攻略対象、性格までイケメンである。
「もったいないお言葉ですわ、殿下」
「では、私は中でまだ社交が残っているから失礼するよ。良い夜を、公爵夫人」
王太子は綺麗に一礼すると、そのままスマートに会場へと戻っていった。よし、これで障害は消えた。
数分後、貴族たちをあしらったルファスが、まっすぐに私の方へと歩いてきた。
「待たせてすまない、ルシアナ。やはり君のいない空間は、俺にとって退屈極まりないな」
「お疲れ様でした、旦那様。喉が渇いたでしょう? このバルコニーでご一緒に涼みましょう」
私は最高に可憐な微笑みを浮かべ、彼を「底なしの魔力池」が見下ろせるバルコニーの手すり際へと誘導した。そして、麻痺薬が仕込まれた方のグラスを彼の前に差し出す。
「旦那様のために用意いたしましたの。どうぞ」
「君が俺のために……? ああ、嬉しいな。ありがたく頂こう」
ルファスは嬉しそうに目を細め、グラスを受け取る。




