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7話 理由はそれだけ?

 一体どういう意味だ。ガチ恋しなさそうだからって。

 全く予想もしてなかった理由が出て、少し・・・いや、かなり戸惑った。


「楽になりたいから、付き合うふりをするのに、相手が私のことガチで好きになっちゃったら困るでしょ。そうなると、別れたくなるけど、「別れよ」って言うのはちょっとわがままっぽくて言いづらいんだよ」


 今でも十分わがままだと思うけど。


「だから樽井くんなんだ。樽井くんなら絶対あたしを好きにならないと思うから」

「なんでそんなに確信を持てるんだ」

「本当のあたしを知ってる人は樽井くんだけだから」

「は?」

「あたしの性格を知ってて好きになってくれる人なんてこの世にいない。樽井くんだってそうでしょ」


 それはまあそうかも。相澤さんの真の姿を見て好きになる人がいたら、その人は多分聖人、または相澤さんのことが大好きでどうしようもないくらいの人しかいないだろう。


「だからさ、あたしと付き合って、樽井くん」

「やだ」

「また即答かよ」


 相澤さんは呆れたように目を半分閉じて見つめた。


「なんで。あたしがめんどうくさい女だから?」

「どういうこと」


 めんどうくさい女? いきなり?


「昨日樽井くん言ってた。あたしと付き合ったらめんどうくさくなりそうだって」

「俺が?」


 そう言ったっけ。そう言った気もするけど・・・。


「あたしはっきり覚えてる。「相澤さんと付き合ったら面倒臭くなりそうだから、嫌だ」って言ってた」


 あ、確かに言った。でもそれはーー


「別に相澤さんがめんどうくさい女って意味で言ったわけじゃない」

「え、じゃどういう意味で」

「相澤さんと付き合ったらめんどうくさい状況になりそうって意味で言ったんだ」


 相澤さんは目を丸くして首を傾げた。


「相澤さんと付き合うことになったら注目されるし、「ガチで付き合ってんの」って聞かれるのが面倒臭いからああ言ったんだ」

「それってあたしがめんどうくさいってわけじゃないよね?」

「まあな」


 めんどうくさいって言うほど親しいわけでもないし、相澤さんのせいで今日は大変だったが、相澤さんに声しかけられ話すのが面倒臭いだなと思ったことはなかった。


「そっか。よかった」


 相澤さんは小さく呟きながら息を吐いた。何がよかったって言うのかわからないけど、一旦聞いてないふりをした。


「それよりこれどうするんだよ」

「これって?」


 相澤さんは何言ってるのかさっぱりわからないと言わんばかりに首を傾げた。


「学校に広まってるこの噂だよ。どうやって収めるつもりだ」

「あ、それね」


 まるで自分とは全く関係ないかのような口調だった。


「今でもあの噂は嘘だってみんなに言えば」

「無理じゃないかな」

「え?」

 

 無理って、一体なんで」

 俺一人で否定するのは流石に限界がある。けど、相澤さんも一緒に嘘だと否定すればきっと効果あるんだと思った。噂の当事者である二人が違うって否定するのに、噂がガチだって言い張る奴はいないはずだから。


 あと男子たちは内心この噂が嘘であってほしいと願っていそうだし。


「なんで無理って言うんだ」

「ふーん、樽井くんのせいかな」

「・・・俺?」


 俺のせい? 俺が何したっつんだ。


「十分前だったらできたかもしれない。でも今はもう手遅れだよ」


 相澤さんは首を横に振りながら言った。


「手遅れってどういう」

「さっき教室で樽井くんがあたしの手を引いて出ていったでしょ。みんな見る前で。廊下でもずっと手を引いて歩いてたし、みんなが見てるのに。なのに今更付き合ってないって言っても信じてくれる人はないんじゃないかな」

「・・・・・・・」


 なんて言い返す言葉がなかった。立場が逆だったら俺も信じないだろう。目の前で手を繋いでどこかに歩いていく姿を見たのに、後で実は付き合ってないって言われたら誰だって信じないだろう。バカにしてると思われなければいいくらいだった。


「じゃどうすんだ」

「ふーむ、噂を本当にしちゃお」

「本当に付き合うってことか」

「うん」

「だから嫌だってば」

「いや、なんでだよ」


 相澤さんは納得いかない顔で言った。


「樽井くんもしかして恋愛に変な理想でも持ってるの? たとえ初恋愛だからガチで好きな人と付き合いたい、とか」

「そんなのねぇよ。あと、なんで初恋愛だと勝手に決めつけるんだ」

「じゃ恋愛経験ある?」

「それは・・・ないけど」


 恋愛経験ゼロなのは事実だが、なんかムカついた。あと、初恋愛だからガチで好きな人と付き合いたいとか、そんな乙女っぽいあな理想、考えたこともないし願ったこともない。ただ俺が相澤さんと付き合いたくないのはーー


「同じこと何度も言わせるな。相澤さんと付き合ったら面倒臭いことになりそうなんだ。今日だってたくさんの人々に振り回されてしんどかったんだ!」


 思い出すだけで吐き気がした。名前だけ知ってる奴らから、廊下で顔見たことあるやつ、名前も顔もわからない初めて見るやつまで、「ガチで付き合ってる?」って同じこと何度も聞かれてしんどかった。


「あたしの方がよっぽど多かったよ。樽井くんの何倍は多かった」


 それは否定できない事実だった。


「とにかくやだ。また「相澤さんと付き合ってんのか」って聞かれるに決まってるから」

「ふーん、断る理由はそれだけ」

「今のところでは」

「なにそれ。じゃそれだけ解決せれば付き合うってことだよね?」


 相澤さんがニヤッと笑った。可愛くて見る人をドキドキさせるような笑顔、だと他の人は思うんだろうが、俺は違った。


 なんだ。あの笑み。不安になる。

 昨日「付き合って」って俺に言った時と同じ顔だった。もう相澤さんの笑顔を見ると、自然に不安になる。まるでトラウマみたいに・・・。


「じゃ行こう」


 突然相澤さんは手を差し出した。

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