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47話 どこに惚れた

窓の向こうから相澤が目を細めてこちらを睨んでいた。俺と山田さんは二人でご飯を食べているし、普通のカップルがこの光景を見かけたら、浮気かよって大騒ぎになりそうな場面dなった。


 俺と相澤は本当の恋人じゃないから、そんなことにはならないと思うけど。

 でも、今の状況についてはちゃんと説明しないとすごく面倒なことになりそうだ。俺は再び相澤の方へ顔を向けた。


「あれ、いない」


 さっきまでそこに立っていたはずの相澤の姿が、跡影もなく消えていた。


 見間違いだった? と思いつつ辺りを見回す。すると、店の入り口から相澤が入ってくるのが見えた。相澤は店員さんににこやかに挨拶し、俺と山田さんのいる席へつかつかと歩いてきた。


「こんなとこで何してんの? ()()()

「こ、琴音ちゃん、こ、これはねぇ・・・」


 山田さんは怯えているのあ、言葉を吃らせた。相澤もまた冷たい目で山田さんを見下ろしている。


 山田さんの前なのに、あんな眼差し大丈夫か。そうして素の姿バレちゃったらどうするつもりなんだ。

 少し心配になった。そういや前にもこんなことあった気がする。確か、一緒にテスト勉強をしてた時、山田さんが俺に「かわいい」って言って相澤が今みたいな冷たい目で山田さんを見つめてたことがあった。それを思い出すと、山田さんがあんなふうに震えているのも少し理解できた。


 俺が弁解しよう。

 普段なら口を挟まないけど、今ここでちゃんと説明しておかないと、後で相澤に色々言われるかもしれない。だから今はっきり言っておこう。


「相澤、君が思ってるようなことじゃないよ」

「じゃあなんで二人で一緒にいるんだ」


 相澤は勢いよくこちらを振り向いた。

 別に悪いことなんて何一つもしてないのに、なぜか謝らないといけないような視線んい圧倒させかけたが、どうにかきを取り直して言った。


「山田さんが恋愛相談したいって連れてこられたんた。飯奢るって言われてついてきた、それだけだよ」

「嘘」


 俺の言い終わるや否や、相澤は否定した。


「嘘じゃない」

「百パーセント嘘だ。だって樽井に恋愛相談を申し込むなんて、ありえない。小学生に相談する方がまし」


 否定できなかっt。常識的に考えて、俺に恋愛相談を持ちかけるなんて、嘘みたいな話だった。


「でも本当なんだ」

「本当に?」

「うん」


 圧をかける相澤の問いにも、俺は引かなかった。引く理由なんてなかった。だって事実なんだもの。


「わかった。信じる」


 相澤は俺と山田さんを見つめ、やがて頷いた。幸いにも信じてもらえたようだ。・・・でも、そこまで怒る演技する必要あった?


「その代わりに」


 ん? 代わりに?


「その恋愛相談、私にも聞かせてよ。いいよね、由依ちゃん?」

「ん? あ、うん。もちろんだよ」

「じゃあ何食べようかなー」


 相澤は俺を奥へ押しやって隣に座った。そしてニコニコしながらメニューを開いた。


「由依ちゃんの奢りだし、高いやつにしよーっと」

「え、待って。琴音ちゃんの分まであたしがおごるの?」

「私も一緒に相談に乗るんだから。まさか樽井だけに奢るつもりだった?」

「いやっ、それは違うけど・・・はぁ、わかったよ。奢ってやるよ。お小遣い足りるかな」


 山田さんは財布を取り出し、中の紙幣と小銭を数え始めた。


「由依ちゃん、冗談だよ。私もうお昼食べたし、コーラだけ頼むよ」

「あ、コーラならいくらでも奢る」


 沈んでいた山田さんの表情が、元気に戻った。

 相澤がコーラを注文すると、すぐに運ばれてきた。相澤はストローでコーラを吸ってから、山田さんに尋ねた。


「まさか由依ちゃんが恋愛相談なんて意外でびっくりしたわ。好きな人でもできた?」

「いや、そういうんじゃないよ」

「じゃ彼氏でもできた?」

「・・・うん」

「え?」


 まあ初めて聞いたらそういう反応になるよな。

 相澤は自分で聞いて驚いた表情を浮かべた。さっきの俺と全く同じだった。

 山田さんはさっき俺に話してくれた話を相澤にも語ってくれた。コーラを飲みながら静かに話を聞いていた相澤は、グラスを置きながら言った。


「そういうのなら最初から私に相談すればよかったのに。樽井は何もわかってないよ」

「うん。本当に何もわかってなかったよ」


 山田さんがチラッと俺を睨んできた。

 だから最初から言っただろ。俺じゃ役にあ立たないって。


「で、樽井に何聞いてた」

「相澤のどこが好きで付き合ったのかって」

「へえ、それでそれで? 樽井なんて答えたの」

「何も答えなかった。人それぞれだから参考にならないんだって答えを避けたよ」

「樽井?」


 相澤が俺を見た。相澤の声にイライラが滲んでいた。山田さんに見えない角度で、「ちゃんと彼氏ふりしな、このばかやろ」って顔で語っているような気がした。


 いや、じゃあなんて答えればいいんだ。そう言い返そうとしたが、相澤はもう山田さんの方へ顔を向けていて言えなかった。


「多分樽井が照れ臭くて答えられなかったみたいだよ。前私が聞いた時「優しくて可愛いから好き」と答えたよ」

「へえ、そうなんだ」


 ・・・・・・? 俺が? いつそんなこと言った?

 俺の記憶が間違ってなければ、そんなこと一度も口にしたことない。


「じゃあ、琴音ちゃんは樽井のどこが好きで付き合ってるの」

「え、私?」

「うん。告白したのも相澤の方なんでしょ。一体樽井のどこに惚れて告白したの? どう見てもモテそうな要素はないんだけど」


 ぐっ、なんで急に俺への攻撃になるんだ。


「うーん、私はねーー」


 相澤は意味ありげな目で俺を見つめた。

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