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46話 二人で何してんの

「好きな人はないのに、彼氏ができたってこと?」

「うん」


 マジでどういうことだ。好きでもないのに彼氏ができるなんてそんなことあり得る? ・・・あ、俺も似たもんか。好きでもないのに相澤と付き合ってるから。でも、俺と相澤はお互いの利益のためだから納得できるけど、山田さんもそういう感じなんだろうか。


「好きでもないのに、なんで付き合ってるんだ」

「勝負に負けて」


 勝負?

 俺は首を傾げた。


「前に話したの覚えてる? 健太とテスト点数で勝負したって」


 言われて思い出した。山田さんが全科目赤点回避できたらなんでも言うことを聞く代わりに、もし一科目でも赤点を取ったら、山田さんが健太っていう人の言うことを聞くっていう勝負だった。


「覚えてるけど・・・まさかそこが原因で付き合ってるわけ?」

「うん」


 山田さんはゆっくり頷いて言葉を継いだ。


「成績が出た翌日、健太と一緒に帰ってた。赤点一つだけだったから勘弁してくれって頼んだんだけど、絶対ダメって頑なに断られたの。こんなこと一度もなかったのに」

「それで?」

「仕方なく負けを認めて、お願いを言ってもらった。そしたら「俺と付き合ってほしい」って言われて。最初は冗談だと思って嫌だって言ったんだけど、勝負に負けたら素直に言うことに従えって押し切られて」

「それで付き合うことになったわけ?」


 山田さんはコクリと頷いた。


「ちゃんと断ればよかったじゃん。好きじゃないって」

「断りづらい雰囲気だったし、断って健太と気まずくなるのは嫌だ。あと、健太ならいいかなって思って、それで付き合うって言っちゃったんだ」


 それってほぼ好きってことじゃない? この人となら付き合えると思える時点で、もう異性として好意があるのと変わらない気がした。


「それでね、樽井に聞きたいんだけど。樽井は相澤のどこが好きで付き合おうと思ったの?」


 山田さんの問いかけに、危うくコーラを吹き出しそうになった。なんとか飲み込んで答えた。


「な、なんでそんなこと聞くんだ」

「だって樽井は相澤のことが好きで付き合ってるんでしょ。どんなところに惹かれて付き合ってるのかわかれば、健太があたしを好きな理由のヒントになるかなって」

「いや、それとこれは関係ないだろ。人それぞれタイピってもんがるあるし。あの健太って人のタイプなど俺はわからないんだ」

「確かに・・・。でも教えてよ。ヒントになる気がするんだよ」「その・・・嫌だ」


 俺は視線を逸らしながら答えた。だってその質問には答えられないんだ。照れくさいkらじゃなくて、本当に答えられる質問ではなかった。俺は相澤のことを本気で好きで付き合ってるわけじゃないから、「こういうことが好きだ」とか「顔が好きだ」なんて言えない。


「じゃあ、告白した時はどうだった? ドキドキした?」

「告白はあっちがしたので、わからない」

「あ、そうだった。忘れてた」


 この恋愛は相澤の告白で成り立ったことになっている。まあ実際相澤が付き合おうって言い出したのは事実だから、嘘ではない。


「それじゃもうすふあの子の誕生日だけど、何をあげたらいい?」

「それは人に夜からわからない」


 プレゼントっていうのは、その人のことをわかってから選べるものだと思う。俺はあの健太っていう人を見たこともないから、なんてアドバイスできない。


「じゃ、男子ってどんなプレゼント貰ったら嬉しいの?」

「うーん、なんてはっきり言えないな。人によってそれぞれ違うから」

「なにそれ、全然役に立たないじゃん」

「だから、最初からそう言ってるだろ」


 最初から何度も言ったはずだ。俺でいいのかって。それでもいいから相談に乗ってほしいって言ったのは山田さんの方だ。だから俺は何も悪くない。


「最悪、詐欺だよ。こうなると知ってたら樽井にーーひいぃっ!」


 突然、山田さんが変な悲鳴を上げ、顔を青ざめた。

 お化けでも見たのか。なんであんな顔を。


「た、樽井、あ、あそこ・・・見て」


 山田さんが俺の後を指さした。「何を見たんだよ」と思いながら振り返った。俺が座った席の後ろには書店街が見えるガラス窓があった。そして、ガラスの向こうに見える長い金髪の少女。


「・・・・・・相澤?」


 クラスの越しに、相澤がこちらっていうか山田さんをじっと見ていた。


「二人で何してんの」


 店内で相澤の声は届かなかったが、口の動きからそう言ってるのが読めた。顔は笑っているが、なぜかおでこに怒りマークがつけているのが見える気がした。


 ・・・あ、これが原因だったな。

 山田さんがあんな反応をした理由が少しわかった気がした。

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