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38話 一緒に帰ろか

 相澤とテスト勝負をしてから、一週間が経った。相澤は言ってた通り、あの日以来勉強会はなくなったため、放課後は一人で帰るのが日常になっていた。


 いや、日常っていうか、元々一人で帰ってたんだから、ようやく元に戻ったっていう方が正しいかも。

 それなのに、なぜか気分は晴れない。相澤と一緒に帰ることに慣れてしまったせいだろうか、相澤いないと静かで喋ることもないせいだろうか、どこか少し寂しい。


 いつも隣でうるさく喋っていたから。

 うるさい奴がいつも隣で喋ってたのに、急にいなくなるとなんか変な感じがした。


「そのうち慣れるだろ。それよりさっさと帰ろ」


 俺は学級日誌を手に取って席を立った。今日は日直だったため、いつもより帰るのが遅くなった。

 俺は鞄を肩にかけて教室の電気を消し、職員室へ向かった。先生に学級日誌を渡した。

 先生に軽くお辞儀して職員室を出た。職員室のドアの前で、小さくため息をついた。


「疲れた。早く帰ろ」


 なかなkハードな一日だった。テスト期間に加えて日直も重なって、やたらと忙しかった。

 まあ勉強はしてないけど。


「そういや、相澤まだ勉強してるのかな」


 相澤は勝負に勝つって前よりずっと真面目に勉強に取り組んでいた。そこまでしなくても、俺よりいい点数取れると思うが。


「ちょっと様子見ていくか」


 今日はあのカフェの休業日なので、多分学校の図書室で勉強しているはずだった。図書室は校門とは逆方向だけど・・・・・・


「・・・・・・顔だけ、顔だけ見て帰ろ」


 図書室まで五分もかからないし。様子だけ見て帰るから。

 このまま帰ると、相澤のことが気になりすぎて面倒くさくなりそうだった。そのようなことを防ぐために、俺は図書室へ足を向けた。


 しばらくして図書室に着き、ドアの小さな窓から中を覗いた。


 相澤は・・・・・・いないか。

 相澤の顔ならすごく目立つから見つかりやすいのに、ここでは見えなかった。


「中に入ってみるか」


 ここまできて引き返すのはなんだか惜しくて、俺は図書室に入ることにした。図書室に入ると、本の匂いが鼻を突いた。

 先週より人が多い。来週がテストだから、追い込みで勉強しにきている人が多かった。


「相澤は・・・あ、あそこにいる、けど」


 寝てるのか。

 相澤は机に突っ伏していた。近くてみると、目を閉じて静かに寝息を立てていた。


 勉強するって言って、寝てるのかよ。

 必死に勉強して疲れて寝てるのか、それともただ眠くなっただけなのかは分からない。


 ノートのあれはなんだ。

 枕になってしまった教科書の横には一冊のノートが開きっぱなしになっていた。ノートには綺麗な字で二つの文章が書かれている。


  I must win this bet.

  I have to study for the test.


 どういう意味だ、これ。


「・・・ぜったい勝つ」


 微かに相澤の寝言が聞こえた。勝つって多分俺との勝負のことだろう。


「そこまで頑張らなくても、君の勝ちだってば」


 そもそも俺は、この勝負をほとんど諦めていた。相澤の願い一つ聞いてあげよう、と最初から思っていた。だから、勉強もせず、いつも通りダラダラ過ごしていた。

 だから、相澤も適当にやればいいのに。


「一体俺に何させる気なんだ」


 ここまで必死だと、逆に怖くなるほどだった。


「・・・・・・まあいいか。様子も見たし、帰ろ」


 俺はドアの方へ向かおうとした。しかし一歩踏み出した瞬間、相澤のことが足を引っ張った。


 せっかくだし、一緒に帰ろか。もうすぐ閉館時間だし。

 そう思って、俺は振り返って相澤の向かいの席に座った。


「よく寝てるな」


 起こすのが悪くなるくらい、ぐっすり眠っていた。俺は机に肘をつき、静かに寝ている相澤をぼんやり眺めた。


 それからどれくらい時間が経っただろうか。生徒たちは一人、また一人帰っていき、気づけば俺と相澤だけになっていた。窓の外は赤く染まっている。


 もうす閉館時間だし、そろそろ起こそうか。

 俺は相澤に手を伸ばした。軽く揺すって起こすつもりだった。相澤の肩に手を触れようとした瞬間、いきなりパッと相澤が顔を上げた。相澤は眠そうに目をこすりながら、大きなあくびをした。


「寝ちゃった・・・ん? 樽井?」


 眠くてよく見えないのか、眉間に皺を寄せてこっちをじっと見た。まだ寝ぼけてる彼女に俺は言った。


「おはいよ、よく寝た?」

「どうして樽井がここに。これ夢?」

「久しぶりに君と一緒に帰ろと思って」


 久しぶりというには、一週間ぶりだけど。

 相澤はまだこの状況が飲み込めていないのか、きょとんとした顔をしていた。


「それより早く片付けて。もうすぐ閉館時間なんだから」

「ん? あ、わかった」


 相澤は急いで教科書とノートを鞄にしまい始めた。最後に蛍光ペンとシャーペン筆箱に入れて、鞄にしまった。相澤が片付け終わるのを見て、俺は隣の椅子に置いた鞄を肩にかけて立ち上がった。


「じゃ帰ろ」

「うん」


 続いて相澤が鞄を肩にかけて立ち上がった。それから俺と相澤は図書室を出て廊下を歩き学校を出た。

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