34話 勉強しすぎちゃった
翌日の朝。いつも通り教室に座っていた。
相澤はまだ登校してないのか。
昨日、様子が少し変だったので、気になっていた。別に怒っているようには見えなかったのに、急にあんな冷たい声を出したわけがずっと引っかかっていた。
何が失言でもしたっけ。
昨日特に相手が気分を害するようなことは言ってないと思う。じゃ一体なぜ?
いくら考えても理由がわからない。
「ただ疲れただけかも」
昨日三時間以上を勉強してたから、疲れていた可能性も十分にあった。
しかし、なんか原因は俺にある気がするんだよな。
理由はわからなかった。だけど、そんな気がした。だって、勉強が終わった後にも、いつもと変わらなかったから。
「はーあ、一体なんなんだ」
頭を抱えて唸っていると、教室の後ろから聞き慣れた声がした。
「昨日、カフェで勉強してた」
相澤の声だった。彼女の声が聞こえた瞬間、すぐに振り返ってしまった。
いつもと同じだと思うが・・・あ、目が合った。
相澤が小さく手を振って「おはよう」と口パクで伝えてきた。俺も手を振り返した。そうやって挨拶を交わした後、相澤は友達と一緒に自分の席へ向かった。
いつもと同じ様子。どうやら気にしすぎていただけかもしれない。
昨日のことはもう考えないことにした。
授業が終わった後、いつものように相澤は俺のせきにやってきた。
「勉強しに行こ」
俺は頷いて立ち上がった。俺と相澤は昨日行ったカフェへ向かった。そこで黙々と勉強をした。昨日はわからない問題を聞かれたが、今日は聞かれなかった。数学の勉強をしていたが、どうやらわからないのがなかったらしい。むしろ、数学以外の科目を聞かれたらわからない可能性が高いので、それはそれで良かったとも言える。
昨日と同じように勉強会は約束した六時を少し過ぎてから終わった。俺と相澤は店を出て家へ向かった。
「送ってくれてありがとう」
「え? なんだ。なんで俺がここに」
また考え事をしながら歩いていたため、相澤の家まで来たことに気づかなかった。
まあいいか。どうせ家まで送るつもりだったから。
デートの時とは違って夜も暗いから、家まで送るつもりだった。それに前にも同じことがあったから、別にやられたという気持ちにもならなかった。
「あ、それと明日は学校の図書室で勉強しよう」
「なんで」
あのカフェ、静かで集中できていいのに。それに今はテスト期間だから、図書室は人が混んでるはずだ。
「明日はあのカフェ、休みなんだから」
「それなら仕方ないな」
勉強のために店を開けてもらうわけにはいかない。っつか相澤、あの店の休みまで知っているのか。よく行くのかな。
「じゃ、またね」
相澤は手を振って家の中へ入っていった。それを見届けてから俺も家に帰った。
そして翌日の放課後。俺と相澤は図書室へ向かった。テスト期間だから人が多いと思ってたが、意外にも図書室はそれほど混んでいなかった。
うちの学校は勉強する人が少ないのだろうか。などと疑問に思いながら席に鞄を置き、向かい合って座った。そして、俺と相澤は何も言わず静かに勉強を始めた。
まずいな。勉強しすぎちゃった。
この二日間で相澤と勉強したおかげっていうか、必要な分はすでに終わってしまって勉強することがない。この程なら赤点は絶対に取らないので、それ以上勉強する必要はなかった。
何をすればいいんだ。何をして時間を潰すんだ。
向かいの相澤は真面目に勉強しているから、邪魔になっては行けない。そうなるとやれることはない。机に突っ伏して寝るのも迷惑だし、スマホをいじるのも邪魔になるに違いない。落書きや本を読むのも邪魔になりそうだ。これじゃ帰るしかないのか。でも、どうやって?
一人でそんなことを考えていると、図書室の入り口が騒がしくなった。
「それでさ、今日は・・・・・・あれ? 琴音ちゃん!」
相澤の友達だった。真っ先に立っていた山田さんが嬉しそうに手を振り、相澤に抱きついた。
「琴音ちゃん今日は彼氏と勉強するって言ってなかったっけ」
「由依ちゃん彼氏ならあっちにいるよ」
田中さんが俺を指さした。
「え、樽井くんいたんだ」
さっきからずっといたんだけど、と言いたかったが、白井さんにタイミングを奪われてしまった。
「琴音ちゃん、今日はここで勉強するの?」
「うん。いつもの店が休みで」
「そうなんだ」
「じゃあ、うちも混ぜてくれ」
田中さんが相澤と白井さんの間に割り込んできた。
「それいいね!」
「いいの? 琴音ちゃん」
「いいよ」
相澤は優しく微笑んで頷いた。許可が出ると、四人は楽しそうに俺と相澤の周りに鞄を置いて座った。
・・・ちょっと、俺の意見は? まあ別に一緒でもいいけど、俺はまだ何も言ってないんだぞ。
「あ、樽井くん、ごめんね。一緒に勉強してもいい?」
相澤の隣に座った白井さんが聞いてきた。
まあいいか。俺の勉強はとっくに終わったし。どうせ相澤の勉強が終わるまで待つだけだから。
「いいよ」
「ありがとう」
こうして、相澤と俺の勉強会に第三者が参加することになった。




