25話 ポーズ
「中でなんかあった?」
「ごめんごめん。ちょっと並んでてさ」
並ぶほど人いたっけ。そんなにいなかったと思うんだが。
よく思い出せない。そもそも周りをそんなに注意して見てなかったから、覚えてないのも当然か。
「で、これから何するんだ」
「あたしもわかんない」
「は?」
なんだそりゃ。わからないって。デートプランは君が建てるって言ってただろ。みたいな言葉が喉まで上がってきたが、のんびり笑っている相澤を見ると、妙に自分だけ熱くなっているような気がして、呆れてしまって言わなかった。
「まあいいじゃん。計画なんてなくても」
それはこっちのセリフだと思うんだが。
「やることがなければ、このままバイバイするのも悪くないしさ」
「マジで言ってる?」
「いや、嘘」
チッ。帰れるところだったのに。
「プッ、冗談だよ。ちょっとここら辺を回ってみて、それでもやることがなけえrば、その時は本当にバイバイしよう」
悪くない提案だったので、相澤の言葉通りにすることにした。
俺と相澤は並んで歩き出した。デートなんてしたことないから、店やカフェみたいなところを見ても、入ってもいいか、入って何をすればいいのかわからなかった。
「特にやることないね」
ちょうど相澤が独り言を呟くのが聞こえた。俺はこの機会を逃さず、一言付け足した。
「だろ? 仕方ないが、ここで解散することにしーー」
「あ! あっち! あっち行こう!」
あ、帰れるチャンスだったのに。
相澤は何かを見つけ、飛び上がらんばかりに興奮して、前にあるビルを指差した。
あれは・・・ゲーセン? ゲームしたいのか。
「早く行こう」
相澤はウキウキしながら小走りでゲーセンへ向かった。前に相澤に言われたように、選択権のない俺は相澤について行った。
ゲーセンの一階はクレーンゲーム機でいっぱいだった。しかし、相澤はクレーンゲーム機などは眼中にないといった様子で、目向きもすぜに通り過ぎていった。
クレーンゲーム機の並びの間を歩いているうちに、少し奥まったところに来ていた。相澤は「ここだ」と言わんばかりに足を止め、前を指さして振り返った。
「あたしたち、これやろう」
相澤が指差したところには、四角くてカーテンで入り口が隠れているぽっクスみたいなものがあった。
あれってプリクラ撮るものじゃ・・・。
「前、梨花と撮ってこれ撮って見たけど、楽しかったんだ。あたしたちもこれ撮ってみようよ」
プリクラ。聞いたことはあるけど、一度も撮ったことなかった。前に雛が一緒に撮ろうって言ったことはあるが、写真撮るのあまり好きじゃないから断った記憶がある。
「俺は写真撮るのあんまり好きじゃないから・・・え? 相澤?」
さっきまで俺の前に立ってたのに、どこへ行ったんだ。・・・え、いつの間にあっちへ?!
入り口を隠しているカーテンの間に相澤が立っているのを見つけた。相澤は片手でカーテンを掴みながら、もう片方の手で「こっちおいで」と言わんばかりに手招きしていた。
「早くこっち来て」
「いや、写真はあんまり・・・おい!」
俺の話まだ終わってないのに、中に入ってしまった。
同衣装。写真あんまり撮りたくないのに。
でももう入ってしまったから、置き去りにすることはできない。
「は、仕方ないな」
やる気は出ないが、トボトボ歩いてボックスの中に入った。
中狭っ!
外から見た時はかなり広く見えたが、中はsの半分もないくらい狭かった。俺と相澤二人でいっぱいになるほどだった。多分、機会が大きからだろう。
「早く来てって言ってたのに、聞こえなかった?」
「俺は写真撮るのあんまりーー」
「とにかくあたしが設定しといたから、樽井はポーズ取ればいい」
いや、話は最後まで聞け!
写真撮るの好きじゃないから、撮りたくないって言いたが、隙を与えてくれない。俺が何を言おうとすると、相澤がすぐ遮った。
今度こそ言おう。
「あのさ、俺は写真ーー」
声を出した瞬間、プリクラ機からかわいい声がして俺の言葉を遮った。
「始まる。ほら、あっち見て」
相澤は楽しそうにカメラレンズを指さした。プリクラ機の画面に俺と相澤が並んで映っていた。
だから撮りたくないのに。
画面に映っている俺の姿を見るのが本当に気恥ずかしい。それだけじゃなく、どんな表情をすればいいのかもわからない。普通写真を撮る時は笑えと言うけど、それ一体どうやってやるんだ。笑えることは何もないのに、どうすれば自然に笑えるんだ。
「樽井ポーズ取って」
ポーズ。何をすればいいんだ。うーむ・・・相澤のポーズを真似すればいいかな。
横目で相澤を見た。顔の横でピースサインをして、自然に微笑んでいた。とりあえず相澤の真似してピースサインをしてみた。
こうして一枚撮れたのか、機会からパシャッと音がした。そして休む暇もなく次の撮影が続いた。
「樽井さっきと違うポーズで」
「ち、違うポーズ?」
他に何があるんだ。ああ、わからん。また相澤の真似しよう。
さっきみたいに相澤をチラッと見た。手を前に出して、逆さピースしていた。今回も俺は相澤を真似して、逆さピースをして見た。やげてパシャッっと音がした。突然、相澤が笑い出した。
「プフッ」
「いきなりなんで笑うんだ」
「いや、なんでもないよ。それより次のポーズ考えてね」
次のポーズか。やっぱり相澤と同じポーズを・・・!?
さっきみたいに相澤をチラッと見た瞬間、驚いて目を見開いた。相澤が両頬に指をあえて、かわいいふりをしていた。




