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23話 責任は取らないと。

 いかにも突拍子もない問いかけに呆気に取られて一瞬言葉が出なかった。相澤は俺をじっと見つめながら、もう一度尋ねた。


「もしかして、その雛って子のことが好きなの」

「違うってば」


 俺が雛を好きだなんて、馬鹿みたいなことだった。


「雛はただの女友達。好きじゃない」

「マジで?」

「マジで」


 俺はなんの迷いもなく即座に答えた。しかし、相澤は依然として目を細め疑わしそうな顔でこっちを見ていた。


 十年以上知り合いながら、雛を異性として意識したことは一度もなかった。


「雛は家族みたいだ。恋愛対象とかそういう感じじゃないから」

「ふーん」

「それに、もし俺が雛のことが好きだったら、君と付き合うわけないだろ」


 もし万が一、本当に雛のことが好きだったら、相澤と付き合うことなんてなかっただろう。好きな人がいるのに別の女の子と付き合うほど俺は愚かな人ではない。


「じゃあ逆に、雛って子はあんたのことが好きなの?」

「え?」

「だから雛は樽井のことが好きって聞いてるんだ」


 さっきから何わけわからないことを。


「もちろん、雛も俺と同じだと思う。俺を好きになるわけないだろ。雛とはそういう関係じゃないから」

「あ、そう」

「マジだってば」

「わかった。わかった」


 俺が何を言っても、相澤は信じていないような顔をして相槌を打つだけだった。だけど、雛とは本当にそういう関係ではなかった。雛と恋愛なんて。想像したこともないし、したくもない。

 幼稚園の頃からずっと一緒だからかはわからないけれど、雛が何をしても異性として感じたことはなかった。二人っきりの時も、メッセージをやり取りする時も、雛に対して特別な感情が芽生えるとか、そんなことは一度もなかった。そしてそれは多分俺だけじゃなく、雛も同じはずだ。


 あと何より俺はあいつのタイプとは全然違う。それに小さい頃から雛はモテモテだった。だからわざわざ雛が俺なんかを好きになる理由なんてどこにもなかった。


 相澤が突然何も言わずに席を立った。


「どこ行くの」

「お手洗い」


 そう言って相澤は店内のトイレへ向かった。


 なんだろう。怒ったのか。

 なんとなくいつもと違って声がかなり沈んでいた。表情もなんか眉を潜めていて、少しイライラしているようにも見えた。


 まさか、俺が雛に話したことで怒ってるのか。

 実は相澤にきつく念を押されていた。どんなに仲のいい友達でも、この恋愛について言わないでって。


『誰にも?』

『そう、どんだけ親しい人だとしても言っちゃダメ。話が漏れてしまうから』


 っていう理由だった。別に相澤の言うことを無視しようとしていたわけじゃなかった。ただ、相澤に言われるより雛と聡樹に話したのが早かっただけだ。相澤にあれを言われてからは、誰にも話してない。本当に誰にも。

 そもそも聡樹と雛以外にはあんなこと話す相手もいないし。


 相澤はこの話が学校中に広まることを心配しているみたい。そして、それは俺も同じだった。実はこの恋愛が偽りっtえことを学校中にバレたら、本当に手がつけられないほど大変なことになってしまう。まず学校内での相澤への評価が完全に変わってしまうだろう。そうなれば相澤が今まで作り上げてきたイメージは全て水の泡になってしまう。炎上して学校のアイドルから一気に転落してしまうのだ。


 ・・・いや、待って。よく考えてみると、俺に被害なくない?


 多分最初に付き合ってると噂になった時みたいに、誰だからもわからない人たちに声をかけられること以外は、特に被害はなさそうだ。十分に面倒臭いことだが、相澤に比べたら大したことではない。


 でももし俺のせいでバレてしまったなら、責任は取らないと。


 俺には被害がないからどうでもいい。なんて知らんふりをするつもりはなかった。もし、本当に万が一、俺のせいで全てがバレてしまったなら、その時は俺がなんとか責任を取るつもりだ。たとえそれがとても面倒臭いことになるとしても。


「そんなことが起きないのが一番だが」


 そう独り言を呟きながらポテトを口に入れた。もぐもぐと噛んで飲み込むと、相澤がトイレから戻ってきた。


「じゃさっきの話の続きをしようか」


 さっきより声が軽くなっていた。

 なんだただトイレに行きたかっただったか。


「さっきの話って」

「樽井の友達の話。雛って子は大体わかった。他の友達の話しよう」


 他の友達といえば・・・。


「一人いる」

「友達が二人だけ」

「うん」

「これは、話がすぐ終わっちゃいそうだね」


 相澤がポテトを食べながら言った。もうポテトが十本くらいしか残ってなかった。


「まさか聡樹も女の子?」

「いや、男だ」


 普通、聡樹って言われたら男だと思わない?


「どうせそいつにも言ったよね? あたしたちガチで付き合ってるわけじゃないって」

「・・・・・・うん」


 俺はそっと視線を逸らしながら答えた。相澤は予想していたとでも言うように、深くため息をついた。


「そうだと思った」

「ごめん」

「あの子も言いふらさないって信じてるわけ?」

「うん」


 あれ、何も言わないんだ。てっきり雛の時みたいにキレるかと思ったのに。

 その代わり、相澤は腕を組んだままじっとこっちを見つめた。


「で、その聡樹ってどんな子なんだ」

「聡樹は・・・・・・」


 俺は聡樹について話した。相澤は雛の時とは違って、静かに座って俺の話に耳を傾けた。

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