表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/47

22話 あの雛って子が好き?

 映画は終わり、劇場に明かりがついた。突然の眩しい光に、俺は一瞬顔を顰めた。


「あ、おもろかった。よね?」


 隣で相澤が伸びをしながら言った。


「思ったより面白かった」


 映画が予想以上に面白くて、原作小説の内容が気になるほどだった。今度読んでみよう。

 と考えている中、相澤が立ち上がった。


「じゃあとりあえず出よう」


 相澤は空のポップコーンの容器を二つ重ねて持っていた。俺は空のドリンクコップを持って立ち上がった。

 俺と相澤は通路を歩いて下り、出口から出た。出口前のゴミ箱にポップコーンの容器とドリンクコップを捨てて、シネマの方に出た。


 映画は面白かったが、次はどこにいくんだろう。

 少し腹が空いてきた。時間を確認すると、昼飯の時間を少し過ぎていた。


「相澤、昼飯はどこで食べるんだ」

「ふーん、樽井お腹空いてるの?」


 俺は頷いた。


「あたしはあんまり空いてないけど」


 それはお前が俺のポップコーンまで全部食べたからだろ。と言いつけたかったが我慢した。


「まあお腹空いてるなら、軽く食べようか。マックはどう」


 なんでもよかった。食べたいのが特にあるわけでもないし。


「じゃあマックで決まりだね。行こ」


 相澤が先に歩いた。最初と同じように、俺は相澤の後ろをついて歩いた。


 シネマのあるビルのちょうど向かいにマックがあった。俺と相澤はそこに入った。


「何食べる」


 相澤がキオスクの前で俺に聞いた。俺は画面に出ているいろんなメニューを見ながら少し悩んだ。


 簡単にランチセットにしよう。

 幸いにまだランチセットを売っていた。俺はランチセットを押した。


「相澤は頼まない?」

「あたし? あたしは・・・」


 あ、まさかさっきみたいに悩む気か。

 ドリンクバーでの悪夢が頭に浮かんだ。あの時は映画の上映開始時間っていうタイムリミットがあったが、今はそんなものない。つまり、相澤が悩める時間は実質無限にーー


「ポテトとシェイクにする」


 あれ、思ったより早いね。三重ぶんはかかると思ってたのに。


「お会計はあたしがする。お金は後で送って」

「わかった」


 相澤が先に支払ってしまった。

 六百円。覚えておこう。


「じゃあたしは席取っとくから、樽井が持ってきて」


 まあすぐ出るから。

 俺は返事の代わりに頷いた。


 しばらくして、頼んだメニューが出た。俺はトレーを持って相澤が取っといた席へ向かった。相澤は俺がトレーを置いた途端、シェイクを一口飲んだ。俺はバーガーを持って一口かじった。もぐもぐ噛んでいると、相澤が話しかけてきた。


「映画どうだった」


 映画か。

 俺は口の中のものを飲み込んで答えた。


「なかなか面白かった。原作小説が読みたくなるくらいに」

「よかったね。もしつまらなかったって言ったら、一発殴ろうと思った」

「そりゃひどいだろ」


 人それぞれ好みってものがあるから、つまらないって言えるだろ。


「あと、相澤がそういうのでなく人だってこともわかった」

「なっ、何言ってるんだ。泣いてない!」

「見てた。泣いてるの。鼻すすってたのも聞いた」

「そ、それは・・・とにかく泣いてないんだからぁ!」


 そう言って相澤はポテトを口に入れてガツガツ食べた。


 恥ずかしがってるのか。

 映画を見て泣くこと全然ありだから、別に恥ずかしがる必要はないと思うが。


「相澤、意外と乙女だね」

「は? 何それ。喧嘩売ってるのか。普通に乙女だけど」


 さっきの発言は撤回だ。俺の知ってる乙女はあんな言い方使わない。


 それから俺と相澤は静かに食べることに集中した。俺はハンバーガーとポテトを交互に食べ、喉が詰まるとコーラを飲んだ。相澤はポテトをシェイクにつけて食べたり、ポテトを食べてシェイクを飲んだりして、彼女なりに楽しんでいるようだった。


 お腹空いてないと言った割によく食べるね。


 しばらくして、トレーの上のポテトが半分以上なくなり、ハンバーガーも包み紙しか残らなくなった。残ったポテトを一つずつ食べている中、相澤がシェイクを飲みながら訪ねた。


「樽井、あの雛って子と仲良い?」

「ん?」

「映画館で言ってた子。小説を勧めてくれた女の子のことだよ」


 俺の知ってる雛を語っているのはわかっていた。だが気になったのは、なぜ急に雛について聞くのか、だった。


「親しいって言えば、親しい。小さい頃から知り合ったから」

「何歳から」

「さあ」


 何歳からだったっけ。


「四、五歳くらい?」

「かなり昔からだね」


 相澤がシェイクのストローを噛みながら言った。


「なんで急にそんなこと聞くんだ」

「偽装だとしても一応彼女なんだから、樽井の友達について知っておいた方がいいと思って」


 それはそうかもしれないな。その方が演じやすいから。


「あ、でも、雛は知ってるよ。俺たち本当に付き合ってないって」

「はあ? それ言ったの?!」


 相澤がシェイクカップを机にバンっと叩きつけた。


「誰にも言うなってあれだけ言ったのに、なんで言うんだよ」

「雛は大丈夫。秘密を言いふらすような人じゃないから」

「どうしてそこまで言い切れるんだ」

「そりゃ長い付き合いだから」

「お前な」


 相澤はこめかみを押させた。


「もしその雛って子が学校に言いふらしたらどうするんだ」

「そんなわけないって」


 雛は他人の秘密を軽々しく言いふらすような軽い人じゃない。それはえおrが保証できる。


「どうしてそこまであの子を信じてるの」

「だってーー」

「もしかして、あの雛って子が好き?」

「は?」


 相澤、一体何を言ってるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ