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12話 昨日ここにきたよね?

 相澤さんと目が合った瞬間、体が凍りついてしまった。


 俺を見た?

 いや、そう決めつけるにはまだ早い。距離もあるし、周りも薄暗いから、顔までは見えてない可能性もある。


「そこのあなた、誰?」


 続いて聞こえてくる相澤さんの声。彼女の声がだんだん近づいてきた。

 このままだと、俺がここにいたことがバレてしまう。早く逃げないと。


「あなた、確か同じクラスのーー」


 だんだん近づいてくる相澤さんの声から背を向けて全力で走った。今までこんな必死に走ったことないくらい必死に走って教室へ向かった。相澤さんが教室に着く前に、急いで鞄を取って学校を出た。


 そしてその翌日、欠席したい気持ちだがそれはできないので、やむを得ずに登校した。いつもなら早くこのだるい学校が終わることを待ちながら静かに席に座っているだろうが、今日はそうできなかった。静かに席に座ってはいたが、心の中は不安で落ち着かなかった。不安すぎて足の震えが止まらなかった。あまりにも震えすぎて、机が揺れるほどだった。

 こんなに不安になった原因は、昨日のことのせいだった。


 相澤さん、昨日俺を見たんだじゃないよな。


 もし見られたら、かなり面倒臭いことになるだろう。急に相澤さんに呼び出されれるかもしれない。・・・いや、それより昨日のあれ本当に相澤さんだったかな。

 冷静に考えてみると、見間違いの可能性も合った。日も暮れていたし、校舎の影に隠れてちゃんと顔を見れなかった気がする。そして、何より普段の相澤さんとイメージが違いすぎたから。人違いの可能性もある。いや、人違いだ。人違いに間違いない。そうじゃないと困る。


「そうだ、人違いだ。これで終わり。もう忘れよう。記憶から消そう。もう気にするな」


 そう自分に言い聞かせ、人違いだったと信じることにした。こうでもしないと、不安が消えないと思ったからだ。

 ここには証拠もあった。今朝、相澤さんと挨拶したとき、いつもと同じだった。もし昨日のあれが本当に相澤さんだったらいつものように挨拶できなかったんだろう。

 だから、もう気にしないことにした。これ以上気にしても損する気がした。

 たるい先生の説明から、窓の外へ目を向けた。運動場には体育授業中の生徒たちが見えた。


 授業が終わった後、休み時間。クラスはすぐ騒がしくなった。俺はつくに突っ伏して一眠りしようと思った。この騒がしさの中で眠れるかはわからないが、とりあえず目を閉じた。


 自ら暗闇に包まれて眠りに落ちている中、俺の呼ぶ声が聞こえた。


「樽井くん、寝てる?」


 聞き慣れた声だった。優しくて柔らかい声。相澤さんの声だった。


 無視して寝たふりしよう。


「ほんとに寝てるの? 樽井くん起きて」


 相澤さんは俺の肩を軽く叩きながら言い続けた。ここで顔を上げたら、百パーセント面倒臭くなる。俺は必死に寝たふりをした。しばらくして、やっと諦めてくれたのか、肩を叩くのが止んだ。よかった、と心の中で安堵してる瞬間、


「次の授業、移動教室だよ」


 耳のすぐ近くで相澤さんの声が小さく聞こえた。声だけじゃなく彼女の息も伝わってきた。俺はびっくりして思わず顔を上げてしまった。


「あ、起きた。やっほー、よく寝た?」

「相澤さん、いきなり何を」

「まあいいから、行こよ。次、移動教室だよ」


 移動教室? 今日そんな授業あったっけ。

 時間割を覚えていないから、次の授業が何かわからなかった。


「早く起きて。これじゃ遅刻しちゃう」

「あ、わかった」


 とりあえず、相澤さんの言うことに従ってシャーペンとノートを持って立ち上がった。教室を出ると、相澤さんもついてきた。


「え、一緒に行くつもり?」

「だめ?」


 相澤さんは少し首を傾げて下から覗き込むように聞いた。


「いや、そうではないが」


 昨日のことで相澤さんと一緒にいると気まずかった。やけに不安になってちゃんと目を合わせない。もちろん、昨日のあれは相澤さんじゃないって信じることにしたが、それでも不安になるのはどうしようもなかった。


「樽井くん、次の授業どの教室かわかる? わからないでしょ」


 それは、そうだな。


「だから、私が案内してあげるね」


 相澤さんはにこっと笑った。俺は返事の代わりに頷いた。相澤さんが先を歩き、俺は彼女の後をついていった。廊下を歩き、下駄箱を通り過ぎて学校の外へ出た。


 なんで、外へ?


 ぼーっとして相澤さんの後をついていく途中、ふと疑問に思った。外に出る授業は体育しかない。けど、体育ならみんなが体育服で着替えているはずなんだ。


「あの、相澤さん?」

「なに」


 相澤さんは振り向かずに、ゆっくりと歩きながら答えた。


「次の授業、本当に移動教室なの? なんで外に。体育じゃないと思うけど」

「樽井くん」


 相澤さんは急に立ち止まって振り返った。


「もう少しだから」


 そう言って相澤さんはまた歩き出した。どこかいつもの相澤さんと雰囲気が違った。ホラー映画でよく出る取り憑かれた人みたいだった。

 少しビビった俺は、何も言えずに大人しく相澤さんの後をついていった。


 ゴミ捨て場を通り過ぎて少し歩くと、相澤さんはまた立ち止まった。


「着いたよ」


 相澤さんの声に、俺は周囲を見回した。


 ここは・・・。


 昨日のあの場所だった。あの鋭い声を聞いた場所。


「相澤さん、なぜここに・・・!」


 待て。相澤さんがここに連れてきたってことは・・・。

 瞬間嫌な予感が頭をよぎった。だが、その時はもう手遅れだった。


「樽井くん、昨日ここにきたよね?」


 相澤さんはゆっくりと振り返り、重い声で問いかけた。

読んでいただきありがとうございます。

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