表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異空間王子と妖精少女は王子様のスパイ  作者: 幻想桃瑠
◆◆◆――最終章 偽王子を取り戻して幸せな結末を確保せよ!――◆◆◆
71/71

最終話 偽王子君の事情

 目の前にいたのは、異空間の偽王子君ではなかった。

 そこにいたのは、スーツを着込んだ、ごく普通のお兄さんだった。

 年の頃なら、二十歳ぐらい。可もなければ不可もない容姿。そして、オールバックの黒髪を持っていた。

 そして、彼は、黒い瞳で私の方を見て、耳にはスマホをくっつけて話していた。典型的な日本人だった。


 彼は、スマホの通話を切ってポケットにしまい、こちらを見て微笑んだ。


「蜜柑ちゃん。会いに来たよ」


 目の前にいる彼が異空間ではないので、私は面食らった。

 私は急いでスマホを切って、着信履歴を確かめた。

 確かに、着信履歴は『偽王子君』になっていた。

 私は、あの時、偽王子君の電話番号をスマホの電話帳に登録していたのだ。

 だから、まぎれもなく目の前にいるのは『偽王子君』ということになる。


「偽王子君!? ええええええ!」


 私の大声に驚いた人型の偽王子君は、私を慌ててコンビニの外に連れ出した。

 買ったジュースを二人で飲みながらコンビニの駐車場で話す。


「偽王子っていうのは、俺のあだ名なんだ。」

「あ、あだ名……?」


「俺、駐車場で自動車止めて仮眠を取っていたんだ。そうしたら、トラックが突っ込んできたらしくて。気がついたときには、記憶を無くして異空間の中に居たんだよ」


 そ、そんなことってあるのだろうか。

 確か、異空間の偽王子君は、目が覚めたら異空間の中に閉じ込められたと言っていた。

 確かに、言っていることのつじつまは合う。


「それで、異空間に閉じ込められてからは、あだ名の偽王子って名前しかわからなくなって」

「ええええっ!?」

「それで、蜜柑ちゃんから告白されたときオーバーヒートして、気がついたら病院のベッドに居たんだ」

「ふ、ふーん」

「そうしたら、スマホの着信履歴に気づいて。蜜柑ちゃんの事は夢だと思っていたけど、調べてもらったら、蜜柑と言う人が本当にいることが分かったんだ」


 そんなことって本当にあるのだろうか。

 偽王子君は、優しい笑みを浮かべて私に微笑みかけた。


「だから会いに来ました!」


 偽王子君は、隠し持っていた赤い薔薇の花束を私にくれた。

 私の目から涙がこぼれ出る。


「約束していたプレゼントだよ、蜜柑ちゃん」

「わぁ、ありがとう……!」

「本当は千本の薔薇をあげたかったんだけど」

「千本……? 偽王子君、なんで……?」


「鈍いのは相変わらずだね、蜜柑ちゃん。それに俺は偽王子じゃないんだ」

「ええっ!? 偽王子君は偽王子君じゃないの?」


「それは、あだ名だからね~」

「そ、そっか」

「本当の名前は『祇王寺ぎおうじ 琉歌るか』っていうんだ」


 確かに、『偽王子にせおうじ』は『偽王子ぎおうじ』とも読める。

 変わった名前だと思っていたけど、そんなオチだったのか。


「でも! 偽王子君は偽王子君だよ! 偽王子君、また会えるかな!」

「うん、毎日会えるよ?」


 えっ、毎日……!?

 偽王子君はしたり顔で微笑んでいる。


「えっ? どういうこと?」

「最近、蜜柑ちゃんの部屋の隣室が埋まったでしょ?」

「う、うん……? ま、まさか……!?」


 偽王子君は、笑っている。


「鈍い蜜柑ちゃんも成長したんだね。その通り。蜜柑ちゃんの隣室に引っ越してきたのは、俺だよ~」

「な、なんだって~!?」

「……やっぱり、迷惑かな?」

「ううん! そんなことないよ! また、異世界に一緒に行こうよ!」

「また、蜜柑ちゃんと冒険しようね? 大好きだよ、蜜柑ちゃん!」


 やった! また偽王子君と一緒に居れる! 寂しくなくなる!

 私の灰色だった世界が鮮明に色づいた。

 偽王子君は、手を差し出してきた。私はその手を掴む。

 そして、二人は夕日に向かって歩き出したのだった。


<完>


くれぐれも、さぎにはご注意ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ