第六十五話 蜜柑VS黒幕
私は凄まじい感情を抱えながら、姉の部屋に帰った。そして、余弦国の予言城に異空間を転移させる。余弦国は雨が降っているようだった。
そして、私は黒幕を見つけた。
黒幕はグラナート王子と何事か会話をしていた。
私は、半トリップして、黒幕の名を叫んだ。
「バベル!」
姉の手紙に書かれていたのは、バベルの名だったのだ。
窓の外の暗闇が稲妻で明滅した。
敬称のない呼び方に、黒幕のバベルは驚いてこちらを振り向いた。
バベルの顔が冷ややかな表情に取って代わった。
グラナート王子は瞠目している。
私は、手にほうきを持ったまま、構わずに叫んだ。
「バベル! 吉永檸檬を……お姉ちゃんを返せ!」
「バベル……? どういうことだ……?」
グラナート王子は、怪訝そうにバベルを窺っている。
「バベル……?」
尋ねるグラナート王子を捨て置いて、バベルはこちらに歩いてきた。
「事情は知っているようですね、どうやら……?」
「アンタが、私のお姉ちゃんを手にかけたんでしょ!」
バベルは狂ったように大笑いした。ゾッとするような笑い方だった。
「そうですよ! 私は妖精の力が欲しかった! この余弦国を支配するために!」
「なんだと!? バベル、お前は……! ぐぅ……!」
グラナート王子は何事か叫んだが、頭を押さえて椅子にもたれていた。
グラナート王子の記憶が戻ろうとしているのだろうか。
「蜜柑さん、願い星って知ってますか?」と、バベルが訊いてきた。
「知ってる! 願いを叶えてくれるアイテムでしょ!」
願い星で、偽王子君の願いを叶えてきた。だからその事は既知していた。
「その願い星にお願いして、私の身体に吉永檸檬を吸収しました。そして、グラナート殿下の記憶を消したのです!」
「……ッ! お姉ちゃんをよくも!」
バベルがこちらに歩いてきた。
「でも、私は不完全だ。手に入れられなかったものがある。妖精になったのにこれがなくては意味がない」
ほうきを持って身構える私をバベルは掴んだ。
そして、余弦城の中に私を引きずり込んだ!
「きゃっ!」
『蜜柑ちゃん!』
しかし、妖精の私にバベルは『見向きもしなかった』。私は慌てて振り向いた。
バベルは異空間と向き合ってニヤリと笑って手を伸ばしていた。
そうか! 狙いは私じゃない。偽王子君の異空間なんだ!
しかし、偽王子君は私を攻撃すると思ったらしい。
偽王子君は叫んだ。
『蜜柑ちゃんに触るな! 蜜柑ちゃんは、俺が守る!』
「偽王子君!?」
偽王子君は、異空間をぐるんぐるんさせて、食事をする要領でバベルを宙に浮かした。
そして、勢い良く、異空間に吸い込んでしまった。
「偽王子君ッ!」
私は吃驚して異空間に駆け寄った。




