第六十四話 最後の手がかり
「そうかもしれない。でも、その妖精は、グラナート様を『手にかけようとして失敗して逃げた』ということになっている。だから、その妖精は指名手配されているよ」
『「な、なんだって~!?」』
「お姉ちゃんが犯罪者!? ウソでしょ!?」
『檸檬さんがそんなことするはずないと思うよ、俺は』
「そ、そうだよね……!」
偽王子君の言うとおりだ。
『蜜柑ちゃん、何か、手がかりはない……?』
月湯君が帰ったあと、私は姉の日記を一通り読んだ。でも、そこに手掛かりは書かれてない。
「あ゛~!」
私は姉のベッドにダイブして、うだうだした。
姉が犯罪者……? でも、濡れ衣を着せられている可能性だって捨てきれない。
濡れ衣だったら、姉はとんだとばっちりだ。
そうだ……。姉は犯罪者ではない……!
私は確信を持って頷いた。
あの落書きには、私に逃げるように警告してあった。姉が逃げるようなことがあったと推測される。
だったら、姉は陥れられたと考えるのが妥当だ。
でも、どうやったら無罪を証明できる?
現に、姉はどこにもいないのだから。
「お姉ちゃん……、私はどうしたら……」
その時、脳裏を記憶の断片がよぎった。
「そ、そうだ!」
『どうしたの? 蜜柑ちゃん?』
「偽王子君、ずっと前に余弦城に行ったとき、お祭りだったでしょ?」
『そうだったね、蜜柑ちゃんとでーとしたよね!』
「その時、グラナート様のお部屋にお姉ちゃんの落書きがあって」
確か、落書きにはこう書かれてあった。
「【蜜柑! 私の快晴国にある店の引き出しに私の手紙がある! なので、目をかっぽじって読め!】って……!」
『そ、それだよ、蜜柑ちゃん!』
「うん! すぐに、快晴国の姉の店に飛ぼう!」
私は、すぐに快晴国の姉の店に異空間の画面を転移させた。
快晴国は風が強いようだった。静かな店の中で、姉の店の窓がカタカタと音を立てている。すぐに、姉の店の中に異世界トリップした。そして、姉の机の引き出しを一つ一つ開けて行く。
「あった!」
机の三番目の引き出しに姉の手紙が入っていた。
【蜜柑へ】と日本語で書かれてある。
『蜜柑ちゃん! 早く読んで!』
「う、うん!」
私は、すぐに封筒を開けて便せんを取り出した。
ここには、姉の尖った文字でこう書かれてあった。
【蜜柑へ。私は、余弦国のグラナート王子と婚約することになった】
「やっぱり、お姉ちゃんはグラナート様と結婚する予定だったらしいよ」
『それから、なんて書かれてあるの?』
「それから……」
【しかし、私を狙う者が居る。妖精だかららしい】
「えっ? お姉ちゃんを狙う者が居たようだよ!」
『やっぱり、檸檬さんがグラナート様を襲おうとしたわけじゃなかったんだね!』
「うん!」
【蜜柑。私はもうすぐ葬られるかもしれない】
「えっ!?」
『どうしたの、蜜柑ちゃん?』
私は、偽王子君の問いに答えないで次を読んだ。
【だから、蜜柑が私の仇を取ってほしい】
「……っ」
私は下唇を噛んだ。
【私を葬ろうとしている人物の名前を教えよう】
私は、ごくりと喉を鳴らした。
【それは――】
「ッッッ!」
このひとが私の姉を手にかけたというのか……!
負の感情が私を支配するようだ。
私の目から怒りに染まった涙が流れ出た。
「わかったよ、お姉ちゃん! 私がお姉ちゃんの仇を取る!」
『えっ!? か、仇って!?』
偽王子君が私の物騒な言葉に、ギョッとしたように異空間を震わせていた。




