第六十三話 王子様の事情
月湯君は、真剣な顔をして話し始めた。
「我が主から聞いた話なんだけど、一時期、グラナート様の所に妖精が来たと、ウワサになったことがあったんだ」
「えっ!? グラナート様の所に妖精が!?」
私の問いかけに月湯君は頷いた。
グラナート王子とは、ザーフィア王子の兄だ。
『そこに妖精ときたら、それは檸檬さんじゃないかな? その時、俺と檸檬さんはさよならしていたから、檸檬さんが余弦国に行ったのかどうかは確信は持てないけど……』
確かに、偽王子君の言うとおりだ。あの余弦城に残っていた大量の姉の落書きという痕跡があること。その妖精は、我が姉の吉永檸檬と考えるのが妥当だ。
「そして、グラナート様とその妖精は、恋愛関係にあったそうだよ」
「じゃ、じゃあ、お姉ちゃんが結婚することになった相手って、グラナート様なの!?」
「そうなんじゃないかな?」
『「な、なんだって~!?」』
絵に描いたような王子様との結婚! 姉はそれを成し遂げようとしたのか!
でも、ちょっと待てよ? グラナート様って確か……。
私が思い出す前に、月湯君が続きを語った。
「それでね、暫く、妖精とグラナート様がご婚約するとウワサになっていたんだけど」
「うんうん! それで?」
「でもね、ある時、妖精が忽然と姿を消したんだ」
『「えっ!?」』
「それでね、その後に残っていたのは、満身創痍のグラナート様だけだった。そして、グラナート様は、記憶障害になった。妖精に会ったこともきれいさっぱり忘れている」
「それって、どういうこと……?」
『檸檬さんにグラナート様はフラれたってこと?』
月湯君は首を横に振った。




