第六十六話 希望の光
「偽王子君!」
異空間に向かって叫ぶと、偽王子君がケホッと煙を吐いた。
『蜜柑ちゃん~! 俺は無事だよ~!』
「よ、よかった、偽王子君!」
直後、姉は封印が解けたように復活して姿を現した。そして、グラナート王子の記憶も戻ったので、余弦城は幸せな空気に包まれていた。
昨日は姉の結婚式に出席したところだ。
グラナート王子と姉の結婚をみんなが祝っていた。
『いや~、檸檬さん綺麗だったね~!』
「だったね~!」
私はブーケを貰って、偽王子君とご満悦だ。
いつも通りにコンビニから帰ろうとしたとき、質屋が目に入った。腕にはザーフィア王子から貰った腕輪がはまっていた。
この際だから、売ってしまおうと考えた。両親に楽をさせてあげようと考えたのだ。
自動ドアをくぐって入ると、「いらっしゃいませ」と店員さんが出迎えてくれた。
質屋の中はブランド品と宝石であふれていた。
「これ、売りたいんですが……」
私は、腕輪を外して店員さんに見せた。店員さんはルーペを使って鑑定をし始める。
「……ええと、1000円くらいですかね」
私は質屋の店員さんの言葉に耳を疑った。
「ど、どうしてですか、そんなはずは!?」
「これは宝石というよりただの石ですし、無名の職人が作ったものですから、そんなに高く買い取れないんですよ」
私は、泣きそうになっていた。異世界の宝石でもこちらではただの石。そして、無名の職人。そんな落とし穴があるなんて。
段々と腹が立ってきた。
「じゃあ、売りません!」
私は店員さんから腕輪をひったくって、姉のアパートまで帰って来た。
両親を楽させてあげられない。
両親は働いてばかりで、顔もろくに合わせられない。
姉は異世界で新婚旅行に行ったので会えない。
「でも、偽王子君が居るから、まあ良いか~!」
『どうしたの? 蜜柑ちゃん?』
「ううん。何でもないよ~!」
そうして、幸せな月日が流れていった。




