第五十七話 魔霧ノ森……!?
私は、再び宝玉国に異空間を転移させた。
姉の部屋から地下牢を見ていた。しかし、そこにいるはずの人物がいない。
「あ、あれ!?」
『第二王妃様は!?』
私と偽王子君は、唖然となっている。
まさか、もう処刑されてしまったとか……!?
私は、怖くてその事実が言えなかった。
青ざめている私に、後ろからテノールの声がした。
「それがね……?」
月湯君が、姉の部屋に半トリップしていることにようやく気付いた。
「な、なんで、第二王妃様が居ないの?」
「余計なことをしたかな?」
どうやら、月湯君が事情を知っているらしい。
そして、月湯君が何かしたようだ。
『余計なことって、何をしたの?』
私は恐々と尋ねた。口の中が緊張で乾いている。
「ローズ第三王妃にね、蜜柑ちゃんの頼みだからって言って、メープル第二王妃を逃がして貰えないか頼んだんだ」
「ええっ、第三王妃様に!?」
月湯君に騙された第三王妃様が助けてくれるとは思えないけれど。
「うん、そしたら――」
『蜜柑殿の頼みなら、是非とも協力しよう!』
「――と言って、一時間前に馬車で第二王妃様を逃がしてくれたよ?」
「ほ、本当に!?」
第三王妃様、まじ感謝!
もしかしなくても、第三王妃様ってめっちゃいい人だったのか!
『流石、月湯君だね! 俺は助けてくれると思っていたんだ~!』
偽王子君は、ひとを見る目がある。私はてっきり、月湯君が何か企んでいると思っていた。私は、偽王子君を尊敬した。偽王子君は、ただの可愛い異空間じゃなかったのか。
「でも、逃がす場所がないから、魔霧ノ森の方角に逃がすようにお願いしたよ?」
私と偽王子君の時が止まった。
「ま、魔霧ノ森……ってなんだっけ?」
『確か、磁場が狂っていて方角が分からないし、霧がかかって一寸先も見えないから、入ったら十中八九迷って出てこれなくなるっていうあの……』
「魔霧ノ森!?」
はああああああああああああ!?
『なんで、よりによって!?』
「な、なんで、魔霧ノ森に!? 西の森だってあるでしょ!?」
月湯君はあっけらかんと他人事のように笑っている。
「今だって、第四王妃様が馬車で後を追っているよ。西の森だったらとっくに見つかっていたかもね!」
だったら、良いのかもしれないけど……! でも、魔霧ノ森って……!
『でも、第三王妃様は良い人だったね。魔霧ノ森なら絶対に見つからないね~』
「でしょ?」
偽王子君は月湯君と同調して、安心したように笑い声を立てている。
あ、頭痛くなってきた……!
明らかに、暢気に笑っている場合じゃない。
魔霧ノ森に迷った場合の事を考えてないのか。
「絶対に見つからないなら、私たちだって見つけることは――」
『できるでしょ? 蜜柑ちゃんなら』
えっ? 私ならできるとはどういうことだろう。
あっ……! 私は可能性に気づいて、声を上げた。
「そ、そっか!」




