第五十六話 デジャビュ
早速、私はアレクシス王子のもとに異空間の画面を転移させた。
アレクシス王子は、パトリック執事と一緒に夢見国の迎賓館に居た。椅子に座ってパトリック執事と会話をしている。すぐ傍には近衛兵が警護している。
「アレクシス様~!」
私が半トリップすると、一斉に私に銃が突き付けられた。
「っ……!?」
私は半笑いのまま、両手を上げる。
「蜜柑と偽王子は私の味方だ」
アレクシス王子が慌てて止めに入った。パトリック執事が何事か言うと、近衛兵はアレクシス王子の横で、また警護し始めた。
「吃驚した……!」
『だね……!』
魂が抜けそうな私と偽王子君に、アレクシス王子は苦笑を返していた。
しかし、それもすぐに明るい笑みに取って代わる。
「蜜柑と偽王子。聞いてくれ、交渉が上手く行った」
目の覚めるような笑みを浮かべているアレクシス王子だったが、私にはそれが信じられなかった。
「えっ?」
『上手く行った……のですか?』
「夢見国の国王陛下は、とても良い方だったようです」
パトリック執事も嬉しそうだ。
確か、夢見国の国王様はこの交渉に否定的で、頑固だから上手く行かないと言っていたはずだ。アレクシス王子は、やはり外交が上手かったのか。さすがは、我が王子様だ。
「これで、快晴国も星方国も平和になる」
王子様はとてもうれしそうだ。私も釣られるように笑みを浮かべた。
「おめでとうございます……!」
『本当に良かったよね~!』
「ね~!」
「宝玉国も当分安泰だ」
私は、アレクシス王子のお顔がふと陰ったことに気づいた。
「……私にはそんなことを言える資格などないのかもしれないがな」
そ、そうだった。
アレクシス王子は、国王様と血のつながりがないんだった。
でも、そんなことは関係ない。
アレクシス様にはちゃんと王家の風格がある。国王様より国王様らしいぐらいだから。
「そんなことないですよ、アレクシス様!」
『そうですよ! アレクシス様あっての宝玉国ですよ!』
私と偽王子君は一生懸命励ました。すると、アレクシス王子は笑みを見せてくれたが、元気のなさそうな笑みだった。励ましたところで真実はどうにもならない事を王子様は知っているのだろう。
「ほう、これは珍しい。妖精殿がアレクシス殿下のお供についているとは」
「……!」
突然、毛色の違う年齢が経った低い声色が会話に割り込んできた。
私は吃驚して、振り向く。
すると、そこには、王冠を被った中年の男が立っていた。
私は、ポカンと立っている。その横でアレクシス王子が一礼した。
「国王陛下」
「こ、この方が!?」
『お初にお目にかかります……!』
私は大慌てして一礼した。
偽王子君もかしこまっている気がする。
「いや、楽にしていてくれ」
国王様は、笑って私たちに声をかけてくれた。
私は、不思議な気分になって顔を上げた。
なんだろう……? このデジャビュ感は……?
『あっ、それどころじゃないよ、蜜柑ちゃん!』
私は偽王子君の声で我に返った。
「そうだった! アレクシス様大変なんです! 第二王妃様が!」
「えっ?」
アレクシス王子は、心配そうなお顔になった。
「宜しければ、私にもお話していただけませんかな? 何か力になれるやもしれませんから」
夢見国の国王様は頼もしい言葉をかけてくれた。
私は、吸い込まれるように国王様の青い目を見ていた。




