第五十四話 敵か味方か3
なるほど、月湯君だったら、近衛兵に見つからずに盗み聞きできる。
第四王妃様に王妃様の日記を手渡すことだって容易だ。
私は体を起こしてその場に座りなおした。
「蜜柑さんが、ヘマしたからね。せっかくだから掻きまわしてあげようと思ってね!」
見張られていたのか……!
月湯君の物言いに、私は怒り心頭に発した。
「なんで、余計なことするかな! アレクシス様のお命が狙われたらどうするの!」
でも、偽王子君の冷静な声が返ってきた。
『……俺は、月湯君が手助けしてくれていると思う』
「な、なんで? ザーフィア様のおふざけに付き合うような月湯君だよ?」
私の発言に月湯君は吹き出した。
「酷い言われようだね?」
『でもね、俺は思うんだ。アレクシス様はご公務で宝玉国にいない。助けるなら今が動くときと月湯君は考えるんじゃないかな』
な、なるほど……! 偽王子君はやっぱり頭の回転が速いな……!
月湯君も、偽王子君の異空間を一目置いたように見ている。
「……買いかぶりすぎじゃないかな?」
『そうかな?』
でも、私はまだ月湯君が信用できない。
「そうだよ!」
私は語気を強めた。
「よりによって、第四王妃様に言うのはおかしいよ!」
第四王妃は王妃様の事も第二王妃様の事も、ライバルとしか認識していないはずだ。蹴落とそうとするのは、目に見えて分かることじゃないか。
「……妃殿下に言うよりはいいと思うけどね」
「た、確かに……!」
王妃様に言ったら、第二王妃様は暗殺されるやもしれない。でも、第四王妃様に教えても、自殺行為じゃないのか?
「ほら、見てご覧? 国王様は怒りマックスだよ」
「や、ヤバいんじゃ……」
月湯君は、やはり掻きまわしたいだけなのか。
国王様は顔を真っ赤にして怒っている。
どうやら、王妃様の日記を全て拝読したらしかった。
『許せん! すぐに、アレクシス王子の爵位を剥奪せよ!』
「ええっ!? あんなに、仲が良かったのに……!?」
なんで、真っ先にアレクシス王子に怒りの矛先が行くんだろう。
そんなに、国王様と王子様の関係は希薄なものだったのだろうか。
『国王陛下、妃殿下がお見えです』
メイドがやってきて、王妃様を部屋に通した。
『国王陛下、ご気分が優れないのですか? お顔色が……』
王妃様は国王様を見るなり、体調不良と判断したようだ。
しかし、心配そうな王妃様に国王様は言い放った。
『お前と離縁する!』
『な、何を仰っているんですか……!?』
国王陛下は、床にノートを投げ捨てた。
それは、王妃様の日記帳だった。
王妃様の顔が一気に青ざめていた。




